甘夏はどんな木か
甘夏は夏みかんの枝変わりから生まれた品種で、正式には川野夏橙といいます。酸味が抜けやすく、夏みかんより早い時期から食べられるのが特徴です。木は放任すると3メートルを超えますが、剪定と鉢植えで抑えられます。
耐寒性はマイナス3度からマイナス5度が目安で、温州みかんより弱く、レモンよりは強い程度です。関東平野部では冬に防寒すれば地植えできますが、北風が当たる場所や霜が降りる庭では鉢植えで軒下に取り込むほうが安全です。
| 地域 | 育て方の目安 | 冬の備え |
|---|---|---|
| 暖地 | 地植えで問題なし | 若木のみ寒冷紗で覆う |
| 関東平野部 | 南向きの壁際なら地植え可 | 3年目までは幹巻きと株元マルチ |
| 寒冷地 | 鉢植えで室内か軒下へ | マイナス3度を下回る夜は取り込む |
自家結実性があるので1本で実ります。受粉樹は不要ですが、近くにほかのかんきつがあると種が増えることがあります。
苗は接ぎ木の2年生を選ぶ
園芸店の苗は、カラタチに接いだ接ぎ木苗が基本です。種から育てると実が付くまで10年以上かかるため、家庭では必ず接ぎ木苗を選びます。買う時期は春の植え付けに合わせた2月から3月が最も種類がそろいます。
- 接ぎ目を確かめる
- 地際から10センチほどの位置に接ぎ目のふくらみがあり、その上下がしっかりつながっているものを選びます。接ぎ目がぐらつく苗は活着しません。
- 葉の色と枚数を見る
- 濃い緑の葉が枝いっぱいに付いている苗が健全です。葉が黄ばんでいたり、下のほうが落ちていたりする苗は根が傷んでいる可能性があります。
- 幹の太さは鉛筆以上
- 接ぎ目の上で直径1センチ前後あれば2年生として十分です。細い苗は実が付くまで1年余計にかかります。
根が回ったポット苗は根鉢の外周を軽くほぐしてから植えます。ただし、かんきつは根を切られるのを嫌うので、崩しすぎないようにします。
植え付けの適期は3月中旬から4月
甘夏は常緑樹で真冬に根が動かないため、落葉果樹のような冬植えはしません。寒さが緩んで芽が動き出す直前の3月中旬から4月上旬が適期です。暖地では10月中旬の秋植えも可能ですが、関東では冬の寒さに当たる前に根付かないので春植えにします。
| 時期 | 向き不向き | 理由 |
|---|---|---|
| 3月中旬〜4月上旬 | 最適 | 植え付け後すぐ根が動き始める |
| 5〜6月 | 可能 | 水切れに注意すれば活着する |
| 7〜8月 | 避ける | 高温で根が傷み、葉が落ちる |
| 10月以降 | 暖地のみ可 | 関東では根付く前に寒さに当たる |
苗を早く買ってしまった場合は、ポットのまま日当たりのよい軒下で管理し、3月中旬を待って植えます。
地植えの手順
甘夏の根は温州みかんより深く伸びます。水はけのよい、日当たりのよい場所を選び、根が広がる範囲を柔らかく耕しておきます。北風が直接当たる場所は葉が傷むので避けます。
- 穴は直径と深さ50センチ
- 掘り上げた土に腐葉土を2割ほど混ぜます。苦土石灰を1握り混ぜてペーハー6前後に整えると根の伸びが安定します。
- 接ぎ目を土の上に出す
- 接ぎ目が埋まると台木の役目が失われ、病気の原因にもなります。接ぎ目が地面より5センチほど上に出る高さに合わせて植えます。
- 支柱を立てて結ぶ
- 根付くまでの2年間は風で揺れると根が切れます。株元から30センチ離して支柱を立て、幹をゆるく8の字に結びます。
- たっぷり水を与える
- 植え終わったら株の周りに土手を作り、バケツ1杯分の水をゆっくり染み込ませます。以後は表面が乾いたら与え、1か月は乾かしません。
植え穴に化成肥料を入れないこと。根が直接触れると傷んで枯れます。肥料は新芽が伸び始めてから株元から離してまきます。
鉢植えの手順
鉢植えは寒さから守りやすく、関東以北ではむしろ確実な育て方です。ただし甘夏は木が大きくなる品種なので、8号から始めて2年ごとに一回り大きくし、最終的には12号以上の鉢か果樹用の大型プランターに落ち着かせます。
- 用土は水はけ重視
- 赤玉土小粒6・腐葉土3・パーライト1が目安です。市販の果樹用培養土でも構いません。鉢底石を2センチ敷いて排水を確保します。
- ウォータースペースを残す
- 鉢の縁から3センチ下まで用土を入れ、水がたまる空間を残します。ここが浅いと水が鉢の中まで届かず、根鉢の中心が乾いたままになります。
| 鉢のサイズ | 苗の年数 | 期待できる実の数 |
|---|---|---|
| 8号 | 2年生の植え付け時 | まだ実は付けない |
| 10号 | 3〜4年生 | 3〜5個 |
| 12号以上 | 5年生以上 | 10個前後 |
鉢が大きいほど実が多く付きますが、移動が重くなります。冬に取り込む場所までの動線を先に決めてからサイズを選びます。
関東の冬をどう越すか
甘夏は葉を付けたまま冬を越すため、寒風で葉が傷むと春の生育が遅れます。マイナス3度までは無傷ですが、それより下がる夜が続くと葉が落ち、マイナス5度を下回ると若い枝が枯れ込みます。関東平野部では1月から2月に数回この温度になるので、若木は防寒が必要です。
- 株元にマルチを敷く
- 落ち葉やわらを10センチほど株元に敷き、根の凍結を防ぎます。地植えでも鉢植えでも効果があり、最も手軽な防寒です。
- 若木は寒冷紗で包む
- 3年目までの木は支柱で骨組みを作り、寒冷紗か不織布で全体を覆います。ビニールは晴れた日に中が高温になるので使いません。
- 鉢植えは軒下へ寄せる
- 南向きの壁際に鉢を寄せると、放射冷却が和らぎます。マイナス3度を下回る予報の夜だけ玄関や室内に取り込むやり方でも十分です。
冬に実を付けたまま越すので、実が凍らないよう寒波の前には収穫するか、木ごと覆います。実の防寒は収穫のページで扱います。
根付かないときの原因と手当て
植えた年の5月になっても新芽が出ない、葉が次々落ちるという失敗は、植え方か水の管理で起きます。葉の様子と株元を見て原因を切り分け、掘り直すのか水を変えるのかを判断します。
| 症状 | 疑う原因 | 手当て |
|---|---|---|
| 葉が黄ばんで落ちる | 水のやりすぎか深植え | 接ぎ目が出る高さに植え直し、乾いてから与える |
| 葉が内側に丸まる | 水切れか根の乾燥 | 株元にマルチを敷き、鉢なら朝夕に与える |
| 新芽が出ず枝先が枯れる | 寒害か根の活着不良 | 枯れた部分を切り戻し、肥料を止めて待つ |
| 葉は残るが伸びない | 根鉢の中心が乾いている | 鉢ごと水に沈めて中まで湿らせる |
植えた年に花が咲いても摘み取ります。実を付けさせると株が大きくならず、収穫の立ち上がりがかえって遅れます。
甘夏の植え付けに使うもの
木は一度植えたら動かせません。植え穴と支柱をきちんと作るかどうかで、その後の何年かが決まります。
数量は苗木 1 本を単位にしています。
- 完熟堆肥・腐葉土探す言葉「完熟堆肥 バーク 40L」
- 規格の目安
- バーク堆肥か腐葉土。40L 前後の袋。
- 数量の目安
- 植え穴 1 つ(直径 60cm × 深さ 50cm)に 20〜30L を掘り上げた土と混ぜます。
穴を大きく掘って土を入れ替えるのが植え付けの本体です。ここを手抜きすると、根が広がらないまま何年も伸び悩みます。
- 支柱(添え木)探す言葉「園芸支柱 太い 180cm」
- 規格の目安
- 直径 25〜30mm × 長さ 180cm。1 本の添え木か、2 本の二脚(鳥居型)。
根が張るまでの 1〜2 年、風で株元が動くと細い根が切れ続けます。細い支柱では木の重さを支えられません。
- 樹木用の結束テープ探す言葉「樹木 誘引 テープ 幅広」
- 規格の目安
- 幅 20mm 前後の伸びる素材か、麻ひもと当て布。
幹は太ります。細いひもで縛ると食い込み、そこで水の通り道を締めてしまいます。幅の広いもので 8 の字に留めます。
- 緩効性肥料(元肥)探す言葉「緩効性肥料 元肥 樹木」
- 規格の目安
- 粒状で長く効くタイプ。
- 数量の目安
- 植え穴 1 つに 50〜100g。根に直接触れないよう、土を一枚かぶせてから植えます。
植え付け直後は根が傷んでいます。濃い肥料が触れると、そこから傷みが広がります。
- 鉢で育てるなら支柱は短いもので足ります。180cm の添え木は地植え用です。
- 植え穴に石を入れる必要はありません。水はけが悪いなら、盛り土にして高く植えるほうが効きます。
甘夏の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方は甘夏の育て方にまとめています。
iPhone 対応(Android 版は準備中)。無料で使えます。
この記事は広告を含みます。