正体はミカンハモグリガという蛾
柑橘の葉に白い曲線を描くのはハエではなく、ミカンハモグリガという小さな蛾の幼虫です。成虫は体長3ミリほど、銀白色で夜に飛び、まだ開ききっていない新葉に産卵します。
温暖地では年に8回から10回発生し、山は夏から秋に新梢が伸びる時期です。硬くなった葉には産卵しないため、被害はいつでも「今出ている柔らかい芽」だけに集中します。
| 見た目 | いつのものか | こちらにできること |
|---|---|---|
| 葉裏に何も見えない | 産みつけられた直後の卵 | 見つけて取ることはできない |
| 葉の中に銀白色の曲線が伸びる | 幼虫が中を食べている最中 | 葉の内側にいるので表面の薬は届かない |
| 葉の縁が巻き、中に繭がある | 蛹が羽化を待っている | 巻いた葉を摘めば次の世代を減らせる |
| 3ミリほどの銀色の蛾が夜に飛ぶ | 成虫が産卵に来ている | 粘着トラップに少しかかる。時期の把握に使う |
怖いのは葉より、かいよう病
食害そのもので樹が枯れることはまれです。問題は、幼虫が作った傷口からかいよう病菌が入ることで、レモンはこの病気にとくに弱い柑橘にあたります。
かいよう病が枝や果実に回ると、コルク状のかさぶたが果面に残り、日持ちが落ちて見た目も損なわれます。台風で葉や枝がこすれた直後は、傷が多いぶんさらに危険です。
エカキムシの被害が多い年は、その秋から翌春にかけてかいよう病の斑点が増えます。夏の対策は病気の予防でもあります。
一番効くのは芽を出させない管理
対策の中心は薬剤ではなく、産卵の場になる新芽を夏に作らないことです。夏秋梢が多いほど発生量が増えるので、窒素と水の与え方、夏の剪定量をまず見直します。
- 夏の追肥を控える
- 6月以降の窒素を減らします。夏に肥料が効くと秋まで芽が出続け、産卵の場所を自分で用意することになります。鉢植えは特に効きやすいので注意します。
- 夏に強剪定をしない
- 太枝を夏に落とすと、その反動で夏秋梢が一斉に出ます。夏に切るのは徒長(間のびして弱く伸びること)枝だけにとどめ、太枝の更新は翌年3月に回します。
- 水は乾湿の差を小さく
- 乾きと湿りの差が大きいと、まとまった雨のあとに芽が動きます。鉢は表土が乾いたら鉢底から流れるまで与え、毎日少量を繰り返さないようにします。
新芽の摘除とネット被覆
- 秋の芽はかき取る
- 8月から10月に伸び出した芽は、5センチに満たないうちに指で取ります。この枝はほとんど花をつけないので、取っても翌年の収穫は減りません。
- 幼木は丸ごと覆う
- 植えて1、2年の木は、目合い1ミリ以下の防虫ネットで樹全体を覆います。成虫が入れなければ被害はほぼ止まります。開花期は受粉のため外します。
- 覆うのは夏だけでよい
- 春枝は一斉に展開して早く硬くなるため被害が軽くすみます。ネットは6月下旬から10月まで、発生の山に絞ると管理が楽になります。
- 反射資材を足す
- 株元に銀色のマルチを敷くと成虫が近づきにくくなります。単独では補助的ですが、幼木のネットと組み合わせると差が出ます。
やりがちな手当ての間違い
絵が描かれた葉は、原則そのまま残します。すでに食害された葉でも光合成はでき、幼木の生育を支えます。むしって減らすと樹の回復がかえって遅れます。
- 全部むしらない
- 絵の描かれた葉を残らず取ると、光合成する葉が減って新しい芽が押し出され、次の世代を呼び込みます。取るほど増える形になります。
- 取るのは巻いた葉だけ
- 葉の縁が巻いて中で蛹になっているものだけを摘み、袋に入れて処分します。曲線があるだけの葉は残します。次の世代を減らす効果はここに集中します。
- 寄生蜂を殺さない
- 幼虫には小型の寄生蜂がつきます。広く効く薬を夏に何度もまくと天敵が消え、翌年は前の年より増えることがあります。散布は回数を絞ります。
- トラップは目安に使う
- 黄色い粘着板を樹冠の高さに吊ると、成虫の飛来の増減が分かります。捕まえて減らす道具ではなく、手を打つ時期を決める物差しとして使います。
手間と効き目を比べる
| 手段 | 手間 | 効き目 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 夏秋梢を出さない管理 | 中 | 大 | すべての樹。まずここから始める |
| 新芽の摘除 | 大 | 中 | 樹が小さく、手が届く間 |
| 防虫ネットで覆う | 中 | 大 | 植え付け1、2年の幼木 |
| 巻いた葉の摘み取り | 小 | 小 | 発生が始まった直後だけ |
| 粘着トラップ | 小 | 小 | 時期を知るための観察 |
| 薬剤散布 | 小 | 大 | 幼木や、かいよう病が出ている樹 |
薬剤を使うなら、新梢が2から3センチ伸びた時に合わせます。曲線が見えてからでは幼虫は葉の中にいて、散布しても届きません。
見回りの間隔と記録
対策の成否は、芽が出たことに気づけるかで決まります。ミカンハモグリガは新芽が伸び始めてから数日で産卵するので、週に一度では手遅れになる時期があります。
- 6月から10月は3日おき
- 新梢が伸びる季節だけ、樹の外周を3日おきに一周します。伸び始めの芽は5センチ未満で、この段階なら指でかき取るだけで済みます。
- 見るのは樹の上と外側
- 日がよく当たる樹冠の上部と外周から芽が出ます。中を探すより、外から見上げて明るい緑の若い葉を探すほうが早く見つかります。
- 曲線の新旧を見分ける
- 古い被害痕は白く乾き、新しいものは葉と同じ厚みで銀色に光ります。新しい線が増えていれば、いま成虫が飛んでいる合図です。
- 年ごとに山の時期を記録
- 初めて曲線を見た日と、被害が一番多かった週を毎年控えておきます。地域ごとの発生の山はほぼ毎年同じ時期に来ます。
レモンの収穫までのコツは作物ページに
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