まず育てられる場所か確かめる
八朔は広島の因島で生まれた中晩柑で、冬に実を枝に付けたまま年を越します。木そのものはマイナス五度前後まで耐えますが、実はマイナス三度を下回る夜が続くと中の袋が凍って苦くなります。関東平野部の露地では、北風を遮る建物や生け垣の南側に植えられるかどうかが最初の判断材料です。
| 地域・場所 | 向き不向き | 対策の目安 |
|---|---|---|
| 関東平野の南向き庭 | 育てられる | 北側に風よけがあれば地植えでよい |
| 関東の内陸・北風の当たる畑 | 工夫が要る | 十二月から寒冷紗を掛け、早採りして貯蔵する |
| 東北・標高の高い地域 | 地植えは難しい | 鉢植えにして冬は軒下か室内へ |
| ベランダ | 鉢なら可能 | 十号鉢以上、冬は壁際に寄せる |
冬の朝に霜柱が立つ場所は、実が枝で凍りやすい場所です。落葉した草花が多いなら、その一角は避けます。
受粉樹を隣に用意する
八朔は自分の花粉では実が付きにくい性質(自家不和合性)が強く、一本だけ植えると花はたくさん咲くのに実がほとんど残らないことがあります。夏みかん、甘夏、日向夏など同じ時期に咲く別の品種を五メートル以内に植えるか、鉢植えを花の時期だけ隣に並べると実の付きが安定します。
苗を買うときに受粉樹をセットで売っている店もあります。庭が狭い場合は、鉢植えの甘夏を一本持っておくだけでも十分です。花が咲く五月に隣へ移動できるのが鉢植えの利点です。
- 相棒の品種を決める
- 夏みかん、甘夏、日向夏、清見などが相性のよい相手です。温州みかんは花粉がほとんど無いので受粉樹にはなりません。近所に柑橘の木が多いなら省けることもあります。
- 距離を決める
- 蜂が行き来できる五メートル以内が目安です。壁を挟むと蜂の動線が途切れるので、同じ面に植えます。鉢植えなら開花中だけ枝が触れる位置に寄せます。
植え付けは三月中旬から四月
柑橘は落葉樹のように冬に植えられません。根が動き出す三月中旬から四月上旬に植えると、寒さで根を傷めずに活着します。秋植えは根が張る前に冬が来るので、暖地以外では避けます。苗は接ぎ木二年生で、幹が鉛筆より太く、葉の色が濃いものを選びます。
- 穴を大きく掘る
- 直径六十センチ、深さ五十センチほど掘り、掘り上げた土に腐葉土をバケツ一杯と苦土石灰をひと握り混ぜて埋め戻します。柑橘は弱酸性から中性の土を好むので、石灰は少しで十分です。
- 接ぎ木部分を土から出す
- 接ぎ木のこぶが地面より五センチほど上に来るように高さを合わせます。深く植えると台木から芽が出て、八朔ではない枝に養分を取られます。
- 支柱を立てて水をたっぷり
- 苗の脇に一本支柱を立てて麻ひもで結び、株元に十リットル以上水を注ぎます。根が落ち着くまでの一か月は、土の表面が乾いたら水をやります。
- 苗を切り詰める
- 地上五十センチから六十センチで幹を切り戻します。もったいなく感じますが、葉の数を減らして根の負担を軽くすると、その年の枝の伸びがそろいます。
ポット苗は根がとぐろを巻いていることがあります。底の根を三分の一ほど手でほぐしてから植えると根が外へ伸びます。
鉢植えは十号から始める
ベランダや寒い地域では鉢植えが現実的です。八朔は木が大きくなりやすいので、小さい鉢では実が付く前に根詰まりします。最初から十号(直径三十センチ)以上の鉢に植え、二年ごとにひと回り大きくします。用土は果樹用の培養土で構いません。
| 鉢の大きさ | 木の目安 | 実の数の目安 |
|---|---|---|
| 十号 | 植え付け一年目から二年目 | 実は付けない |
| 十二号 | 三年目から四年目 | 五個前後 |
| 十五号・鉢底広めの木製プランター | 五年目以降 | 十個から二十個 |
鉢植えは受粉樹と並べやすい反面、冬に凍りやすい弱点があります。マイナス三度の予報が出たら壁際に寄せて不織布を掛けます。
植えた年は実を付けさせない
植えた年に花が咲いても、すべて摘み取ります。若い木に実を付けると根と枝が育たず、翌年以降の実付きが遅れます。地植えなら三年目、鉢植えなら二年目の春に初めて数個だけ残すのが目安です。八朔は一つの実が三百グラムから四百グラムと重いので、細い枝に残すと折れます。
- 一年目は花を全部取る
- 五月に白い花が咲いたら指で摘み取ります。実を付けずに枝と根を作る年にします。葉の数が増えて枝が太るのが順調な目安です。
- 三年目に数個だけ残す
- 太い枝に付いた実を三個から五個だけ残し、ほかは六月末までに摘みます。実の重さで枝が垂れてきたら、支柱で受けます。
根付かないときの原因を切り分ける
植えて二か月たっても新しい芽が伸びない、葉が丸まって落ちるというときは、水と植え方のどちらかに原因があることがほとんどです。葉を触って張りがあるか、株元の土を掘って湿り方を確かめてから手当てします。
| 症状 | 疑う原因 | 次にすること |
|---|---|---|
| 葉が内側に丸まりぱらぱら落ちる | 水切れ | 株元に藁やバークを敷いて朝に水をやる |
| 葉が黄ばんで下から落ちる | 水のやり過ぎで根が傷んだ | 水を控え、鉢なら底穴の詰まりを確かめる |
| 芽は出るがすぐ枯れる | 深植えで接ぎ木部分が埋まっている | 土を掻き出して接ぎ木のこぶを出す |
| 台木から勢いのよい枝が出る | 台木の芽(カラタチ) | 根元から手で欠き取る |
台木のカラタチの枝は葉が三枚一組で、鋭いトゲが目立ちます。見つけたらその場で取り除かないと、八朔の枝より勢いよく伸びて木を乗っ取ります。
八朔の植え付けに使うもの
木は一度植えたら動かせません。植え穴と支柱をきちんと作るかどうかで、その後の何年かが決まります。
数量は苗木 1 本を単位にしています。
- 完熟堆肥・腐葉土探す言葉「完熟堆肥 バーク 40L」
- 規格の目安
- バーク堆肥か腐葉土。40L 前後の袋。
- 数量の目安
- 植え穴 1 つ(直径 60cm × 深さ 50cm)に 20〜30L を掘り上げた土と混ぜます。
穴を大きく掘って土を入れ替えるのが植え付けの本体です。ここを手抜きすると、根が広がらないまま何年も伸び悩みます。
- 支柱(添え木)探す言葉「園芸支柱 太い 180cm」
- 規格の目安
- 直径 25〜30mm × 長さ 180cm。1 本の添え木か、2 本の二脚(鳥居型)。
根が張るまでの 1〜2 年、風で株元が動くと細い根が切れ続けます。細い支柱では木の重さを支えられません。
- 樹木用の結束テープ探す言葉「樹木 誘引 テープ 幅広」
- 規格の目安
- 幅 20mm 前後の伸びる素材か、麻ひもと当て布。
幹は太ります。細いひもで縛ると食い込み、そこで水の通り道を締めてしまいます。幅の広いもので 8 の字に留めます。
- 緩効性肥料(元肥)探す言葉「緩効性肥料 元肥 樹木」
- 規格の目安
- 粒状で長く効くタイプ。
- 数量の目安
- 植え穴 1 つに 50〜100g。根に直接触れないよう、土を一枚かぶせてから植えます。
植え付け直後は根が傷んでいます。濃い肥料が触れると、そこから傷みが広がります。
- 鉢で育てるなら支柱は短いもので足ります。180cm の添え木は地植え用です。
- 植え穴に石を入れる必要はありません。水はけが悪いなら、盛り土にして高く植えるほうが効きます。
八朔の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方は八朔の育て方にまとめています。
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