年間の全体像
八朔の一年は、五月の開花から翌年一月の収穫まで実を養い続ける長い周期です。収穫の直後に翌年の花芽が動くため、冬の寒さ対策と春の剪定、夏の摘果と水やりが切れ目なく続きます。どの月に何をするかを最初に頭に入れておくと、やり損ねが減ります。
| 月 | 作業 | 目安 |
|---|---|---|
| 一月 | 収穫、寒冷紗の点検 | マイナス三度の予報が出たら実を採り切る |
| 二月 | 貯蔵した実の追熟、寒さ対策 | 貯蔵一か月で酸が抜けたころから食べる |
| 三月 | 剪定、春肥、植え付け | 芽が動く直前、枯れ枝と混み枝を抜く |
| 四月 | 新芽の観察、アゲハの卵取り | 新葉が展開したらエカキムシに注意 |
| 五月 | 開花、受粉樹を隣へ | 白い花が咲いたら鉢植えの受粉樹を寄せる |
| 六月 | 生理落果の観察、夏肥 | 落果が止まったころに肥料を施す |
| 七月 | 摘果、マルチ、水やり開始 | 葉八十枚に実一個まで絞る |
| 八月 | 水やり、二回目の摘果 | 十日雨がなければたっぷり潅水 |
| 九月 | 水やり、カミキリムシの幼虫確認 | 株元におがくず状のふんが無いか見る |
| 十月 | 実の色づき始め、草取り | 黄色く色づき始めたら鳥よけを準備 |
| 十一月 | 秋肥、マルチを厚く | 収穫前に肥料で体力を戻す |
| 十二月 | 収穫開始、寒冷紗掛け | 皮が黄色くなり霜が降りる前に採り始める |
寒冷地寄りの場所では十二月中に採り切って貯蔵し、暖地では一月まで木に付けて糖を上げます。
冬 十二月から二月
冬の主役は収穫と寒さ対策です。八朔の実は木に長く付けるほど糖が上がりますが、マイナス三度を下回る夜に当たると中の袋が凍って苦みが出ます。天気予報を見て、寒波の前に採り切るか、寒冷紗で守るかを決めます。採った実はすぐには食べず、一か月から二か月貯蔵して酸を抜きます。
- 寒波の前に採るか守るかを決める
- マイナス三度以下の予報が二晩続くなら、その前に採り切ります。一晩だけなら寒冷紗か不織布を木全体に掛けてしのぎ、翌日外します。
- 採った実を貯蔵する
- 新聞紙に包んで段ボールに入れ、五度から十度の暗い場所に置きます。玄関や北側の物置が向いています。週に一度、傷んだ実を抜きます。
- 剪定はまだしない
- 落葉果樹の剪定時期と重なりますが、柑橘は冬に切ると枝が枯れ込みます。三月まで待ちます。
春 三月から五月
三月は一年で最も作業が集まる月です。剪定、春肥、植え付けと植え替えを、芽が動き出す前に済ませます。四月に新芽が伸び始めると、アゲハの卵とハモグリバエ(エカキムシ)が付きます。五月の開花は受粉樹を隣に置く一度きりの機会です。
- 三月に剪定と春肥
- 枯れ枝と内向きの枝を抜き、上に伸びすぎた太い枝を根元から切ります。終わったら果樹用の有機質肥料を枝先の真下にまきます。
- 四月は新芽を毎朝見る
- 新葉が展開したら、葉の裏にアゲハの黄色い卵が無いか、葉に白い線が走っていないかを見ます。見つけたら葉ごと取ります。
- 五月に受粉樹を寄せる
- 白い花が開いたら、鉢植えの夏みかんや甘夏を枝が触れる位置へ移動します。地植えの受粉樹があるなら何もしなくて構いません。
植えた年の木は五月の花を全部取ります。実を付けると根と枝が育ちません。
夏 六月から八月
六月に小さな実が自然に落ちる生理落果が起き、止まったころが夏肥の合図です。七月上旬までに摘果して実の数を絞り、株元にマルチを敷いて水やりを始めます。八月は実が急に太る時期で、水切れがそのまま実の小ささに出ます。
| 時期 | 株の姿 | すること |
|---|---|---|
| 六月中旬 | 小さな実がぽろぽろ落ちて止まる | 夏肥をふた握り施す |
| 七月上旬 | 残った実が親指大になる | 葉八十枚に一個まで摘果しマルチを敷く |
| 八月 | 実がピンポン玉より大きく枝が垂れる | 十日雨がなければ潅水、細枝の実を追加で摘む |
上向きに付いた実は日焼けして皮が茶色くなります。摘果のときに優先して落とします。
秋 九月から十一月
九月はカミキリムシの幼虫が幹の中で育つ時期です。株元におがくず状のふんが出ていないかを見ます。十月に実が黄色く色づき始めたら鳥よけを考え、十一月上旬に秋肥を施して収穫に備えます。秋肥は翌年の花芽を作る肥料なので、隔年結果を防ぐ要になります。
- 九月に幹の根元を見る
- 幹の地際に木くずのようなふんがあれば、中にカミキリムシの幼虫がいます。穴を見つけて針金で刺すか、幼虫用の殺虫剤を穴に注入します。
- 十一月上旬に秋肥
- 有機質の果樹用肥料をふた握りから三握り、枝先の真下にまきます。遅れると翌年の花芽に間に合わないので、十一月中旬までに終えます。
- マルチを厚くする
- 秋肥のあとに藁やバークチップを厚く足します。根の凍結を防ぎ、実の凍害も軽くなります。
やり損ねた月の立て直し方
作業を一つ逃しても木がすぐ枯れることはありませんが、翌年の実の数や大きさに影響が出ます。何を逃したかで、その年のうちにできる手当てが変わります。
| 逃した作業 | 起きること | 立て直し |
|---|---|---|
| 三月の剪定 | 枝が混み内側が枯れる | 五月までに枯れ枝だけ抜き、太い枝は来春まで待つ |
| 七月の摘果 | 小玉が多く翌年の花が減る | 八月中でも遅れて摘果し、秋肥を必ず施す |
| 八月の水やり | 実が小さく皮が厚い | 九月に入っても潅水を続けて肥大を伸ばす |
| 十一月の秋肥 | 翌年の花芽が減る | 十二月上旬までなら施す、それ以降は三月の春肥を増やす |
| 寒波前の収穫 | 実が凍って苦くなる | 凍った実は早めに採り、ジャムや果汁に回す |
八朔の栽培に一年を通して使うもの
木の作業は冬と夏に固まります。冬に剪定と寒肥、生育期に袋かけと防鳥。この 4 つを季節の前にそろえておきます。
数量は植えて数年たった木 1 本を単位にしています。
- 剪定ばさみ探す言葉「剪定ばさみ 果樹」
- 規格の目安
- 刃渡り 5〜6cm、直径 2cm 程度まで切れるもの。バイパス式(刃が交差するもの)。
アンビル式は枝を潰します。生きた枝を切るならバイパス式で、切り口が滑らかなほど早くふさがります。
- 剪定のこぎり探す言葉「剪定のこぎり 折込 24cm」
- 規格の目安
- 刃渡り 24cm 前後の折込式。生木用の刃(目の粗いもの)を選びます。
直径 2cm を超える枝は、はさみで切ろうとすると枝も刃も傷めます。工作用ののこぎりは生木で目が詰まります。
- 有機質肥料(寒肥用)探す言葉「油かす 骨粉 有機質肥料」
- 規格の目安
- 油かすと骨粉の配合肥料。5〜10kg 袋。
- 数量の目安
- 成木 1 本に 1〜2kg。樹冠(枝の広がり)の外周に沿って埋めます。
冬に入れて、春に効き始めるのを狙う肥料です。ゆっくり分解するので、休眠期のうちに入れておきます。樹種と樹齢で必要な量は変わるので、詰めたいときは施肥基準を見てください。
出典: 農林水産省「施肥基準 — 果樹」
- 防鳥ネット探す言葉「防鳥ネット 目合い25mm」
- 規格の目安
- 目合い 20〜25mm。小鳥まで防ぐなら 15mm。
- 数量の目安
- 高さ 2m の木 1 本を覆うのに 4m × 4m 程度。
色づく直前にかけます。目合いが大きすぎると小鳥が入り、細かすぎると風で煽られて枝を傷めます。
- 高枝切りばさみは、木が背を越してからで十分です。低く仕立てるならずっと不要です。
- チェーンソーは家庭の果樹には要りません。剪定のこぎりで足ります。
八朔の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方は八朔の育て方にまとめています。
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