いつ何を警戒するか
この作物の被害は、時期によって主役が入れ替わる。定植直後は飛来した成虫の産卵、生育中盤は葉を食べる幼虫、そして花蕾が見えてからは花蕾の内部に潜り込む幼虫が問題になる。
つまり警戒すべき順番があらかじめ決まっている。畑に出るたびに全部を探すのではなく、その月に来るものだけを見れば見落としが減る。
| 時期 | 主に警戒するもの | 現れる兆候 |
|---|---|---|
| 定植〜2週間 | 飛来した成虫の産卵 | 葉裏の小さな黄色い卵、白い蝶の飛来 |
| 生育中盤 | 葉を食べる幼虫 | 葉の表皮だけ残る白い食害痕、黒い糞 |
| 花蕾が見えてから | 花蕾に潜る幼虫 | つぼみの表面の欠け、花蕾際の糞 |
| 低温期 | アブラムシ | 新芽の縮れ、葉のべたつき |
防虫ネットは定植当日から
ネットは植えた当日にかけるのが原則。飛来する成虫は植え付け直後の柔らかい株に集中して産卵するため、数日遅れただけで内側に卵を抱え込む結果になる。
- 目合いを選ぶ
- 体の小さい種類は1ミリの目合いを通り抜ける。0.6〜0.8ミリのものを選ぶと、蝶だけでなく小型の蛾やアブラムシまで止められる。
- 裾を土で埋める
- 裾は10センチほど土に埋めるか、土のうで隙間なく押さえる。株元に1か所でも隙間があると、そこからすべて入る。
- 葉を触れさせない
- 葉がネットに触れていると、外から卵を産みつけられる。支柱を高めに立て、株が伸びたらトンネルの高さを上げる。
- かける前に見る
- ネットをかける前に苗の葉裏を確認し、卵や幼虫を取り除く。持ち込んだ状態で密閉すると、天敵の入らない安全な場所を与えてしまう。
ネットを外す判断
外す時期は日付ではなく、株の大きさと気温で決める。株がネットを押し上げるほど育ち、成虫の飛来が減る時期に入ったら外して構わない。中間地なら10月半ば以降が目安になる。
- 外してよい条件
- 株がネットに常時触れ、最低気温が15℃を下回る日が続くようになったら外す。この頃には成虫の活動が落ち、産卵の圧力が下がる。
- 外さないほうがよい場合
- 暖地で暖かい日が続く年や、花蕾が見え始めた時期に重なる場合は、外さず高さだけ上げる。花蕾が出てからの被害が最も痛い。
- 外した後の見回り
- 外して以降は週に2回、葉裏と生長点を見る。糞を見つけたらその真上の葉を裏返せば、たいてい犯人がいる。
ネットは害虫を防ぐと同時に風と霜も和らげる。冬に外す必要がなければ、そのまま防寒用としてかけ続けてよい。
花蕾に入られる前に
花蕾の内部に潜り込まれると、外からの手当てはほぼ効かなくなる。つぼみの隙間は幼虫にとって格好の隠れ場所で、外からは見えず、収穫して初めて分かることが多い。
だから対策は「入られてから探す」ではなく「入られる前に数を減らす」に寄せる。花蕾が見え始める2週間前から見回りの密度を上げるのが実際的な設計になる。
- 花蕾が見え始めたら毎日見る
- 生長点に白い粒が見えたら、そこから毎日つぼみの表面を見る。表面がわずかに欠けている、粉状の糞があるのが侵入の初期サイン。
- 小さいうちに手で取る
- 幼虫は大きくなるほど対処が難しくなり、内部にも入り込む。若い幼虫のうちに葉ごと取り除くのが最も確実で早い。
- 外葉を残す
- 外葉を切りすぎない。外葉は光合成の場であると同時に、幼虫が先に食べる場所でもあり、花蕾への到達を遅らせる緩衝になる。
- 収穫後に確認する
- 切った花蕾は塩水に10分ほど浸けると、内部に潜んだ虫が浮いてくる。冬の株は特に、寒さで動かない個体が残っていることがある。
アブラムシへの備え
アブラムシは数が増えると新芽が縮れ、排泄物にすす状のかびが付いて花蕾が黒ずむ。花蕾のつぼみの間に入り込むと洗っても落ちにくく、収穫物の価値を直接下げる。
- つく場所を決めて見る
- 新芽と葉裏の葉脈沿いに集まる。株全体を見るのではなく、この2か所だけを見れば早期に気づける。
- 初期は物理的に落とす
- 数が少ないうちは強めの水流で洗い流すか、葉ごと取り除く。少数のうちに減らせば、その後の増え方が明らかに違う。
- 周囲の草を管理する
- 畝の周りにアブラナ科の雑草を残さない。そこで越冬して増えた個体が、春先にまとまって飛んでくる。
- 窒素を効かせすぎない
- 窒素過多で葉が柔らかく茂ると発生が増える。追肥(育てている途中で足す肥料)を一度に多く与えず、分けて与えることが結果的に予防になる。
病気は予防で設計する
この作物で問題になる病気は、土に残るものと、風雨で広がるものに分けられる。どちらも発病してからの対処は難しく、輪作と排水と株間という3つの設計でほとんど決まる。
| 病気 | 出やすい条件 | 予防の設計 |
|---|---|---|
| 根こぶ病 | 酸性土、多湿、アブラナ科の連作 | 石灰で酸度を上げ、排水を改善し2年以上空ける |
| 黒腐病 | 高温多湿、傷口からの侵入 | 雨天の作業を避け、株間を空けて風を通す |
| べと病 | 低温多湿、密植 | 畝を高くし、下葉を整理して湿気を抜く |
| 軟腐病 | 滞水、収穫痕からの侵入 | 収穫は晴れた日に行い、切り口を乾かす |
病気が出た株や落ち葉は畑に残さず片づける。畑の隅に積んでおくと、翌年その区画から再び出る原因になる。
被害が出てからの切り分け
気づいたときにはすでに食われている、という場面のほうが多い。そこからでも原因を取り違えなければ被害は止まる。株を残すか抜くかの判断も、症状ごとにあらかじめ決まっている。
- 糞から犯人を探す
- 葉の上に粉状の糞があれば、その真上の葉を裏返す。虫そのものを探すより糞を探すほうが早く、見落としが減る。
- 残すか抜くかを決める
- 食害が葉だけなら残して回復を待つ。生長点を食われた株と、根にこぶのある株は回復しないので抜いて持ち出す。
- ネットの中で増えたとき
- 閉じ込めた状態は増殖に有利になる。いったん開けて幼虫を取り除き、卵の付いた葉を落としてから閉じ直す。
- 次の作へ持ち越さない
- 収穫後の株と落ち葉を畑に残さない。片づけの手を抜いた区画から、翌年も同じ被害が出ると考えてよい。
| 症状 | 考えられる原因 | 手当て |
|---|---|---|
| 葉に穴が点々とあく | 若い幼虫が葉裏にいる | 葉裏を見て、葉ごと取り除く |
| 花蕾の表面が欠ける | 花蕾に幼虫が入っている | 早めに切り、塩水に十分ほど浸ける |
| 新芽が縮れて黒くなる | アブラムシとすす状のかび | 水流で洗い、窒素の効かせすぎを直す |
| 株がしおれ根にこぶがある | 根こぶ病 | 抜いて持ち出し、酸度と排水を直す |
被害株を畑の隅に積むのは最も避けたい。そこが越冬場所になり、翌年の発生をむしろ早める原因になる。
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