二つの作型を先に決める
にんじんは夏にまいて秋冬にとる作型と、春にまいて初夏にとる作型があります。同じ月に別の作業が並ぶので、自分がどちらをやるかを決めてからカレンダーを読んでください。両方まく場合は畝を分けて記録も分けます。
難所の位置が作型で違います。夏まきは播種直後の高温と乾燥だけが山で、その後は気温が下がって病害虫も減ります。春まきは発芽期の低温、とう立ち(花茎が伸びて葉や根が硬くなること)、梅雨の裂根と、山が三つに分かれます。
| 作型 | 播種 | 収穫 | 難所の時期 |
|---|---|---|---|
| 夏まき秋冬どり | 7月下旬〜8月 | 11月〜翌2月 | 8月の発芽期 |
| 春まき初夏どり | 2月下旬〜4月 | 6〜7月 | 3月と6月 |
どちらか一つなら夏まきを選びます。難所が播種直後の一点に集中していて、そこさえ越えれば秋の気候が味方してくれるためです。
夏まき秋冬どりの月別作業
7月の土づくりから翌2月の収穫終了までが一巡です。8月の管理がそのまま収穫量になるので、毎日水をやれない予定が入っているなら、無理にその週にまかず播種を8月中旬へずらす判断も要ります。
収穫がだらだら続くのがこの作型の利点です。11月から順に必要な分だけ抜き、残りは土に置いたまま冬を越せます。一度に全部抜いて保存場所に困る、ということが起きません。
| 月 | 主な作業 | 注意点 |
|---|---|---|
| 7月 | 土づくり・畝立て・下旬に播種 | 堆肥は3週間前まで、石を拾う |
| 8月 | 播種(中旬まで)・毎日かん水・1回目間引き | 地温35℃超で発芽せず、遮光と不織布 |
| 9月 | 2回目間引き・追肥・中耕 | キアゲハの幼虫が最も多い時期 |
| 10月 | 最終間引き・追肥・土寄せ | 株間10センチ前後に、肩を埋める |
| 11月 | 土寄せ・試し抜き | 肩の直径4センチで収穫開始 |
| 12月 | 収穫・畑での越冬準備 | 霜が続く地域は葉を切り土をかぶせる |
| 1月 | 収穫(土中保存から順次) | 凍結する地域は年内に掘り上げる |
| 2月 | 収穫終了・後片づけ | とうが立つ前に抜き終える |
年内どりなら7月下旬、越冬どりなら8月中旬が播種の目安です。まき遅れると根が太る前に寒さで生育が止まります。
月ごとに見るところ
同じ畝を見に行っても、月によって確かめるものが違います。8月は土の湿り、9月は葉裏の虫、10月は株間、11月以降は肩の露出と太さです。見る対象を決めておくと、五分の見回りでも見落としが減ります。
- 8月は表土の色
- 畝の表面が白っぽく乾いていないかだけを見ます。発芽までの十日間はこれが唯一の仕事で、ここを外すと以降の作業に意味がなくなります。
- 9月は葉の裏と欠け
- 葉が軸だけになっていないか、葉裏に卵や小さな幼虫がいないかを見ます。キアゲハは数が少ないので手で取れば足ります。
- 10月は株間と葉の色
- こぶし一つ分の間隔になっているか、葉が黄ばんでいないかを確認します。混んだままだと根は太らず、病気も出ます。
- 11月以降は肩
- 土から出た肩が橙色に見えていたら土をかぶせます。同時に直径を指で測り、4センチを超えたら試し抜きに移ります。
春まき初夏どりの月別作業
春まきは低温での発芽ととう立ちを保温で越え、梅雨に入る前に太らせて収穫を終える組み立てです。だらだら遅らせると、6月以降の高温多湿で裂根と病気が一気に出ます。
2月下旬から3月にまくならトンネルが前提です。露地でまくなら地温が上がる4月まで待ちます。早くまけば早くとれる作物ではなく、早すぎるとうが立って収穫がゼロになる作物だと考えてください。
| 月 | 主な作業 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1月 | 土づくり・畝立て・マルチ張り | 寒起こしで石を拾い凍らせて砕く |
| 2月 | 下旬からトンネル播種 | とう立ちしにくい春まき用品種を選ぶ |
| 3月 | 露地播種・1回目間引き・換気 | トンネル内が30℃を超えたら裾を開ける |
| 4月 | 露地播種・2回目間引き・追肥 | 遅霜が終わればトンネルを外す |
| 5月 | 最終間引き・追肥・土寄せ | 乾燥が続くならかん水で水分を一定に |
| 6月 | 収穫開始 | 梅雨の急な雨で裂根、早めに抜く |
| 7月 | 収穫終了 | 畑に置くと割れるので早めに掘り上げる |
春まきは収穫を引っ張らないのが鉄則です。梅雨の雨で急に吸水すると外皮が耐えられず、一晩で縦に割れます。
地域別の播種適期
同じ夏まきでも、暖地と寒冷地では1か月近くずれます。寒冷地は冬の凍結で畑に置けないため、早めにまいて年内に掘り上げる組み立てになります。暖地は逆に、暑さが残るぶん播種を遅らせる余地があります。
自分の地域の適期を一年で確定させたければ、二週間ずらして二回まき、どちらがよく育ったかを記録します。表はあくまで出発点で、同じ中間地でも標高や畑の向きで一〜二週間は動きます。
| 地域 | 夏まきの播種 | 春まきの播種 | 冬の扱い |
|---|---|---|---|
| 暖地 | 8月上旬〜下旬 | 3月〜4月上旬 | 畑に置いて2月まで収穫 |
| 中間地 | 7月下旬〜8月中旬 | 3月中旬〜4月 | 土寄せして1月まで収穫 |
| 寒冷地 | 7月中旬〜下旬 | 4月〜5月 | 年内に掘り上げて貯蔵 |
寒冷地の春まきは低温期が長いので、とう立ちしにくい品種でも4月以降にまくほうが安全です。
まき遅れたときの立て直し
適期を逃したと気づいたら、日数の短い品種に替えるか、作型ごと次のまき時に送るかの二択です。適期を一か月過ぎた播種は、寒さで生育が止まって細いまま終わるか、とうが立つかのどちらかになりがちです。
- 夏まきが二週間遅れた
- 三寸系など生育日数の短い品種に切り替えます。収穫までを二十日ほど詰められるので、寒さで生育が止まる前に太らせられます。
- 夏まきが一か月遅れた
- 越冬させて春どりにするか、その畝はほうれん草などに回して翌年の夏まきに備えます。無理にまいても細根で終わります。
- 春まきが遅れた
- 5月以降の播種は勧めません。肥大期が真夏になり、高温で根が太らず病気も増えます。夏まきまで待つほうが確実です。
- 間引きが一か月遅れた
- 二回に分けて最終株間まで減らし、追肥(育てている途中で足す肥料)と土寄せ(株元へ土を寄せること)を同時にやります。収穫は二〜三週間遅らせて肥大を待ちます。
遅れを取り戻そうとして追肥を増やすのは逆効果です。葉ばかり茂って根は太らず、裂根の危険だけが上がります。
月をまたいで効いてくる判断
にんじんは作業の結果が一か月以上あとに出ます。8月の水やりを一日忘れた影響は9月の株数に、9月の間引き遅れは11月の太さに現れます。今月の作業を「来月の何のためか」で捉えると迷いません。
- 播種日を必ず記録する
- 収穫の判断は播種後日数が基準になります。夏まきで110〜130日、春まきで100〜120日が目安なので、まいた日が分からないと試し抜きの時期も決まりません。
- 間引きは葉の枚数で
- カレンダー上の月ではなく本葉1〜2枚、3〜4枚、5〜6枚で判断します。天候で生育は前後するので、日付だけを見ると必ずずれます。
- 追肥の締切を意識する
- 収穫の1か月前で追肥は打ち止めです。11月どりなら10月上旬まで、6月どりなら5月上旬までと逆算しておきます。
- 次作の輪作を考える
- にんじんは同じ場所での連作を2〜3年あけます。収穫が終わった月に、次に何を植えるかまで決めておくと畑が回ります。
にんじんの栽培に一年を通して使うもの
作業のたびに買い足すより、季節の前にまとめて用意しておくほうが結局は安く済みます。一年を通して使うのは、次の 4 つです。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 牛ふん」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥かバーク堆肥。40L 前後の袋で売られています。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
土の粒をつなぐのは微生物の働きで、その餌になるのが堆肥です。未熟なものは根を傷めるので「完熟」と書かれたものを選びます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状のものが扱いやすく、風のある日でも舞いません。1〜20kg 袋。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。1kg 袋で数畝ぶん。
日本の土は雨で酸性に傾きます。**必要な量は土質で 3 倍ほど違い**、黒ボク土は砂質土よりずっと多く要ります。入れすぎると今度はアルカリ性に寄りすぎるので、pH を測ってから決めます。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8」
- 規格の目安
- 窒素・リン酸・カリが同じ比率の粒状。まず 1 袋あればほとんどの野菜に使えます。
- 数量の目安
- 元肥は 1 ㎡あたり 100g、畝 1 本で 150〜200g。追肥は 1 回 1 ㎡あたり 30〜50g。
種類を増やすより、切らさないほうが効きます。作物ごとの正確な量は都道府県が施肥基準として公表しているので、量を詰めたくなったらそちらを見てください。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が楽です。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。50m 巻きなら 10 畝以上。
地温を上げ、雨のはね返りと雑草を抑えます。夏の高温期だけは、地温が上がりすぎるので白黒マルチに替える手もあります。
- 土壌改良材のセット買いは要りません。堆肥と石灰と元肥の 3 つで足ります。
- 連作していない畑なら、土壌消毒剤は要りません。
にんじんの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はにんじんの育て方にまとめています。
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