時期ごとに警戒するものが違う
にんじんの被害は生育段階できれいに分かれます。発芽直後は虫より乾燥と立枯れ、葉が茂る中期は食害と葉の病気、根が太る後期は土の中の線虫と裂根です。全部を年中警戒するのではなく、その時期に起きるものだけを見にいくほうが早く気づけます。
特に夏まきでは、播種した8月から葉が茂る9月にかけてが虫の山です。気温が下がる11月以降は食害がほぼ止まるので、この2か月をどう乗り切るかが実質的な防除計画になります。
| 時期 | 警戒するもの | 出るサイン |
|---|---|---|
| 発芽〜本葉2枚 | ネキリムシ・立枯れ | 朝、株が地際から倒れている |
| 本葉3枚〜茂る頃 | キアゲハ・アブラムシ | 葉が軸だけ残る、新葉が縮れる |
| 葉が込み合う頃 | 黒葉枯病・うどんこ病 | 下葉に黒い斑点、白い粉 |
| 肥大期 | ネグサレセンチュウ・裂根 | 葉が萎れる、根に縦の割れ |
キアゲハは目視で足りる
にんじんの葉を丸坊主にするのはほぼキアゲハの幼虫です。セリ科だけを食べるので、にんじん、パセリ、セロリ、みつばを植えていれば必ず親が飛んできます。発生は春から秋まで続き、年に数回世代を繰り返します。
被害の出方が特徴的で、一晩で葉柄だけ残して食べ尽くします。幼虫が大きく数も少ないため、家庭菜園の規模なら見つけて取るだけで十分に間に合います。問題は見落としで、葉の裏や株の中心にいると気づきにくいところです。
- 卵のうちに見つける
- 葉先に付いた乳白色の小さな球が卵です。親が飛んでいる時期に葉先を見て回り、見つけたら葉ごと摘み取ります。
- 若齢は鳥のふん状
- 小さいうちは黒と白のまだらで、鳥のふんに擬態しています。これを取れば大きな被害になりません。
- 食害跡から逆算する
- 葉が欠けていたらその周辺の株を上から下まで見ます。緑と黒の縞になった終齢幼虫は食べる量が桁違いです。
- 防虫ネットで入れない
- 播種直後から支柱でトンネルを作りネットをかけると、親が産卵できません。間引きのたびに開けるので裾の閉め忘れに注意します。
葉を8割食べられても根は残ります。慌てずに幼虫を取り除き追肥(育てている途中で足す肥料)すれば、葉が再生して収穫までこぎつけることが多いです。
ネグサレセンチュウは土の履歴の問題
根の表面にかさぶた状の傷や黒いくぼみが並び、細根が褐色に腐るのがネグサレセンチュウの被害です。地上部は日中だけ萎れ、生育が揃わなくなります。目に見えない土中の害なので、出てからでは打つ手がほとんどありません。
根本の対策は輪作です。同じ場所でにんじんを続けると密度が上がります。相性の悪い作物が続く畑ほど発生しやすいので、収穫後にすぐ次の作付けを決めておきます。
- 2〜3年あける
- にんじんを作った畝では2〜3年、セリ科と根菜以外を挟みます。同じ畝を毎年にんじんに使う設計をやめるのが最も効きます。
- 対抗植物を挟む
- マリーゴールドや緑肥用のえん麦を一作挟むと密度が下がります。花を咲かせるだけでなく、生育後にすき込むところまでやります。
- 夏に太陽熱で処理する
- 真夏に畝へ十分かん水して透明フィルムで覆い、3〜4週間置きます。地温が上がって表層の密度が下がり、雑草の種も減ります。
- 被害株は持ち出す
- 傷んだ根や細根を畑に埋め戻すと、線虫がそのまま次の作へ持ち越されます。抜いた株は畝に放置せず、まとめて畑の外へ出して処分します。
葉の病気は風通しで抑える
黒葉枯病は下葉に黒褐色の斑点が出て枯れ上がり、うどんこ病は白い粉をふきます。どちらも葉が込み合って湿った状態で広がるため、間引きと土寄せ(株元へ土を寄せること)をきちんとやっている畑では大きな問題になりにくいのが実情です。
- 株間をけちらない
- 最終株間10センチ前後を守ります。混んだ株の下は乾かず、そこから枯れ上がります。間引きは病気対策でもあります。
- 下葉を早めに外す
- 黄ばんだ下葉、斑点の出た葉は付け根から取り、畑の外に出します。放置すると胞子の供給源になります。
- 水は株元へ
- 葉の上からかけ続けると濡れている時間が長くなります。かん水は株元に、できれば午前中に済ませます。
- 連作を避ける
- 葉の病気も土や残さで持ち越します。センチュウ対策の輪作と同じ設計で同時に効かせます。
裂根は水と時間の問題
根が縦に割れる裂根の原因は二つしかありません。土の水分が急に変わること、そして収穫が遅れることです。乾燥が続いたあとの大雨で内部が急に太り、外皮が追いつかずに裂けます。畑に置きすぎた根も、外皮が硬くなって同じことが起きます。
割れた根は貯蔵がきかず、そこから腐ります。ただし食べられないわけではないので、見つけたら早めに収穫して先に使い切ります。
- 水分を一定に保つ
- 乾燥が続いたらまとめて大量にやらず、数日おきに適量ずつかん水します。急に潤すことが引き金になります。
- 敷きわらで乾燥を防ぐ
- 畝面にわらやもみ殻を敷くと土の水分の振れ幅が小さくなります。夏まきの初期にも地温対策として効きます。
- 適期に抜き切る
- 肩の直径が5センチを超えたら遅れ気味です。大雨の予報が出たら、太った株から先に収穫してしまいます。
- 終盤の追肥をやめる
- 収穫1か月前以降の窒素は急な肥大を招き、裂根を後押しします。追肥の締切を守ることが予防になります。
予防の設計を先に決める
にんじんの被害の大半は、まく前とまいた直後に決まる設計で防げます。畝の場所を輪作で決め、播種と同時にネットをかけ、間引きの日を決めておく。この三つを段取りにしておけば、あとは見回りだけで済みます。
- 畝の履歴を記録する
- どの畝でいつにんじんを作ったかを残します。2〜3年の輪作は記録がないと必ず崩れます。
- 播種と同時にネット
- 虫が出てからかけても中に閉じ込めるだけです。まいたその日にトンネルを立ててしまいます。
- 週一回、葉裏を見る
- 卵と若齢幼虫、アブラムシの初発はすべて葉裏です。週に一度めくる習慣があれば手作業で片付きます。
- 異変は根で確かめる
- 葉の萎れが直らないときは一株抜いて根を見ます。線虫か、水の問題か、根の状態でしか判断できません。
よく似た症状の見分け方
にんじんは地上部の症状が似通っていて、虫と病気と生理的な障害を取り違えやすいところです。葉のどこから傷んでいるか、根まで及んでいるかを見ると分けられます。
| 症状 | 見分けるところ | 当てはまるもの |
|---|---|---|
| 葉が食われて軸だけ残る | 黒と黄の縞の幼虫がいるか | キアゲハ |
| 株が黄ばんで小さいまま | 根にこぶや傷があるか | ネグサレセンチュウ |
| 下葉に黒い斑点が広がる | 雨の後に増えているか | 葉の病気 |
| 根が縦に割れている | 雨の前後で急に太ったか | 裂根 |
見分けがつかないときは、疑わしい株を1本抜いて根まで見ます。地上部だけでは土の中の原因は分かりません。
にんじんの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はにんじんの育て方にまとめています。
iPhone 対応(Android 版は準備中)。無料で使えます。