雄花と雌花を見分ける
六月に枝から垂れ下がる十〜十五センチのひも状の花はほとんどが雄花です。雌花はその花穂の付け根に付く三〜五ミリの緑色のとげのある小さな塊で、これが秋のイガになります。雌花は新梢の先端寄りの数本の花穂にしか付かないので、まず数を数えて実の見込みを立てます。
| 見た目 | 正体 | 役割 |
|---|---|---|
| 白っぽく垂れ下がるひも状の花 | 雄花の花穂 | 花粉を出す。ほぼすべて落ちる |
| 花穂の根元の小さな緑のとげの塊 | 雌花(一つに三つの花) | 受粉すると一つのイガになる |
| 雌花のない短い花穂 | 雄花だけの花穂 | 枝の下のほうに多い |
| 先が茶色く縮れた雌花 | 受粉できなかった雌花 | 七月にぽろっと落ちる |
花の時期に独特の強い匂いがしますが、これは雄花が虫を呼ぶためのものです。匂いがしない年は雄花が少ない年で、受粉樹の花の様子を確かめます。
自分の花粉では実がなりにくい
栗は同じ木や同じ品種の花粉が雌花に付いても、ほとんど実になりません。別の品種の花粉が必要です。花粉は主に風と虫で運ばれ、届く範囲は数十メートルと言われますが、確実なのは二本を五メートル以内に植えることです。
受粉樹の開花期が合っているかは、六月に両方の木を見比べて確かめます。片方の雄花が茶色く落ち始めているのにもう片方の雌花がまだ小さいなら、開花期がずれています。
- 六月上旬に両方の木を見る
- 二本の木の雄花が同時に白く伸びて花粉を飛ばしているか確かめます。指で雄花をこすって黄色い粉が付けば花粉が出ています。
- 雌花の受け入れ時期を知る
- 雌花の先の柱頭(白い糸状の部分)が伸びて開いているときが受粉できる時期です。開花から一週間ほどで、この間に花粉が付く必要があります。
- ずれていたら三本目を足す
- 毎年ずれるなら、中間の開花期の品種を三本目として足すか、鉢植えの受粉樹を花の時期だけ近くに置きます。
人工受粉で確実にする
木が若くて花が少ない年や、開花期に雨が続いて虫が飛ばない年は、人の手で花粉を付けると実付きが安定します。栗の花粉は量が多いので、雄花をそのまま雌花にこすり付けるだけで十分です。
- 雄花を採る
- 受粉樹のほうから、花粉を出している雄花の花穂を数本折り取ります。晴れた日の午前中、花粉が乾いて飛びやすいころが目安です。
- 雌花にこすり付ける
- 実を取りたい木の雌花に、雄花の花穂を軽くこすり付けます。柱頭が白く開いている雌花だけを狙い、一つの花穂で五〜十個の雌花に付けられます。
- 二〜三日おきに繰り返す
- 雌花の開花は木の中でもばらつくので、一度で終わらせず、一週間のうちに二〜三回行います。雨の直後は花粉が流れるので避けます。
筆で花粉を集めるやり方もありますが、栗は雄花をそのまま使うほうが早く、花粉の量も多く確実です。
実になる数はイガの落ち方で決まる
受粉した雌花は七月に小さなイガになりますが、栗は自分で実を減らします。七月上旬と八月上旬の二回、木が養えないイガを落とします。この生理落果は自然なことで、残ったイガの数がその年の収穫数です。
| 時期 | 落ちるもの | 見方 |
|---|---|---|
| 六月下旬〜七月上旬 | 受粉できなかった雌花 | 小さいまま茶色くなって落ちる。正常 |
| 七月中旬〜八月上旬 | 養分が足りない小さいイガ | 多すぎるときは木の力不足 |
| 八月下旬以降 | 虫が入ったイガ | 落ちたイガに穴があれば害虫 |
| 九月の落果 | 熟した実 | これが収穫。正常 |
実を大きくする摘果
生理落果の後もイガが多く残っている場合は、八月上旬に一部を取って残りを大きくします。一つのイガには実が三つ入るので、イガの数で調整します。目安は充実した枝一本に二〜三イガ、細い枝なら一イガです。
- 枝ごとにイガを数える
- 一本の新梢に付いたイガを数え、三つ以上なら小さいものから取ります。枝の太さが鉛筆より細ければ一つだけ残します。
- 傷のあるイガを優先して取る
- とげが茶色くなっているイガや、穴の開いたイガは中で虫が育っているので先に取ります。取ったイガは庭に放置せず処分します。
- 若木は全部取る
- 植えて三年以内の木は、イガが付いても全部取ります。実に養分を回すと枝の伸びが止まり、木の骨格作りが遅れます。
摘果を怠ると、翌年に実がほとんど付かない年が来ることがあります(隔年結果)。毎年安定して採るには、なりすぎた年に減らすことが要です。
実が付かないときの原因を切り分ける
花は咲くのにイガにならない、イガが付いても中身が空という年は、受粉の段階と実が育つ段階のどちらでつまずいているかを見分けます。落ちた時期と落ちたものの姿がその手がかりになります。
| 症状 | 疑う原因 | 次にすること |
|---|---|---|
| 雌花がそもそも付かない | 木が若いか枝先を剪定で切った | 枝先を切らずに一年待つ |
| 雌花は多いが七月に全部落ちる | 受粉樹がない・開花期がずれた | 別品種を足すか人工受粉 |
| イガは育つが中の実がしいな | 受粉不良か夏の水切れ | 人工受粉と八月の潅水 |
| 一年おきにしかならない | なりすぎた年の疲れ | 八月の摘果と礼肥 |
しいな(中身の入っていない実)ばかりの年は、受粉樹の花粉が届いていない可能性が高いです。翌年は人工受粉を試して比べます。
栗の受粉に使うもの
1 本では実らない木があります。自分の木がそれに当たるなら、道具の前に相手の品種が要ります。
- 授粉用の毛ばたき探す言葉「人工授粉 毛ばたき 園芸」
- 規格の目安
- 柔らかい毛のはたき。梵天と呼ばれる授粉専用のものもあります。
花から花へ軽く触れて回ります。強くこすると花が傷むので、撫でる程度で十分です。
- 授粉用の花粉探す言葉「授粉用 花粉 果樹」
- 規格の目安
- 品種の合う花粉。石松子(増量材)と混ぜて使うものが多いです。
受粉樹を植える場所がないときの代わりです。品種の組み合わせが合わないと実らないので、そこを先に確かめます。
- 綿棒・小筆探す言葉「綿棒 授粉 園芸」
- 規格の目安
- 普通の綿棒か、細い筆。
花の数が少ないときは、1 輪ずつ確実に付けられます。品種を変えるときは新しいものに替えます。
- 1 本で実る品種なら、受粉の道具は要りません。まず自分の品種を確かめます。
- 受粉樹を近くに植えられるなら、人工授粉そのものが要らなくなります。
栗の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方は栗の育て方にまとめています。
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