1列に並べると粒が飛ぶ
花粉は風で運ばれます。1列に植えると、花粉は列と直角の方向へ流れて畑の外へ出ていき、雌穂に届く量が足りません。これが歯抜けの最大の原因です。
粒の1つ1つに、絹糸が1本ずつつながっています。届いた花粉の数だけ粒が実るので、受粉が半分なら粒も半分。あとから追肥(育てている途中で足す肥料)しても埋まりません。
自分がどの植え方に当たるかを先に決めてください。区画の形が決まれば、あとで人工受粉をどこまでやる必要があるかも、この表のまま読み替えられます。
| 植え方のタイプ | 花粉の届き方 | 粒の入り方 |
|---|---|---|
| 1株だけ植える | 受け取る相手がいない | 粒がほとんど入らない |
| 1列に長く並べる | 風向き次第で列の外へ抜ける | 片側だけ歯抜けになりやすい |
| 2列に並べる | 列の間に花粉が落ちる | 端の株に歯抜けが残る |
| 3列以上のブロック | 区画の内側に花粉がとどまる | 中央の株はほぼ埋まる |
畑の端や風の通り道に1列だけ植える形は最も条件が悪くなります。面積が同じなら、細長くせず四角く配置してください。
ブロック植えの作り方
最低2列、できれば3列以上の四角い区画にまとめます。株数が少なくても、間隔を詰めるのではなく列数を増やすほうが粒は埋まります。
- 風向きを見て並べる
- 季節風の向きが分かるなら、列を風向きと平行に置きます。花粉が列の中を流れ、区画の外へ抜けにくくなります。
- 数株しかない場合
- 4株なら2列2株の正方形に置きます。同じ株数でも、1列に4株並べるより受粉率がはっきり上がります。
- プランターの場合
- 大型のプランターを2つ並べ、四角く配置します。1つに1株では、まず粒が入りません。最低でも4株を用意します。
| 項目 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 列数 | 2列以上、できれば3列 | 花粉が区画内に落ちる確率を上げる |
| 条間 | 60から80センチ | 作業と風通しを確保する |
| 株間 | 30センチ | 1本を太らせて雌穂を大きくする |
| 1区画の株数 | 10株以上 | 花粉の総量が足りるようにする |
株間だけを詰めても受粉はよくなりません。詰めると1本あたりの穂が小さくなるので、増やすのは列数のほうです。
雄穂と雌穂は出る時期がずれる
先に株の先端から雄穂が伸び、数日おくれて葉の付け根から雌穂と絹糸が出ます。雄穂が花粉を出す期間はおよそ1週間で、この間に絹糸が出そろっているかが勝負どころです。
同じ日にまいた株ならこのずれは自然にそろいます。逆に、まく時期が三週間以上離れた株どうしは花粉を融通できないと考えてください。
- 雄穂が出たら毎日見る
- 雄穂の枝を指ではじいて黄色い粉が落ちれば開花中です。この状態が続く数日が受粉のすべてです。
- 絹糸の出はじめ
- 雌穂の先から淡い色の糸が数センチ出た時点で受粉可能です。伸びきる前でも受精します。
- 雨と高温に注意
- 開花中の長雨は花粉を流し、35℃を超える日中は花粉の働きが落ちます。天気の悪い年ほど人工受粉が効きます。
雄穂が出てから絹糸が出るまでの数日は、水を切らさないでください。乾くと絹糸の伸びが遅れ、花粉に間に合いません。
人工受粉で歯抜けを埋める
株数が少ない、区画が細長い、開花中に雨や強風が続いた。このどれかに当てはまるなら人工受粉をします。手間は1株あたり数秒で、歯抜けの穂を1本減らせるなら十分に見合います。
- 時間帯
- よく晴れた日の午前中、9時ごろまでに行います。気温が上がると花粉の勢いが落ち、夕方には散り終わっています。
- やり方
- 雄穂を切り取るか、たわむほど曲げて、絹糸の束に直接こすりつけます。1本の雄穂で数株分の絹糸をまかなえます。
- 受粉させる回数
- 絹糸が伸びる期間は数日あるので、2日から3日あけて2回行うと埋まりが安定します。1回目で先端まで届かなかった穂を拾えます。
切り取った雄穂で受粉するなら、その株の分も別の雄穂で済ませます。全部切ってしまうと花粉が畑から消えます。
品種の型と交雑(キセニア)
受粉した花粉の性質が、その年の粒にそのまま現れます。翌年の種の話ではなく、いま実っている穂の粒の色と味が変わってしまうのが厄介なところです。この現象をキセニアと呼びます。
特に困るのは白い粒の品種です。黄色い品種の花粉がかかると、白い穂に黄色い粒がはっきり混じります。逆に黄色い品種へ白い花粉がかかっても、見た目ではほとんど分かりません。
| 型 | 粒の色 | 混ざったときの見え方 |
|---|---|---|
| イエロー | 黄一色 | 白粒が少し混じる程度 |
| バイカラー | 黄と白が混在 | 比率が乱れる |
| ホワイト | 白一色 | 黄色い粒がはっきり混じる |
| もち種や爆裂種 | 白や褐色 | 粒が硬くなり甘みが落ちる |
交ぜないための設計
同じ畑で複数の型を作るなら、距離か時間のどちらかで分けます。家庭菜園の広さで距離を取るのは無理なので、実際には時間で分けることになります。
- 距離で分ける
- 型の違う畑から300メートル以上離すのが本来の目安です。市民農園のように隣区画が近い場所では成立しません。
- 時間で分ける
- 開花期が2週間以上ずれるように播種日をずらします。生育日数の違う品種を選べば、同じ日にまいてもずらせます。
- もち種は特に離す
- もち種や爆裂種の花粉がかかると粒が硬く甘くなくなります。同時期に近くで作らないと決めておくのが安全です。
隣の区画で何を作っているかは自分では決められません。心配なら、白い品種は避けて黄色系かバイカラーを選ぶのが現実的です。
粒が入らなかったときの切り分け
穫った穂を見れば、何が足りなかったのかは歯抜けの出方で分かります。先端だけなのか、片側が縦に抜けているのか、全体にまばらなのかで、原因も次の手も別のものになります。
どれも収穫した年に直せるものではありませんが、区画の形と株数は来年すぐ変えられます。穂は捨てずに、抜け方を見てから片付けます。
| 症状 | 考えられる原因 | 次の作の手当て |
|---|---|---|
| 先端だけ粒が入らない | 雌穂が遅れて花粉が切れた | 絹糸の出はじめから3日続けて人工受粉する |
| 片側が縦に歯抜けになる | 列植えで花粉が風に抜けた | 2列以上のブロックにまとめて植える |
| 全体にまばらに抜ける | 株数が少なく花粉が薄い | 1区画16株以上を目安にまとめる |
| 白い粒が混じる | もち種などと交雑した | 300メートル離すか、まく時期をずらす |
歯抜けの穂も味は変わりません。粒を外して冷凍しておけば、見た目が理由で捨てることはありません。
とうもろこし(スイートコーン)の人工授粉に使うもの
かぼちゃやすいかのように、朝の数時間しか受粉できない作物があります。虫が来ない年でも実を付けるための道具です。
- 授粉用の毛ばたき・綿棒探す言葉「人工授粉 毛ばたき 園芸」
- 規格の目安
- 柔らかい毛のはたきか、普通の綿棒。
雄花の花粉を雌花の柱頭へ付けます。強くこすらず、撫でる程度で十分です。
- 園芸ラベル探す言葉「園芸 ラベル 差し込み」
- 規格の目安
- 差し込み式、長さ 10cm 前後。
受粉した日を書いて実の近くに挿しておくと、収穫の適期を日数で判断できます。かぼちゃやすいかはここを外すと大きく味が変わります。
- 不織布(べたがけ用)探す言葉「不織布 べたがけ 農業用」
- 規格の目安
- 目付 20g/㎡ 前後。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。
雨の日の朝は花粉が流れます。前の晩にかけておくと、翌朝の受粉に間に合います。
- 虫がよく来る畑なら、人工授粉は要りません。まず朝に花を見に行って確かめます。
- 雄花を摘んで雌花に直接付ければ、道具は何も要りません。
とうもろこし(スイートコーン)の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はとうもろこし(スイートコーン)の育て方にまとめています。
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