一年の大半は地面の下で過ごす
行者にんにくが地上に姿を見せるのは、三月から六月上旬までのおよそ三か月だけです。残りの九か月は地下の鱗茎で休んでいます。この短い期間に翌年の分の養分をためます。
つまり世話の勘どころは、春の三か月に光と水を十分に与えることと、残りの期間に土を乾かさず掘り返さないことの二つに絞られます。
| 時期 | 株の状態 | 主な世話 |
|---|---|---|
| 3月〜4月 | 芽が出て葉が広がる | 覆いをかき分ける、施肥、水やり |
| 5月 | 葉が完成し花茎が伸びる | 収穫、花茎切り、日陰へ移す |
| 6月上旬 | 葉が黄色く枯れていく | 最後の施肥、覆いを足す |
| 6月〜2月 | 地下で休眠 | 乾かさない、掘り返さない |
月別のやることカレンダー
関東平野部の半日陰を目安にした一覧です。北海道や東北など寒冷地では全体に二週間から一か月遅れ、雪解けの時期が芽出しの合図になります。
同じ庭でも木の下と北側では一週間ずれます。芽が出た日と収穫した日を毎年記録しておくと、翌年からは自分の庭の数字で計画が立てられます。
| 月 | 主な作業 | ねらい |
|---|---|---|
| 2月 | 覆いを軽くかき分ける | 芽が上がりやすくする |
| 3月 | 施肥、乾いたら水やり | 芽出しの力を補う |
| 4月 | 葉を広げさせる、株間を見る | 翌年の養分をためさせる |
| 5月 | 収穫、花茎切り、日陰へ移す | 採りすぎずに株を守る |
| 6月 | 最後の施肥、覆いを足す | 休眠前に養分を渡す |
| 7月〜9月 | 水やりと日陰の確保 | 鱗茎を乾かさない |
| 10月 | 植え付け、株分け、覆い足し | 秋の作業をまとめて行う |
| 11月〜1月 | 落ち葉をかけて放置 | 凍結と乾きを防ぐ |
三月から四月は光と覆いの調節
二月下旬から三月にかけて、覆いの下で白い芽が動き始めます。厚い落ち葉のままだと芽が上がりにくいので、芽の出る位置の覆いを軽くかき分けて薄くしておきます。
葉が開いたら、この時期だけはしっかり日に当てます。落葉樹の下ならまだ枝は裸で、ちょうどよい明るさになります。鉢植えは日の差す場所へ出しておきます。
- 覆いを薄くする
- 二月下旬、株の真上の落ち葉を軽くかき分けます。全部どけると乾くので、周りには残したままにします。
- 芽が出た日を書く
- 最初の芽が土から出た日を記録します。毎年の比較ができ、その年の作業の早い遅いが判断できます。
- 三月に施肥する
- 芽が動いたら株の外側へ完熟堆肥をひと握りか油かすを少量まきます。株元には直接触れさせません。
五月は収穫と日陰の準備が重なる
葉が開き切る五月が収穫の時期です。ただし葉が二枚から三枚のうちに一枚だけを残して採り、株を裸にしないことが鉄則です。採る量より、来年も採れることを優先します。
同じころ気温が上がり始めるので、日陰の支度も並行して進めます。鉢は北側へ移し、地植えは寒冷紗を張るか落葉樹の茂りを確かめておきます。
- 葉の枚数を数える
- 三枚出ている株から一枚だけ採ります。二枚の株は採らずに見送り、一枚の株には手を付けません。
- 花茎を根元で切る
- 種を採る株以外は、伸びた花茎を根元で切ります。種を作らせない分の養分が鱗茎に残ります。
- 日陰へ移す支度
- 気温が二十五度を超える日が出てきたら、鉢を北側へ移し、地植えには寒冷紗を用意します。
六月から冬は掘り返さずに待つ
六月に入ると葉が黄色くなり、やがて地上部が消えます。これは弱ったのではなく毎年の休眠です。枯れる前に最後の施肥を済ませ、覆いを足してから土に任せます。
夏から冬にかけての世話は、乾かさないことと踏まないことだけです。名札を立てておかないと場所を忘れ、秋に別の植物を植えて掘り返してしまう失敗がよく起こります。
- 六月に最後の施肥
- 葉が黄色くなり始めたら、完熟堆肥か油かすを少量施します。これが翌年の芽の太さを決めます。
- 覆いを足して名札を立てる
- 腐葉土を三センチ足し、名札を立てます。地上部が消えても場所が分かり、掘り返しを防げます。
- 十月に植え付けと株分け
- 涼しくなる十月は、苗の植え付けと株分けの適期です。込み合った株を掘り上げて分け、株間を広げ直します。
季節の変化を読み違えたときは
枯れたのか休眠なのか、遅いのか出ないのか。行者にんにくは動きが遅く、判断を誤って掘り返したり水を止めたりする失敗が起きやすい植物です。
- 六月に急に枯れた
- 毎年の休眠で、株が弱ったわけではありません。掘り返さず、覆いを足して土の湿りだけを保って秋を待ちます。
- 四月になっても芽が出ない
- 寒冷地では五月の芽出しもあります。土をそっとよけて白い芽を確かめ、あれば覆い直して待ちます。
- 夏に葉が残っている
- 涼しい年や日陰の深い場所では枯れが遅れます。無理に切らず、自然に黄色くなって倒れるまで置いておきます。
- 秋に芽が出てしまった
- 秋の高温と長雨で季節を勘違いした芽です。切らずに残し、冬は覆いを厚くして寒風と霜から守ります。
行者にんにくの栽培に一年を通して使うもの
作業のたびに買い足すより、季節の前にまとめて用意しておくほうが結局は安く済みます。一年を通して使うのは、次の 4 つです。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 牛ふん」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥かバーク堆肥。40L 前後の袋で売られています。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
土の粒をつなぐのは微生物の働きで、その餌になるのが堆肥です。未熟なものは根を傷めるので「完熟」と書かれたものを選びます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状のものが扱いやすく、風のある日でも舞いません。1〜20kg 袋。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。1kg 袋で数畝ぶん。
日本の土は雨で酸性に傾きます。**必要な量は土質で 3 倍ほど違い**、黒ボク土は砂質土よりずっと多く要ります。入れすぎると今度はアルカリ性に寄りすぎるので、pH を測ってから決めます。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8」
- 規格の目安
- 窒素・リン酸・カリが同じ比率の粒状。まず 1 袋あればほとんどの野菜に使えます。
- 数量の目安
- 元肥は 1 ㎡あたり 100g、畝 1 本で 150〜200g。追肥は 1 回 1 ㎡あたり 30〜50g。
種類を増やすより、切らさないほうが効きます。作物ごとの正確な量は都道府県が施肥基準として公表しているので、量を詰めたくなったらそちらを見てください。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が楽です。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。50m 巻きなら 10 畝以上。
地温を上げ、雨のはね返りと雑草を抑えます。夏の高温期だけは、地温が上がりすぎるので白黒マルチに替える手もあります。
- 土壌改良材のセット買いは要りません。堆肥と石灰と元肥の 3 つで足ります。
- 連作していない畑なら、土壌消毒剤は要りません。
行者にんにくの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方は行者にんにくの育て方にまとめています。
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