種からか苗からかを先に決める
行者にんにくは北海道や東北の山地に自生する多年草で、葉をちぎると強いにんにくの香りが立ちます。生育がとてもゆっくりで、種をまいてから収穫できる大きさになるまで五年から七年かかります。
家庭菜園で現実的なのは、二年生から三年生の苗を買って植えることです。この大きさなら植え付けの二年後か三年後には葉を採り始められます。苗は値が張りますが、待つ年数を短くする分だと考えると納得できます。
| 種類 | 収穫までの年数 | 向き不向き |
|---|---|---|
| 種をまく | 五年から七年 | 気長に数を増やしたい人向き |
| 一年生の苗 | 四年前後 | 安いが待つ年数が長い |
| 二〜三年生の苗 | 二年から三年 | いちばん現実的で失敗も少ない |
| 株分けした株 | 一年から二年 | すでに親株がある人向き |
植え付けは秋か早春、場所は半日陰
植え付けの適期は、地上部が枯れて休んでいる九月下旬から十月、または芽が動き出す前の三月です。夏の暑い時期に植えると、根が張る前に葉が焼けて株が消耗します。
場所は一日中日の当たる畑ではなく、落葉樹の下や建物の北側のような半日陰を選びます。春の芽出しのころは日が差し、夏には葉陰になる場所が理想です。土は水はけがよく、それでいて乾ききらない場所が向きます。
- 落葉樹の下を探す
- 庭に落葉樹があれば、その株元から少し離れた場所が第一候補です。春は明るく、夏は日陰になり、落ち葉が土を覆ってくれます。
- 北側の明るさを見る
- 建物の北側なら、午前だけ日が差す東寄りの位置を選びます。一日中暗くて風の抜けない場所は、葉が薄く伸びて病気が出ます。
- 夏の日差しを確かめる
- 候補地に真夏の昼、直射日光が当たらないかを確かめます。三時間以上当たるなら、寒冷紗か枝の陰で日を和らげる支度が要ります。
- 水はけを見る
- 雨の翌日に水たまりが残る場所は避けます。残るようなら、高さ十五センチほどの畝を立ててから植えます。
植え穴は落ち葉の積もった林を真似る
自生地の土は、落ち葉が長い年月をかけて積もった、ふかふかで水もちのよい土です。畑の土をそのまま使うと固く乾きやすいので、腐葉土をたっぷり混ぜて自生地に近い状態にしておきます。
植え穴は深さ二十センチほど掘り、掘り上げた土に腐葉土を三割ほど混ぜて戻します。元肥(前もって入れる肥料)は完熟堆肥をひと握りで十分で、化成肥料を穴に入れると根が傷みます。
- 腐葉土を三割混ぜる
- 掘り上げた土に腐葉土を三割ほど混ぜ、手で握ると軽くまとまり、指で押すと崩れるくらいの状態にします。
- 芽の位置を浅くする
- 白い茎の付け根にある芽が、土から二センチほどの深さに来るように置きます。深植えすると春の芽出しが遅れます。
- 株間は十五センチ
- 株間は十五センチから二十センチとります。数年かけて子株が増えて広がるので、詰めて植えると後で込み合います。
- 落ち葉で覆う
- 植えたあと、株の上に落ち葉か腐葉土を三センチほど敷きます。土の乾きと地温の上がりすぎを同時に防げます。
早く育てようと肥料を穴に入れると、根が傷んで枯れることがあります。最初は完熟堆肥と腐葉土だけで足ります。
鉢植えは深さのある鉢を選ぶ
行者にんにくは鉢でも育てられます。根が下へ伸びるので、直径二十四センチ以上で深さのある鉢を選びます。浅い鉢は夏に土が温まりやすく、乾きも早いので株が消耗します。
用土は赤玉土の小粒に腐葉土を四割ほど混ぜたものが扱いやすく、鉢底に軽石を敷いて水はけを確保します。鉢は夏のあいだ木陰や建物の北側へ移せるので、庭よりも日差しを調節しやすい利点があります。
- 深鉢に一株か二株
- 直径二十四センチの鉢なら一株から二株にします。詰めて植えると数年で根が回り、出てくる葉が細くなります。
- 鉢は北側に置く
- 春は明るい場所、五月を過ぎたら建物の北側や木陰へ移します。鉢は動かせるので、季節ごとに置き場所を変えられます。
- 表面を覆う
- 鉢土の表面をヤシ殻や腐葉土で覆い、乾きを和らげます。夏の乾燥は鉢植えでいちばん多い失敗の原因です。
初年は採らずに株を養う
植えた年は収穫しません。葉を採ると株にたまる養分が減り、翌年の芽が小さくなります。行者にんにくは一年に一度しか葉を出さないので、その葉を採ると回復に何年もかかります。
植え付けの翌年も、葉が二枚に満たない株は採らずに見送ります。二年から三年ほど我慢して株を太らせると、以後は毎年少しずつ採り続けられる株になります。急がないことがいちばんの近道です。
- 一年目は見るだけ
- 植えた年は葉を採らず、枯れるまでそのままにします。葉が作った養分が地下の鱗茎にたまり、翌年の芽になります。
- 二年目は葉を数える
- 春に出た葉が二枚に満たない株は、その年も採らずに見送ります。三枚出ている株なら一枚だけ採れます。
- 花茎は早めに切る
- 株を太らせたい間は、伸びてきた花茎を根元で切ります。種を作らせない分の養分が株に残ります。
植え付けでつまずいたときの切り分け
芽が出ない、葉が一枚しか出ない、夏前に枯れた。行者にんにくは動きが遅いので、枯れたのか休んでいるのかの見分けが難しく、あわてて掘り返して根を傷めることがあります。
- 春に芽が出ない
- 浅すぎて乾いたか、深すぎて芽が上がれていません。土をそっとよけて白い芽を確かめ、無事なら覆い直して待ちます。
- 初夏に地上部が枯れた
- 行者にんにくは初夏に葉を枯らして休眠に入ります。正常な姿なので掘り返さず、落ち葉をかけて土を乾かさずに待ちます。
- 葉が黄色く焼ける
- 夏の直射日光と乾燥です。寒冷紗で日を和らげ、株元を腐葉土で覆います。焼けた葉は戻らないので翌年に期待します。
- 株がぐらつく
- 根が張る前に霜で持ち上げられています。株元に腐葉土を足して押さえ、土と根を密着させ直します。
行者にんにくの植え付けに使うもの
植え付けの日にそろっていないと後から張り直しになるのが、マルチと防虫ネットです。苗を買う前に用意しておきます。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 穴あき 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が早いです。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。両端を埋めるぶんが要るので、畝の長さ + 1m で見ます。
地温を上げ、雨のはね返りを止め、雑草を抑えます。土からはねる泥は病気の入り口なので、病気が出やすい畑ほど効きます。
- マルチ押さえ(U 字ピン)探す言葉「マルチ押さえ ピン」
- 規格の目安
- 長さ 15cm 前後の鉄製。プラスチック製より風に強いです。
- 数量の目安
- 畝 1 本で 20〜30 本。50cm 間隔が目安。
マルチは土をかぶせて留めるのが基本ですが、風の通る場所ではピンを足さないと一晩でめくれます。
- 防虫ネット探す言葉「防虫ネット 目合い1mm」
- 規格の目安
- 目合い 1mm、幅 180cm。トンネル支柱(長さ 210cm・直径 8mm)と合わせて使います。
- 数量の目安
- ネットは畝 1 本(3m)で 4m。支柱は 50cm 間隔で 7 本。
1mm はモンシロチョウやコナガなど、卵を産みに来る蛾や蝶を止めるための目です。アブラムシやアザミウマはこれでは通ります。狙う虫で目合いを決めてください。
- 移植ごて探す言葉「移植ごて ステンレス」
- 規格の目安
- 幅 6〜8cm のステンレス製。目盛りの付いたものは植え穴の深さを見るのに使えます。
根鉢と同じ大きさの穴を掘るための道具です。柄と刃が一体になっているものは曲がりません。
- 支柱を立てない作物なら、トンネル支柱は要りません。
- 穴なしマルチをカッターで開ければ、株間の違う作物にも 1 本で使い回せます。
行者にんにくの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方は行者にんにくの育て方にまとめています。
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