まず何のために育てるかを決める
エンバクは同じ作物でも、目的によって種の選び方、まく量、育てる期間がまったく違います。実を採って食べるなら春まきか秋まきで八か月近く育てますが、緑肥なら二か月で刈り込み、猫草なら十日で食べごろになります。最初に用途を決めてから品種と作型を選びます。
| 用途 | 育てる期間 | 向く品種の系統 |
|---|---|---|
| 穀物として実を採る | 秋まきで約八か月、春まきで約四か月 | 食用向けの裸性エンバク(殻が外れやすい系統) |
| 緑肥・土づくり | 二〜三か月で刈り込む | 緑肥用の野生種系(背が高く根が深い) |
| 猫草・スプラウト | 一〜二週間 | 猫草用として売られている種 |
| 畝間の敷きわら・雑草抑え | 二か月ほどで刈り倒す | 緑肥用のどれでもよい |
緑肥用の種は食用に向かない殻の固い系統が多く、猫草用の種は少量で高価です。用途に合った袋を選びます。
穀物として育てる系統
食べるためのエンバクは、脱穀したときに殻が外れやすい裸性の系統を選ぶと家庭でも扱えます。普通のエンバクは実が殻に包まれたままで、精白にはもみすりの手間がかかります。種は穀物用として売られているものか、緑肥用でも裸性と表示のあるものを探します。
- 裸性かどうかを確かめる
- 袋に裸性や皮なしと書かれているものを選びます。表示がなければ殻つきで、脱穀後にもみすりが必要になります。
- 秋まきと春まきの向き
- 関東平野部では秋まきの方が収量が安定します。寒冷地では冬に枯れるので、春まきで四月にまいて八月に採ります。
- 量は少なめから始める
- 一平方メートルで実は百グラムから二百グラムほどです。初年は一畝で試し、脱穀と精白の手間を確かめてから広げます。
緑肥として育てる系統
緑肥用のエンバクは背が高く根が深く伸び、土をやわらかくして有機物を増やします。線虫を減らす効果のある系統もあり、次にサツマイモやニンジンを作る畑で使われます。刈り倒して畝の間に敷けば雑草を抑え、鋤き込めば土に戻ります。実を採る必要がないので、穂が出る前に刈ります。
| 目的 | まく時期 | 刈る目安 |
|---|---|---|
| 土をやわらかくする | 9月〜10月か3月 | 草丈五十センチ〜穂が出る直前 |
| 線虫を減らす | 3月〜4月 | 五月下旬〜六月に鋤き込む |
| 畝間の雑草抑え | 作物の植え付けと同時 | 草丈三十センチで刈って敷く |
| 冬の土の露出を防ぐ | 10月 | 翌春三月に鋤き込む |
猫草として室内で育てる
猫草はエンバクの若い葉で、種をまいて七日から十日で猫が食べられる長さになります。室内の窓際で育てられ、土でも水耕でもかまいません。一度に食べきれる分だけをまき、一週間おきに次の鉢をまいていくと途切れません。
- 一晩水に浸ける
- 種を一晩水に浸けてからまくと発芽がそろい、二日ほど早く食べごろになります。浮いた種は取り除きます。
- 重ならないよう厚めにまく
- 浅い鉢に培養土を入れ、種が重ならないぎりぎりの密度でまいて薄く土をかぶせます。密にまくと葉が細くなり、猫が食べやすい柔らかさになります。
- 草丈十センチで与える
- 葉が十センチほどになったら食べごろです。二十センチを超えると固くなるので、伸びすぎた葉は先を切ります。
猫草用に育てる場合は肥料も薬剤も使いません。培養土は無肥料か、肥料が少ない種まき用のものを選びます。
プランターで穀物として育てるとき
ベランダで実を採るなら深さ二十五センチ以上のプランターで、条間十五センチの二条まきにします。一つのプランターで実は五十グラム前後と多くはありませんが、穂の実る様子と脱穀を体験するには十分です。風で倒れやすいので、壁際に置いて支柱とひもで囲います。
- 野菜用培養土を八分目に
- 鉢底石を敷き、培養土を縁から三センチ下まで入れます。元肥(栽培の初めに入れる肥料)は培養土に含まれる分で足り、追加しません。
- 一センチ間隔ですじまき
- 深さ二センチの溝を二本作り、一センチ間隔でまいて土をかぶせます。本葉三枚で三センチ間隔に間引き、それ以上は広げません。
- 穂が出たら風対策
- 穂が出ると重心が高くなります。四隅に支柱を立て、株の高さの半分あたりにひもを一周させて支えます。
用途を間違えたときの切り替え
穀物用にまいたが世話が追いつかない、緑肥用の種を食用に育ててしまったなどの場合も、途中で用途を切り替えられます。穂が出る前なら緑肥として鋤き込め、殻つきの実が採れたなら鳥の餌や翌年の緑肥の種に回せます。捨てずに使い道を変えることを先に考えます。
| 場面 | 問題 | 戻し方 |
|---|---|---|
| 穀物用に育てたが手が回らない | 収穫と脱穀の手間 | 穂が出る前に刈って畝間に敷くか鋤き込む |
| 緑肥用の種で実を採った | 殻が固く精白が難しい | 鳥の餌か翌年の緑肥の種にする |
| 猫草が伸びすぎて固くなった | 猫が食べない | 先を切って新芽を出させるか、まき直す |
| 緑肥が穂を出してしまった | 種がこぼれて雑草化する | 穂が黄色くなる前に刈り、穂だけ持ち出す |
エンバクの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はエンバクの育て方にまとめています。
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