畑の準備
エンバク(えん麦)は土を選ばず、酸性にもやや強い作物です。ただし水はけの悪い場所では根が傷むので、畝を立てて水が抜けるようにします。肥料は少なくてよく、前作の残りがあれば元肥(栽培の初めに入れる肥料)は堆肥だけで足ります。窒素が多いと背が伸びて倒れます。
- 二週間前に耕す
- 苦土石灰を一平方メートルあたり五十グラムほどまいて耕します。酸性に強いので、石灰は控えめでかまいません。
- 堆肥を混ぜて畝を立てる
- 一週間前に完熟堆肥をバケツ一杯混ぜ、幅六十センチ、高さ十センチの畝を立てます。緑肥なら畝を立てずに平らにまいてもよいです。
- 表面を平らにならす
- レーキで土の塊を砕き、まき溝を切る面を平らにします。緑肥でばらまくときも、種が転がらないよう平らにしておきます。
穀物用のすじまき
実を採る場合は条間二十センチから二十五センチのすじまきにします。種は長さ一センチほどあり、アワなどより大きいので扱いやすく、覆土は二センチから三センチにします。まく量は一メートルの条で十グラム前後、一センチから二センチ間隔が目安です。
- 深さ三センチの溝を切る
- 鍬の角か板の縁で溝を切ります。浅いと鳥に食べられ、五センチより深いと芽が出にくくなります。
- 一〜二センチ間隔でまく
- 種を指でつまんで溝に落とし、重ならないようにまきます。まきすぎたら本葉三枚で間引いて三センチ間隔にします。
- 覆土して軽く押さえる
- 土をかぶせて足か板で軽く踏み、種と土を密着させます。秋まきは乾燥しにくいので水やりは不要、春まきは乾いていればたっぷりやります。
秋まきは条を東西に切ると冬の日が株元まで当たり、霜の害が減ります。春まきは向きを気にしなくてかまいません。
緑肥用のばらまき
緑肥として育てるなら、耕した畑の表面に種をばらまいてレーキで軽く混ぜ、足で踏むだけです。一平方メートルあたり十グラムから十五グラムが目安で、厚くまくほど早く地面を覆って雑草を抑えます。鳥に食べられやすいので、まいた直後に土と混ぜることが大切です。
- 手のひらでまき散らす
- 種を手に取り、腕を振って広くまきます。一度に全部まかず、二回に分けて縦横にまくと均一になります。
- レーキで土と混ぜる
- まいた種をレーキでかき混ぜ、二センチほど土がかぶるようにします。表面に種が見えているところは鳥に食べられます。
- 足で踏み固める
- 全体を軽く踏んで種と土を密着させます。乾いた季節は踏んだ後にたっぷり水をやります。
発芽を見届けて冬前の株に育てる
まいてから芽がそろうまでの十日ほどが、エンバクで一番手をかけたい時期です。秋まきは雨が多く水やりはほとんど要りませんが、晴れが一週間続いて土の表面が白く乾いたら、条に沿ってたっぷり与えます。スズメやハトは芽が出る直前の種と出たての芽をついばむので、この間は不織布で覆っておきます。
秋まきで冬に入る前の目安は、本葉が三枚から五枚、草丈十センチ前後で、株元がしっかりしてくるころです。この大きさまで育っていれば霜で浮き上がりにくく、春によく分かれます。緑肥用は冬前に地面が葉で覆われていれば十分で、穀物用ほど一株ずつの大きさを気にしなくてかまいません。
- 芽が出るまで覆う
- まいた直後に不織布をべたがけし、四辺を土で押さえます。鳥はすき間から入るので浮いた所がないようにし、土が乾いたら覆いの上から水を与えます。
- そろいを見て覆いを外す
- まいて十日ほどで条を端から見て歩き、芽が線になって立っていれば不織布を外します。三十センチ以上途切れた所は、十一月上旬までならそこだけ種を足します。
- 混んだ所を間引く
- すじまきで芽が重なって立つ所は本葉三枚のころに指でつまんで抜きます。緑肥のばらまきは全体の間引きは要りませんが、種が固まって芽が束になった所だけ数本に減らします。
- 冬前の大きさを見る
- 十一月下旬に株を見て、本葉が三枚以上で株元がしっかりしていれば冬越しの準備はできています。本葉一枚二枚と小さいときは、不織布をかけて寒風を和らげます。
- 冬前は肥料を足さない
- 冬前に葉色が淡く見えても追肥(育ちの途中で足す肥料)はせず、春の葉色を見て決めます。冬前に肥料が効くと葉が軟らかく伸び、寒さで傷みやすくなります。
発芽から間引きまで
地温が十度以上あれば七日から十日で発芽します。秋まきは冬の間ほとんど伸びずに株元で葉を増やし、春に一気に伸びます。春まきは一か月ほどで草丈二十センチになります。穀物用は本葉三枚のころに三センチ間隔に間引きますが、緑肥用は間引きません。
| 時期 | 株の姿 | 作業 |
|---|---|---|
| 発芽〜本葉二枚 | 細い葉が一本ずつ立つ | 鳥よけの不織布は芽が出たら外す |
| 本葉三枚 | 株元から次の葉が出る | 穀物用は三センチ間隔に間引く |
| 草丈二十センチ | 株元から分かれ始める | 条の間の草取りと軽い土寄せ |
| 秋まきの冬 | 葉が寝て伸びが止まる | 霜で浮いた株は足で軽く踏む |
秋まきか春まきかを決める
関東平野部では十月から十一月上旬にまいて冬を越させる秋まきと、三月から四月にまく春まきのどちらもできます。秋まきは根が深く張って収量が多く、春まきは期間が短く手軽です。寒さの厳しい地域では冬に枯れることがあるので、春まきを選びます。緑肥なら どちらでも、次の作物の予定に合わせます。
| 作型 | 種まき | 収穫・刈り取りの目安 |
|---|---|---|
| 秋まき(穀物) | 10月上旬〜11月上旬 | 6月上旬〜中旬 |
| 春まき(穀物) | 3月上旬〜4月上旬 | 7月中旬〜8月上旬 |
| 秋まき(緑肥) | 9月下旬〜10月 | 翌年3月〜4月に鋤き込む |
| 春まき(緑肥) | 3月〜4月 | 5月下旬〜6月に鋤き込む |
| 寒冷地 | 4月中旬〜5月上旬の春まきのみ | 8月中旬〜9月 |
秋まきは遅れると冬までに根が張らず、霜で浮き上がって枯れます。十一月中旬を過ぎたら春まきに切り替えます。
芽が出ない・浮き上がるときの原因とよくある質問
エンバクの発芽は丈夫ですが、鳥に食べられる、乾燥で出ない、秋まきで霜に持ち上げられるといった失敗があります。まいて二週間たっても芽が見えなければ、土を少し掘って種があるか確かめ、なければ鳥と判断してまき直します。
- えん麦の発芽日数は?
- 地温が10度以上あれば、まいてから7〜10日で芽が出ます。2週間たっても芽が見えなければ土を少し掘って種を確かめ、無ければ鳥に食べられたので、覆土を3センチにしてまき直します。
- えん麦の覆土は何センチ?
- 覆土は2〜3センチです。深さ3センチの溝を切ってまき、土をかぶせて軽く踏みます。浅いと鳥に食べられ、5センチより深いと芽が出にくくなります。
- えん麦の水やりは毎日要る?
- 毎日は要りません。秋まきは雨でほぼ足ります。晴れが1週間続いて土の表面が白く乾いたら、条に沿ってたっぷり与えます。春まきは、まいたときに土が乾いていればたっぷりやります。
| 症状 | 原因 | 立て直し |
|---|---|---|
| 種が消えて芽が出ない | 鳥に食べられた | 覆土を三センチにし、不織布をかけてまき直す |
| まばらにしか出ない | 乾燥・古い種 | 水をやってから一週間待ち、出なければまき直す |
| 冬に株が浮いて枯れる | 秋まきが遅く根が浅い | 浮いた株を踏んで押し戻す。翌年は十月中にまく |
| ひょろ長く倒れる | 密まき・肥料過多 | 早めに間引き、追肥をしない |
種まきの手順
エンバクは、本文の時期と種袋の表示を確認してまきます。まいたら、種の大きさに合った量の土をかぶせます。
覆土して軽く押さえる(転圧という)と、種と土が密着し、水を吸いやすくなります。強く固めすぎないようにします。
エンバクの種まきでよくある質問
エンバクの種はいつまく?
秋まき(穀物): 10月上旬〜11月上旬。春まき(穀物): 3月上旬〜4月上旬。秋まき(緑肥): 9月下旬〜10月。春まき(緑肥): 3月〜4月。
エンバクの種はどうやってまく?
実を採る場合は条間二十センチから二十五センチのすじまきにします。
エンバクの間引きはいつする?
まきすぎたら本葉三枚で間引いて三センチ間隔にします。
エンバクの種まきに使うもの
種まきで失敗する原因のほとんどは、覆土の厚さと、発芽までの乾きです。そこを外さないための道具だけを挙げます。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 種まき用土探す言葉「種まき培土 細粒」
- 規格の目安
- 粒径 2〜3mm の細かいもの。肥料分の少ない「種まき用」と書かれたもの。
- 数量の目安
- セルトレイ 128 穴 1 枚で約 2L、ポット 9cm なら 1 個 0.3L。
粒の粗い培養土だと、小さな種が粒の隙間に落ちて深く埋まり、出てきません。
- 霧吹き(ハンドスプレー)探す言葉「園芸 霧吹き 大容量」
- 規格の目安
- 500ml〜1L。霧の細かいものほど種が流れません。
ジョウロで直接かけると、まいた種が寄ってしまいます。発芽までは霧で、根が張ってからジョウロに切り替えます。
- 不織布(べたがけ用)探す言葉「不織布 べたがけ 農業用」
- 規格の目安
- 幅 135cm 前後、目付 20g/㎡ 前後。透水性があり、かけたまま水をやれるもの。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。
発芽までの乾燥と、鳥・強い雨から守れます。防虫ネットより目が細かいぶん保温もでき、寒い時期の種まきで差が出ます。
- 園芸ラベル探す言葉「園芸 ラベル 差し込み」
- 規格の目安
- 差し込み式の白いもの、長さ 10cm 前後。油性ペンで書きます。
まいた日と品種を書いて挿しておくと、発芽が遅いときに「まだ待つ」のか「まき直す」のかを判断できます。
- 直まきするなら、セルトレイもポットも要りません。
- 高価な殺菌済みの培土でなくても、市販の野菜用培養土をふるいにかければ細かい土が作れます。
エンバクの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はエンバクの育て方にまとめています。
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