受粉樹の相性で二本を決める
なしはほぼすべての品種が自分の花粉では実がつかない自家不和合性で、別の品種の花粉が必要です。さらに品種の組み合わせによっては花粉をつけても実がつかない相性の悪い組み合わせがあります。幸水と豊水は互いに相手になりますが、幸水と新水は実がつきません。関東の家庭では幸水と豊水の二本が最も無難です。
花の時期が重なることも条件です。関東平野部では四月上旬から中旬に咲き、下の組み合わせなら重なります。西洋なしを混ぜるときは、日本なしの花粉でも実がつきますが、開花が少しずれるので花粉を採って冷蔵しておきます。
| 品種 | 収穫期 | 受粉の相手になる品種 |
|---|---|---|
| 幸水 | 八月中旬〜下旬 | 豊水、二十世紀、あきづき |
| 豊水 | 九月上旬〜中旬 | 幸水、二十世紀、あきづき |
| 二十世紀 | 九月上旬 | 幸水、豊水 |
| あきづき | 九月中旬〜下旬 | 幸水、豊水 |
| 新高 | 十月上旬 | 幸水、豊水(新高の花粉は使えない) |
新高や新興は花粉がほとんど出ない品種で、受粉樹にはなりません。この品種を植えるなら、花粉を出す品種をもう一本用意します。
棚仕立てか立ち木仕立てかを選ぶ
なしの産地では枝を水平の棚に誘引する棚仕立てが一般的ですが、家庭では立ち木仕立てでも育ちます。棚は台風で実が落ちにくく作業が楽な反面、二メートル四方の棚を組む場所と手間がかかります。庭の広さと手入れにかけられる時間で判断します。鉢植えなら立ち木の一本仕立てにして、枝を支柱に誘引します。
| 仕立て | 向いている場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 棚仕立て | 庭が広く風が強い地域 | 棚を組む費用と手間。枝を毎年誘引 |
| 立ち木仕立て | 庭が狭い、手軽に始めたい | 台風で実が落ちやすい。高さを抑える |
| 鉢植えの一本仕立て | ベランダ | 十号鉢以上。実の数は少なめ |
苗は接ぎ木の一年生を選ぶ
園芸店のなしの苗は、品種の枝を別の根(台木)に接いだ接ぎ木苗です。高さ八十センチから一メートルの一年生苗で、幹がまっすぐで接ぎ目がしっかり癒着し、太い根が三本以上あるものを選びます。芽が固く閉じているうちに植えると根の傷みが少なくて済みます。
- 接ぎ目を確かめる
- 幹の下のほうの接ぎ目がぐらつかず、はがれかけていないものを選びます。接ぎ目の状態が悪い苗は植えても育ちません。
- 根を見る
- ポットから抜けるなら、白い細根が多い苗を選びます。太い根だけで細根がない苗は活着に時間がかかります。
- 品種の札を確かめる
- 受粉の相性があるので、札に書かれた品種名を必ず確かめます。「なし」とだけ書かれた苗は避けます。
苗は買ったらすぐ植えるのが基本です。すぐ植えられないときは、根を乾かさないよう仮植えするか、湿らせた新聞紙で根を包んで日陰に置きます。
植え付けは十二月か三月上旬
落葉して休眠している十二月から三月上旬が植え付けの適期です。関東平野部では一月と二月の寒い時期を避け、十二月か三月上旬に植えます。なしは水を好む果樹ですが、水がたまる場所では根腐れを起こすので、水はけがよく保水もある土を作ります。
植え付けの深さと支柱は、最初の一年の育ちを決めます。深植えと風で揺れることの二つを避ければ、なしの苗はよく根付きます。植えた年は実を付けさせず、幹と主枝を育てることに専念させます。
- 植え穴を掘り土を作る
- 直径と深さがそれぞれ五十センチの穴を掘り、掘り上げた土に腐葉土をバケツ一杯と苦土石灰をひとつかみ混ぜて戻します。粘土質の庭なら川砂も混ぜて水はけを作ります。
- 接ぎ目を地上に出して据える
- 接ぎ目が地面より十センチほど上に出る高さに据えます。深植えにすると品種側から根が出て、木が大きくなりすぎます。
- 幹を切り詰める
- 植えたら幹を地面から六十センチほどの高さで切ります。切ったところから翌春に主枝になる枝が出ます。
- たっぷり水をやり支柱を立てる
- バケツ二杯の水を株元に注ぎ、土を落ち着かせます。風で揺れると根が切れるので、支柱に八の字でゆるく結びます。
二本の間隔は立ち木なら三メートル、棚なら棚の広さに合わせます。南側に建物や高い木がない場所を選びます。
植えた年にうまくいかないときの切り分け
植えた年の不調は、植え方か水のどちらかで説明がつくことがほとんどです。症状から原因を切り分けます。なしは葉が大きく水をよく使うので、植えた年の夏の乾きには特に弱く、乾いたら朝夕に水をやります。
| 症状 | 考えられる原因 | 手当て |
|---|---|---|
| 春になっても芽が動かない | 根の乾きか寒さで根が傷んだ | 幹を削って緑なら待つ。茶色なら植え直し |
| 芽は出たが十センチで止まる | 根がまだ張っていない | 肥料を控え、乾いたら水をやる |
| 夏に葉が黄色くなり落ちる | 水切れ | 朝夕に株元へたっぷり水。株元をわらで覆う |
| 葉に黒い斑点が出る | 黒星病 | 病葉を取り、果樹用の殺菌剤をまく |
| 接ぎ目の下から芽が出る | 台木の芽 | 見つけ次第すべて取る |
なしの植え付けに使うもの
木は一度植えたら動かせません。植え穴と支柱をきちんと作るかどうかで、その後の何年かが決まります。
数量は苗木 1 本を単位にしています。
- 完熟堆肥・腐葉土探す言葉「完熟堆肥 バーク 40L」
- 規格の目安
- バーク堆肥か腐葉土。40L 前後の袋。
- 数量の目安
- 植え穴 1 つ(直径 60cm × 深さ 50cm)に 20〜30L を掘り上げた土と混ぜます。
穴を大きく掘って土を入れ替えるのが植え付けの本体です。ここを手抜きすると、根が広がらないまま何年も伸び悩みます。
- 支柱(添え木)探す言葉「園芸支柱 太い 180cm」
- 規格の目安
- 直径 25〜30mm × 長さ 180cm。1 本の添え木か、2 本の二脚(鳥居型)。
根が張るまでの 1〜2 年、風で株元が動くと細い根が切れ続けます。細い支柱では木の重さを支えられません。
- 樹木用の結束テープ探す言葉「樹木 誘引 テープ 幅広」
- 規格の目安
- 幅 20mm 前後の伸びる素材か、麻ひもと当て布。
幹は太ります。細いひもで縛ると食い込み、そこで水の通り道を締めてしまいます。幅の広いもので 8 の字に留めます。
- 緩効性肥料(元肥)探す言葉「緩効性肥料 元肥 樹木」
- 規格の目安
- 粒状で長く効くタイプ。
- 数量の目安
- 植え穴 1 つに 50〜100g。根に直接触れないよう、土を一枚かぶせてから植えます。
植え付け直後は根が傷んでいます。濃い肥料が触れると、そこから傷みが広がります。
- 鉢で育てるなら支柱は短いもので足ります。180cm の添え木は地植え用です。
- 植え穴に石を入れる必要はありません。水はけが悪いなら、盛り土にして高く植えるほうが効きます。
なしの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はなしの育て方にまとめています。
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