人工授粉が要るかどうかを判断する
なしは関東平野部で四月上旬から中旬に咲きます。産地ではほぼすべて人工授粉をしており、家庭でも受粉樹があるだけでは実つきが安定しません。花の時期の天気と、受粉樹との距離から人工授粉の要否を判断します。迷ったら授粉しておくほうが確実です。
| 場面 | 実がつく見込み | 取る手 |
|---|---|---|
| 受粉樹が隣にあり晴れて虫が飛ぶ | まあまあ | できれば人工授粉 |
| 開花中に雨や十度以下の日が続く | 低い | 晴れ間に人工授粉する |
| 受粉樹が離れている、または鉢 | 低い | 花粉を採って人工授粉する |
| 受粉樹が新高など花粉の出ない品種 | ほぼない | 花粉を出す品種の花を手に入れる |
人工授粉のやり方
受粉樹の花を摘み、その花粉を実をつけたい木の花につけます。なしは一つの花芽から五輪から八輪の花が順に咲くので、三輪目から五輪目に当たる花に授粉すると実の形がよくなります。晴れた日の午前中、咲いて二日以内の花が対象です。
- 受粉樹の花を摘む
- 開いたばかりで黄色から赤紫の花粉が見える花を摘みます。花びらをむしると雄しべがむき出しになり、つけやすくなります。
- 花の中心にこすりつける
- 摘んだ花の雄しべを、実をつけたい木の花の中心(雌しべ)に軽くこすりつけます。一輪で二十輪ほどにつけられます。
- 花粉を集めて綿でつける
- 花が多い木は、摘んだ花の葯を紙の上で一日乾かして花粉を集め、耳かきの綿や細い筆で雌しべにつけると早く済みます。
- 二日おいて二回目
- 一回目のあとに開いた花のために、二日後にもう一度つけます。花びらが落ち始めた花にはつけても実になりません。
花粉は密閉して冷蔵庫で一週間、冷凍なら翌年まで持ちます。受粉樹が先に咲いたときは、花粉を採って保存しておきます。
予備摘果は花が散って二週間後
受粉した実は、花が散って二週間ほどで小指の先ほどになります。この時期に、一つの花芽から出た五個から八個の実を二個に減らします。これを予備摘果といい、早く済ませるほど残した実が大きくなります。形がいびつな実、上向きの実、傷のある実から取ります。
- 残す実を選ぶ
- 一つの花芽の実のうち、三番目から五番目に咲いた実で、横向きか下向きで軸が太いものを残します。上向きの実は形が悪くなります。
- はさみで軸を切る
- 実を指で引くと残す実の軸まで傷むので、園芸用の細いはさみで取る実の軸だけを切ります。
- 二週間以内に終える
- 予備摘果は五月上旬までに済ませます。遅れるほど養分が分散して、残した実が小さくなります。
予備摘果を終えた実は、翌週に一度見直します。傷が付いた実や曲がった実が残っていたら、そのときに取り替えます。
仕上げ摘果で葉の数に合わせる
五月下旬に、二個に減らした実を一個にし、枝全体の数を調整する仕上げ摘果をします。なしは葉二十五枚から三十枚に実一個が目安で、枝の長さでいえば二十センチから二十五センチに一個です。大玉の品種ほど間隔を広く取ります。
| 品種の大きさ | 残す間隔の目安 | 葉の枚数の目安 |
|---|---|---|
| 中玉(幸水、二十世紀) | 二十センチに一個 | 葉二十五枚に一個 |
| 大玉(豊水、あきづき) | 二十五センチに一個 | 葉三十枚に一個 |
| 特大(新高) | 三十センチに一個 | 葉四十枚に一個 |
摘果をためらうと実が小さくなるだけでなく、翌年の花芽が減って実が少ない年になります。
袋かけで虫と病気から守る
仕上げ摘果を終えた六月上旬に、実に袋をかけます。なしの実に入るシンクイムシは六月から活動し、実の表面の病気も梅雨に広がるので、その前に袋で守ります。二十世紀など皮の緑色を残したい品種は、光を通さない袋で色をきれいに保ちます。幸水や豊水など茶色の品種は、薄い袋か袋なしでも育ちます。
- 殺菌して乾いてからかける
- 袋をかける前日に果樹用の殺菌剤をまき、実が乾いてからかけます。濡れたままかけると袋の中で病気が出ます。
- 軸に隙間なく留める
- 袋の口を軸に巻きつけ、針金でしっかり留めます。隙間があると虫が入り、袋の意味がなくなります。
- 収穫まで外さない
- なしは色をつける必要がないので、袋は収穫のときに実ごと外します。途中で外すと日焼けします。
実がつかない、落ちるときの原因
花は咲くのに実がならない、ついた実が落ちるといった不調は、受粉、相性、水のどれかが原因です。落ちた時期と実の様子で切り分けます。なしは受粉さえ済めば実つきのよい果樹なので、まず受粉と品種の相性から疑います。
| 症状 | 原因 | 翌年の直し方 |
|---|---|---|
| 花が散ってすぐ小さい実が全部落ちる | 受粉していないか相性が悪い | 相性のよい品種の花粉で人工授粉 |
| 五月に一部が落ちる | 生理落果で正常 | 予備摘果を続ける |
| 六月以降に大きくなった実が落ちる | 水切れか実のつけすぎ | 乾いたら水をやり、摘果を強める |
| 実に小さい穴があき落ちる | シンクイムシ | 六月上旬までに袋をかける |
| 実の形がいびつ | 受粉が不十分 | 二回に分けて授粉し、横向きの実を残す |
なしの受粉に使うもの
1 本では実らない木があります。自分の木がそれに当たるなら、道具の前に相手の品種が要ります。
- 授粉用の毛ばたき探す言葉「人工授粉 毛ばたき 園芸」
- 規格の目安
- 柔らかい毛のはたき。梵天と呼ばれる授粉専用のものもあります。
花から花へ軽く触れて回ります。強くこすると花が傷むので、撫でる程度で十分です。
- 授粉用の花粉探す言葉「授粉用 花粉 果樹」
- 規格の目安
- 品種の合う花粉。石松子(増量材)と混ぜて使うものが多いです。
受粉樹を植える場所がないときの代わりです。品種の組み合わせが合わないと実らないので、そこを先に確かめます。
- 綿棒・小筆探す言葉「綿棒 授粉 園芸」
- 規格の目安
- 普通の綿棒か、細い筆。
花の数が少ないときは、1 輪ずつ確実に付けられます。品種を変えるときは新しいものに替えます。
- 1 本で実る品種なら、受粉の道具は要りません。まず自分の品種を確かめます。
- 受粉樹を近くに植えられるなら、人工授粉そのものが要らなくなります。
なしの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はなしの育て方にまとめています。
iPhone 対応(Android 版は準備中)。無料で使えます。
この記事は広告を含みます。