系統で育て方が変わる
文旦とひとくくりに呼ばれる果実には、土佐文旦や水晶文旦、晩白柚など性質の違う系統があります。実の大きさも収穫期も耐寒性も違うので、苗を買う前にどれを育てるかを決めておくと、後の管理で迷いません。
関東平野部の露地で冬を越せるかどうかは、系統と植える場所の両方で決まります。迷ったら鉢植えから始め、冬に取り込める体制を作ってから地植えを考えるのが安全です。
| 系統 | 実の大きさ | 収穫のころ | 向く育て方 |
|---|---|---|---|
| 土佐文旦 | 400〜600グラム | 12月〜2月 | 南面の地植えか大鉢 |
| 水晶文旦 | 300〜500グラム | 10月〜12月 | 鉢植え中心、加温なしでも可 |
| 晩白柚 | 1.5〜2.5キロ | 12月〜1月 | 暖地向き、関東は鉢で冬取り込み |
| 安政柑 | 600グラム〜1キロ | 1月〜3月 | 寒さにやや強く南面の地植え可 |
実の重さは目安です。同じ系統でも木の若さや着果数で倍近く変わります。
苗を選ぶときの見方
文旦の苗はカラタチ台木の接ぎ木苗が一般的で、一年生か二年生で売られています。実がなるまで植え付けから四年から六年かかるので、太くて元気な苗を選ぶことが後の年数を縮める一番の近道です。
- 接ぎ口を確かめる
- 接ぎ口がしっかり癒合し、ぐらつきがないものを選びます。接ぎ口の上下で太さが大きく違う苗は台木と穂木の相性が悪く、後で伸びが止まりやすいです。
- 幹の太さを見る
- 地際の幹が鉛筆より太く、まっすぐ立っているものが目安です。細くひょろ長い苗は根も貧弱で、植えてから一年は伸びません。
- 葉の色と艶を見る
- 濃い緑で艶があり、葉の裏に白い粉や斑点がないことを確かめます。黄色く抜けた葉が多い苗は根詰まりか肥料切れで、回復に時間がかかります。
- 受粉樹の当てをつける
- 文旦は自分の花粉では実が付きにくい性質です。夏みかんや小夏など受粉樹になるかんきつを一緒に育てられるか、買う段階で考えておきます。
植え付けの時期と場所
植え付けの適期は三月中旬から四月、芽が動き出す直前です。秋植えもできますが、関東では最初の冬に幼木が寒さで傷むことが多く、春植えのほうが安全です。
場所は一日六時間以上日が当たり、北風が当たらない建物の南面が理想です。冬にマイナス三度を下回る場所では、地植えは実がならないか木そのものが傷みます。
| 場面 | 地植えの可否 | 対策 |
|---|---|---|
| 南面で霜が降りない | 可 | 幹に藁を巻き、株元をマルチする |
| 南面だが霜が降りる | 条件付き | 冬は不織布で全体を覆い、寒波の日は二重にする |
| 北風が当たる | 不向き | 鉢植えにして冬は軒下か室内へ |
| ベランダ | 鉢のみ | 10号以上の鉢で、冬は窓際へ寄せる |
鉢植えの植え方
文旦は根が太く深く伸びるかんきつで、鉢が小さいとすぐ根詰まりします。最初から大きすぎる鉢にすると土が乾かず根腐れするので、苗の大きさに合わせて段階的に上げます。
- 8号から始める
- 一年生苗なら8号、二年生なら10号が目安です。深鉢を選び、底に鉢底石を三センチ敷きます。二年ごとに一回り大きくして最終的には15号前後まで上げます。
- 土は水はけ重視
- 赤玉土六に腐葉土三、軽石一の割合が基本です。市販の果樹用培養土でもよいですが、水はけが悪いと感じたら軽石を一割足します。
- 接ぎ口を土に埋めない
- 接ぎ口が土の上に出るように高さを合わせます。埋めると穂木から根が出て台木の意味がなくなり、病気にも弱くなります。
- 植えたらたっぷり水
- 鉢底から流れ出るまで水を与え、一週間は直射日光を避けた明るい場所に置きます。根が動き出したら日なたへ移します。
植え付け時に苗の先端を少し切り戻しておくと、根と地上部の釣り合いが取れて活着が早くなります。
地植えの植え方
地植えは植え穴の大きさと水はけで決まります。文旦は湿った土を嫌うので、水がたまりやすい場所なら土を盛って高植えにします。
- 穴は直径・深さとも50センチ
- 掘り上げた土に腐葉土をバケツ二杯と苦土石灰を一握り混ぜ、一週間なじませてから植えます。植え穴の底に元肥(植える前に土に混ぜておく肥料)として緩効性肥料を入れます。
- 高植えで根を守る
- 周囲より十センチほど盛り上げて植えると、梅雨や台風の長雨でも根が水に浸かりません。盛った土は年々沈むので、後で足します。
- 支柱を立てて結ぶ
- 植えた直後は根が張っておらず、風で揺れると細根が切れます。一メートル半の支柱を添え、八の字に緩く結びます。
- 株元をマルチする
- 藁やバークチップを五センチ厚さで敷き、乾燥と地温の変化を抑えます。幹に直接触れないよう、幹周りは少し空けます。
受粉樹の置き方
文旦は自家不和合性(自分の花粉では実が付きにくい性質)が強く、一本だけでは花が咲いても実がほとんど残りません。同じ時期に咲く別のかんきつを近くに植えるか、鉢で用意します。
受粉樹は夏みかんや小夏、はっさくが相性のよい組み合わせとされます。開花期が重なり、五メートル以内にあれば虫が花粉を運びます。鉢植えなら開花中だけ隣に寄せれば十分です。
| 受粉樹の種類 | 開花のころ | 扱いやすさ |
|---|---|---|
| 夏みかん | 5月上旬〜中旬 | 文旦とよく重なる、寒さにもやや強い |
| 小夏 | 5月上旬 | 木が小さく鉢で管理しやすい |
| はっさく | 5月上旬〜中旬 | 実も楽しめるが木が大きくなる |
| 温州みかん | 5月上旬 | 花粉が少なく受粉樹としては弱い |
根付かないときの原因を切り分ける
植えて一か月経っても新芽が動かない、葉が落ちるというときは、水と根のどちらかに問題があります。葉の様子と土の状態を見て、原因を絞ってから手を打ちます。
| 症状 | 疑う原因 | 手当て |
|---|---|---|
| 葉が丸まって垂れる | 水切れ | 鉢は底から流れるまで、地植えはバケツ一杯を株元に |
| 葉が黄色くなり落ちる | 過湿で根が傷む | 水を止め、鉢なら土を替えて根の黒い部分を切る |
| 葉は緑のまま新芽が出ない | 根がまだ動いていない | 触らず待つ。六月までに動かなければ根を確かめる |
| 新芽が出てすぐしおれる | 肥料の与えすぎ | 肥料を取り除き、水で流して薄める |
植え付けの年は実をならせないのが目安です。花が咲いたら摘み取って、木を育てることに養分を回します。
文旦の植え付けに使うもの
木は一度植えたら動かせません。植え穴と支柱をきちんと作るかどうかで、その後の何年かが決まります。
数量は苗木 1 本を単位にしています。
- 完熟堆肥・腐葉土探す言葉「完熟堆肥 バーク 40L」
- 規格の目安
- バーク堆肥か腐葉土。40L 前後の袋。
- 数量の目安
- 植え穴 1 つ(直径 60cm × 深さ 50cm)に 20〜30L を掘り上げた土と混ぜます。
穴を大きく掘って土を入れ替えるのが植え付けの本体です。ここを手抜きすると、根が広がらないまま何年も伸び悩みます。
- 支柱(添え木)探す言葉「園芸支柱 太い 180cm」
- 規格の目安
- 直径 25〜30mm × 長さ 180cm。1 本の添え木か、2 本の二脚(鳥居型)。
根が張るまでの 1〜2 年、風で株元が動くと細い根が切れ続けます。細い支柱では木の重さを支えられません。
- 樹木用の結束テープ探す言葉「樹木 誘引 テープ 幅広」
- 規格の目安
- 幅 20mm 前後の伸びる素材か、麻ひもと当て布。
幹は太ります。細いひもで縛ると食い込み、そこで水の通り道を締めてしまいます。幅の広いもので 8 の字に留めます。
- 緩効性肥料(元肥)探す言葉「緩効性肥料 元肥 樹木」
- 規格の目安
- 粒状で長く効くタイプ。
- 数量の目安
- 植え穴 1 つに 50〜100g。根に直接触れないよう、土を一枚かぶせてから植えます。
植え付け直後は根が傷んでいます。濃い肥料が触れると、そこから傷みが広がります。
- 鉢で育てるなら支柱は短いもので足ります。180cm の添え木は地植え用です。
- 植え穴に石を入れる必要はありません。水はけが悪いなら、盛り土にして高く植えるほうが効きます。
文旦の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方は文旦の育て方にまとめています。
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