水の深さは生育の段階で変える
稲は常に水に浸かっていればよいわけではなく、段階ごとに深さを変えることで茎の数と根の張りを調節します。田植え直後は浅く、茎が増える時期はやや深く、茎が十分増えたら一度水を切ります。この切り替えが家庭のバケツ稲でもいちばん効く世話です。
| 時期 | 水の深さ | ねらい |
|---|---|---|
| 田植え〜活着まで | 二センチ | 苗を浮かせず根付かせる |
| 分げつ期(六月〜七月上旬) | 三〜五センチ | 茎を増やし雑草を抑える |
| 中干し(七月中旬) | 水を抜く | 根に酸素を送り倒伏を防ぐ |
| 穂ばらみ〜出穂 | 五センチ | 水切れさせず穂を守る |
| 登熟期 | 湿らせる程度 | 実を固め刈り取りに備える |
ここで言う中干しは田んぼの用語です。バケツでは土の表面にひびが入る程度まで乾かすことを指します。
毎日の水やりは減った分を足すだけ
水を張っている間は、蒸発した分を朝に足すだけで済みます。真夏は一日で二センチ以上減ることがあるので、朝と夕方の二回見るようにします。水温が上がりすぎると根が弱るので、日中の暑い時間に冷たい水を大量に入れるのは避け、朝に入れます。
- 朝に水位を見る
- 土の表面から水面までの高さを指で測ります。決めた深さより減っていれば、その分だけ静かに足します。
- 泥を巻き上げない
- 水は株元でなく縁に沿って注ぎます。勢いよく入れると泥が舞い、根が露出したり葉に泥がついたりします。
- ボウフラ対策
- 水面が動かないと蚊が湧きます。数日に一度は水をあふれさせて表面を入れ替えるか、銅線を沈めておくと減ります。
- アオコが出たら
- 水が緑に濁るのは肥料が多い印です。上澄みを捨てて新しい水を入れ、追肥は見送ります。
中干しで根を鍛える
七月中旬、根元から出る茎が十五本から二十本になったころ、一度水を抜いて土を乾かします。酸素が根に届いて根が深く伸び、それ以上の無駄な茎が出るのを止め、秋に倒れにくい株になります。期間は五日から一週間が目安で、土の表面に細いひびが入ったら終わりです。
- 茎の数を数える
- 株元をかき分けて茎を数えます。十五本を超えていれば中干しの合図です。少なければもう一週間待ちます。
- 水を抜く
- バケツを傾けて上澄みを捨てます。底に穴がないので自然には抜けません。晴れが続く日を選んで始めます。
- ひびを見て戻す
- 土の表面に髪の毛ほどのひびが入り、踏むと固いくらいで水を戻します。深く割れるまで乾かすと根が切れます。
- 戻したあとは浅く
- 中干し明けは二、三センチの浅い水から始め、数日かけて五センチに戻します。急に深くすると根が息をできません。
雨が続く年は中干しがうまくいきません。その場合は水を抜いたまま雨よけの下に置くか、諦めて浅水で通します。
追肥は少なく、穂の出る前に一度
稲は肥料を欲しがる作物ですが、家庭のバケツでは元肥だけでもかなり育ちます。追肥(育ちの途中で足す肥料)をするなら、穂が出る二十日ほど前、七月下旬に一回が基本です。これが穂の中の粒数を増やす穂肥にあたります。
茎が増える時期に窒素を足すと葉ばかり茂って背が高くなり、秋に倒れます。葉の色が濃い緑で茎が太いなら、追肥は要りません。葉が黄緑で細い株だけに与える、と決めておくのが失敗しない考え方です。
| 時期 | 葉の状態 | 追肥の判断 |
|---|---|---|
| 六月 | 濃い緑で勢いがある | 与えない |
| 六月 | 黄緑で細い | 化成肥料を小さじ半分 |
| 七月下旬(穂肥) | 全体に色が抜けてきた | 化成肥料を小さじ一杯 |
| 八月以降 | どんな状態でも | 与えない |
肥料は水面にぱらぱらと落とすだけで溶けます。株元に固めて置くと根が焼けるので、周囲に散らします。
雑草と葉の様子を見る習慣
水を張ってあるのでバケツ稲はあまり雑草が出ませんが、コナギやアオミドロのような水を好むものは出ます。小さいうちに指で抜けば済み、大きくなると根が絡んで抜きにくくなります。週に一度、株元をのぞく習慣が効きます。
- 水面の草を取る
- 細長い葉の草や糸状の藻が浮いていたら、手ですくって捨てます。稲の葉に絡むと光を遮ります。
- 古い葉を取る
- 下のほうで枯れて水に浸かった葉は腐って病気の元になります。株元から引いて外します。
- 茎の太さを触る
- 根元の茎を指で軽くつまみ、張りがあるか確かめます。ぶよぶよなら根が弱っているので水を替えます。
倒れた、黄ばんだときの立て直し
夏の終わりに株が傾く、葉が黄ばむといった変化は、原因を一つに絞りにくいものです。倒れ方と葉の色の出方を手がかりに切り分けると、水を替えるべきか肥料を止めるべきかが見えてきます。
| 症状 | 疑う原因 | 立て直し |
|---|---|---|
| 根元から株ごと傾く | 根が浅い、中干し不足 | 支柱を立てて結び水を浅くする |
| 下葉から黄色くなる | 肥料切れ | 穂が出る前なら少量追肥 |
| 葉全体が濃緑で背丈だけ伸びる | 肥料過多 | 追肥を止め水を替える |
| 葉先が白く枯れる | 水温の上昇、水切れ | 朝に水を足し床から浮かせる |
穂が出てから倒れた株は、支柱で立て直せばそのまま実ります。折れていなければ諦めなくて大丈夫です。
稲の育てている間に使うもの
植え付けたあとにやることは、追肥・除草・水やりの 3 つに集約されます。専用品より、切らさないことのほうが効きます。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8 追肥」
- 規格の目安
- 粒状。ひとつまみがおよそ 5g、大さじ 1 がおよそ 10g です。
- 数量の目安
- 追肥 1 回で 1 ㎡あたり 30〜50g、畝 1 本で 50〜90g。1kg 袋なら 10 回以上もちます。
株から少し離した位置にまいて土と混ぜます。株元に直に置くと、濃さで根が傷みます。作物ごとの量は都道府県の施肥基準が正確です。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 液体肥料探す言葉「液体肥料 野菜 原液」
- 規格の目安
- 1000 倍に薄めて使う原液タイプ。800ml 前後の 1 本で、ジョウロ何十杯ぶんにもなります。
粒の肥料は効き始めるまで数日から 1 週間かかります。すぐ効かせたいとき、鉢やプランターで使います。
- 三角ホー(草かき)探す言葉「三角ホー 除草」
- 規格の目安
- 刃幅 10〜15cm、柄の長さ 120cm 前後。立ったまま使える長さを選びます。
雑草は根から抜くより、小さいうちに表土ごと削るほうが早く終わります。かがまずに済むので続けられます。
- 敷きわら・刈り草探す言葉「敷きわら 家庭菜園」
- 規格の目安
- 稲わら 1 束でおよそ 3〜4 ㎡ 分。刈った草を乾かしたもので代えられます。
- 数量の目安
- 畝 1 本で 1 束の半分ほど。
夏の乾きと地温の上がりすぎを抑えます。マルチと違い、そのまま鋤き込んで土に返せます。
- 活力剤は肥料の代わりにはなりません。肥料を切らしていないなら急ぎません。
- 肥料は種類を増やすより、1 袋を切らさないほうが効きます。
稲の収穫までのコツは作物ページに
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