一年の流れを月で追う
稲は種まきから収穫まで五か月から六か月かかり、途中で作業を止められません。ただ毎日やることは水を見るだけなので、月ごとの節目さえ押さえておけば忙しくはありません。関東平野部の露地を前提にした一覧です。
| 月 | 作業 | 目安 |
|---|---|---|
| 4月下旬 | 塩水選と浸種 | 水温十五度で一週間 |
| 5月上旬 | 苗箱に種まき | 葉が出るまで保温 |
| 5月中旬〜6月上旬 | 田植え | 葉三、四枚、丈十五センチ |
| 6月 | 分げつ期の浅水管理 | 水深三〜五センチ |
| 7月中旬 | 中干し | 茎が十五本を超えたら |
| 7月下旬 | 穂肥 | 出穂の二十日前 |
| 8月上旬〜中旬 | 出穂と開花 | 水を切らさない |
| 9月 | 登熟、鳥よけ | 穂が垂れ黄金色に |
| 9月下旬〜10月上旬 | 刈り取りと乾燥 | もみの九割が黄色く |
| 10月中旬 | 脱穀、もみすり | 十日ほど干してから |
五月から六月は苗の姿と水深を見る
この時期は苗が環境に慣れて茎を増やし始める大事な時期です。田植えのタイミングを苗の丈で判断し、植えたあとは水を浅く保って根付きを助けます。六月に入ったら茎の数を毎週数え、増え方を記録しておくと中干しの時期を迷いません。梅雨入り後は日照が減るので、鉢の位置を日の長い側へ寄せておきます。
- 田植えを急がない
- 苗が小さいうちに植えても育ちますが、風で倒れやすくなります。丈が十センチを超えるのを待ちます。
- 水深を五センチまで
- 活着して葉が立ったら、一週間かけて水を五センチまで深くします。雑草が出にくくなり水温も安定します。
- 茎を数えて記録
- 毎週同じ曜日に株元の茎を数えます。一本から始まって六月末に十本前後なら順調な増え方です。
七月は中干しと穂肥の判断
七月は稲の一年でいちばん判断の多い月です。中干しの開始は茎の本数で、穂肥は葉の色で決めます。どちらも日付ではなく株の姿で判断するのが、うまくいく人の共通点です。梅雨明けの時期とも重なるので、天気予報を見ながら晴れの続く週を選びます。
- 茎が十五本で水を抜く
- 株元をかき分けて数え、十五本から二十本になっていれば水を抜きます。梅雨明け直後の晴れが理想です。
- ひびが入ったら戻す
- 土の表面に細いひびが入り、指で押しても沈まなくなったら水を戻します。五日から一週間が目安です。
- 穂の赤ちゃんを探す
- 七月下旬、いちばん太い茎を割って中を見ます。白い小さな穂が一センチほどなら、出穂の二十日前です。
- 色を見て穂肥
- 葉の色が全体に薄くなっていれば化成肥料を小さじ一杯。濃い緑のままなら与えません。
茎を割って穂を確かめるのは一株につき一本だけにします。太い茎ほど早く穂が育つので、いちばん太いものを選びます。
八月は開花と水切れに注意
八月上旬から中旬、茎の先から穂が顔を出します。出た穂は数日のうちに午前中だけ花を開き、自分の花粉で受粉します。この時期に水を切らすと受粉に失敗して中身のない「しいな」が増えるので、毎日朝に水位を見ます。
開花は一日のうち午前十時から正午ごろの二時間ほどで、もみが少し開いて黄色い葯がのぞきます。この時間帯に強い雨や風が当たると花粉が流れるので、天気の悪い日は穂だけでも軒下に寄せてやると受粉が安定します。
| 時期 | 見えること | やること |
|---|---|---|
| 8月上旬 | 葉の間から穂の先がのぞく | 水を五センチに保つ |
| 8月中旬 | 穂全体が出て午前に白い花 | 強い風雨の日は室内に寄せる |
| 8月下旬 | 穂が緑のまま少し重くなる | 水を切らさず観察を続ける |
九月から十月は鳥と乾燥
穂が黄色く色づき始めるとスズメが集まります。ベランダでも二日で食べ尽くされることがあるので、色づき始めたらすぐ防鳥ネットか排水ネットで穂を包みます。穂の九割が黄金色になり、もみを噛んで固ければ刈り取りです。
- ネットで包む
- 穂が色づき始めた日にネットをかけます。目の粗いネットはくぐられるので、三角コーナー用の細かいものが使えます。
- 水を落とす
- 刈り取りの一週間前から水を張るのをやめ、土が湿っている程度にします。株が締まって刈りやすくなります。
- 刈って束ねて干す
- 株元から刈り、数株ずつひもで束ねて逆さに吊るします。雨の当たらない風通しのよい所で十日ほどです。
- もみを外す
- 乾いたら牛乳パックの口や茶碗のふちでこいでもみを落とします。すり鉢と軟球ボールでもみすりまでできます。
時期を外したときの直し方
種まきが遅れた、中干しを忘れた、といったずれは家庭栽培ではよく起きます。ずれた時期に応じて、何を諦めて何を守るかを決めておくと慌てません。
| 場面 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 種まきが六月にずれた | 出穂が九月にずれ登熟が不十分 | 早生を選び直し収量は期待しない |
| 中干しを忘れた | 茎が増えすぎ秋に倒れる | 八月以降は浅水で支柱を立てる |
| 穂肥を八月にした | 登熟が遅れ味が落ちる | 以後は肥料を止め水管理に専念 |
| 刈り取りが遅れた | もみが割れ、鳥に食われる | 気づいた日に刈って干す |
稲の栽培に一年を通して使うもの
作業のたびに買い足すより、季節の前にまとめて用意しておくほうが結局は安く済みます。一年を通して使うのは、次の 4 つです。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 牛ふん」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥かバーク堆肥。40L 前後の袋で売られています。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
土の粒をつなぐのは微生物の働きで、その餌になるのが堆肥です。未熟なものは根を傷めるので「完熟」と書かれたものを選びます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状のものが扱いやすく、風のある日でも舞いません。1〜20kg 袋。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。1kg 袋で数畝ぶん。
日本の土は雨で酸性に傾きます。**必要な量は土質で 3 倍ほど違い**、黒ボク土は砂質土よりずっと多く要ります。入れすぎると今度はアルカリ性に寄りすぎるので、pH を測ってから決めます。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8」
- 規格の目安
- 窒素・リン酸・カリが同じ比率の粒状。まず 1 袋あればほとんどの野菜に使えます。
- 数量の目安
- 元肥は 1 ㎡あたり 100g、畝 1 本で 150〜200g。追肥は 1 回 1 ㎡あたり 30〜50g。
種類を増やすより、切らさないほうが効きます。作物ごとの正確な量は都道府県が施肥基準として公表しているので、量を詰めたくなったらそちらを見てください。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が楽です。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。50m 巻きなら 10 畝以上。
地温を上げ、雨のはね返りと雑草を抑えます。夏の高温期だけは、地温が上がりすぎるので白黒マルチに替える手もあります。
- 土壌改良材のセット買いは要りません。堆肥と石灰と元肥の 3 つで足ります。
- 連作していない畑なら、土壌消毒剤は要りません。
稲の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方は稲の育て方にまとめています。
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