予防はほとんど苗と土で決まる
さつまいもの被害は、収穫してみるまで見えないものが多い。地下でいもを食べる害虫も、株元から入る病気も、発生してから薬で挽回できる幅は小さい。だから対策の重心は、健全な苗を選ぶことと、輪作と排水で土の条件を整えることに置く。
特に近年広がっている株元と地際から腐る病気は、持ち込まれた苗や残った塊から広がる。苗は信頼できる出所から入手し、病気が出た株は畑に残さず必ず持ち出して処分するという二点が、家庭菜園でできる最大の予防になる。
- 苗の出所を確かめる
- 病気は苗とともに畑へ入ることが多い。信頼できる販売元から入手し、切り口が黒ずんだものや軟らかいものは植えない。
- 枯れた株は畑に残さない
- 抜いた株を通路に置いたり畝にすき込んだりすると翌年の伝染源になる。乾かして畑の外で処分する。
- 排水を先に直す
- 腐敗性の病気は過湿の畝で起きる。高畝にし、畝間の水が抜ける経路を作っておくことが、どの薬剤よりも効く。
畑に埋めたり通路に捨てたりした病株は翌年の伝染源になる。抜いた株は乾かして可燃ごみに出すか、畑の外で焼却する。
連作と輪作の設計
輪作は面倒に見えるが、家庭菜園でいちばん確実に効く病害虫対策である。土の中で増える線虫や病原は薬で下げにくく、寄主のない年を挟むことでしか密度が落ちない。区画に番号を振り、年ごとの作付けを記録しておくと運用しやすい。
- 同じ場所は二〜三年まで
- さつまいもは連作にやや強いが、続けると線虫や土壌病害が増える。二〜三年で場所を移し、四年で戻す輪作にすると被害が安定して減る。
- 落花生や緑肥を挟む
- ネコブセンチュウが寄生できない落花生、対抗植物になるギニアグラスやクロタラリアなどの緑肥を間に入れると、線虫の密度が下がる。
- 排水不良の区画を使わない
- 水が溜まる畝は腐敗性の病気の温床になる。畝を高くしても解決しないほど湿る場所は、そもそもさつまいもに割り当てない。
- 前年の被害を記録する
- 表面の変形、株元の腐り、地下の食害痕を写真と場所つきで残しておく。翌年の輪作と土壌処理の判断材料になる。
地下でいもを害するもの
地下の被害は掘るまで分からないため、発生してからの対処がほとんど効かない。前年に食害や変形が出た区画は、翌年その作物を別の場所へ回すこと自体が対策になる。掘ったときの状態を必ず記録しておきたい。
| 原因 | 現れ方 | 警戒時期と対策 |
|---|---|---|
| コガネムシ類の幼虫 | いも表面に不規則な穴やかじり痕 | 6〜9月。前年に未熟な堆肥や芝がある畑で多い |
| ネコブセンチュウ類 | 表面がざらつき変形、細かい亀裂 | 通年。連作で増える。輪作と対抗植物 |
| ネズミ・モグラ経路の食害 | 大きくえぐれた食痕 | 秋。畝周りの草を刈り隠れ場所を減らす |
| 過湿による腐敗 | 水に浸かった部分から軟らかく腐る | 梅雨と秋の長雨。高畝と排水路 |
未熟な堆肥や刈り草を畝に大量にすき込むとコガネムシの産卵を誘う。有機物は完熟したものを、量を抑えて入れる。
葉とつるを食べる虫
葉の食害は、多少なら収量にほとんど響かない。さつまいもは葉を作り直す力が強く、株全体の三割程度までの食害なら放っておいてよい。問題になるのは、群れが一気に葉を食べ尽くして光合成が止まる場合だけである。
- 若齢のうちに葉ごと摘む
- 孵化直後の幼虫は葉裏に固まっている。その葉を一枚摘み取るだけで一群を処理できる。散らばってからでは追えない。
- 朝夕に株元を掘る
- ヨトウ類は日中、株元の土に潜んでいる。食害痕の近くを浅く掘ると見つかるので、朝か夕方にまとめて捕殺する。
- 三割までの食害は放置する
- 葉を作り直す力が強いため、部分的な食害は収量にほとんど響かない。株全体が丸裸になりそうなときだけ手を打つ。
| 虫 | 被害の見え方 | 対処の考え方 |
|---|---|---|
| ハスモンヨトウ | 葉裏に群れ、葉が網目状に残る | 若齢のうちに葉ごと捕殺。老齢は薬が効きにくい |
| ナカジロシタバ | 葉を大きく食べ進み株が丸裸に | 8〜9月に急増。発生の初期を見逃さない |
| ヨトウ類全般 | 日中は株元の土中に潜む | 朝夕に株元を掘って捕殺すると効率がよい |
| アブラムシ類 | 新芽が縮み、すす状の黒い汚れ | 初期は水で流す。多発は苗の窒素過多も一因 |
株元と茎から入る病気
- 地際が黒く枯れ上がる
- 株元の茎が黒褐色に変わり、上の葉から萎れて枯れる症状が出たら、その株はすぐ抜いて畑の外へ出す。周囲の株にも広がるため放置しない。
- つるが片側だけ萎れる
- 日中に萎れて夕方戻る状態が続き、やがて片側の茎が枯れるのは維管束の病気の疑い。同じ畝での翌年の作付けを避ける。
- 収穫後に腐りが出る
- 貯蔵中に一部が軟らかく腐るなら、収穫時の傷か畑での感染が原因。傷んだいもは即座に取り除き、残りを乾いた場所へ移す。
- 道具を持ち込まない
- 病気が出た区画で使った鍬や長靴を洗わずに別の畝へ入れると、土ごと病原を運ぶ。作業の順序を健全な畝からにする。
- 雨のあとに見回る
- 腐敗性の病気は長雨のあとに一気に現れる。雨が上がったら株元を見て回り、黒く変色した株を早めに抜き取る。
つるぼけは病気ではなく設計の失敗
つるぼけは、窒素が多すぎて株が栄養成長に偏り、つると葉ばかり茂っていもが太らない状態を指す。虫にも菌にも原因はなく、施肥と土の履歴で起きる。葉が濃い緑で大きく、つるが指ほど太く、株元を掘っても細い根しか出ないなら、ほぼこれである。
- 見分けは株元を掘って確かめる
- 葉が濃緑でつるが太いのに、8月下旬の株元に細い根しかなければつるぼけである。地上部の勢いだけで喜ばない。
- 気づいたら水も肥料も止める
- 追肥(育てている途中で足す肥料)をやめ、以後は水を与えない。乾き気味にすることで株が生殖成長へ戻りやすくなり、わずかでも肥大が進む。
| 原因 | 起きやすい条件 | 次の年の直し方 |
|---|---|---|
| 元肥の窒素過多 | 化成肥料を標準量入れた | 元肥を切りカリのみにする |
| 前作の残肥 | 葉物・果菜・豆類の後作 | 無肥料で植える |
| 夏の追肥 | 葉色を見て追肥した | 追肥は原則しない |
| 過湿と日照不足 | 低い畝、日陰の区画 | 高畝にし日当たりのよい区画へ移す |
当年に気づいたら、追肥と水を止めてつる返しで節の根を切る。回復幅は小さいので、翌年の設計変更のほうが本命になる。
月別の警戒表
- 記録は場所とセットで残す
- どの畝で何が出たかを写真と位置つきで残すと、翌年の輪作と区画の割り当てを迷わず決められる。
- 健全な畝から作業する
- 病気が出た区画の土を道具や長靴で運ぶと広がる。作業の順序を健全な畝からにし、最後に問題のある畝を扱う。
| 時期 | 警戒するもの | やること |
|---|---|---|
| 5〜6月 | 苗の腐り、活着不良 | 黒ずんだ苗を植えない。欠株を補植 |
| 7月 | 雑草に負ける、初期の食害 | 除草を終える。葉裏を見る |
| 8月 | ハスモンヨトウ等の多発 | 週1回の見回りと若齢の捕殺 |
| 9月 | 株元の腐敗、長雨 | 排水路を切る。枯れ株を持ち出す |
| 10〜11月 | 収穫時の傷、地下の食害 | 傷を作らない掘り方。傷んだいもは分ける |
さつまいもの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はさつまいもの育て方にまとめています。
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