年間の流れをつかむ
さつまいもの一年は、春の土づくり、初夏の植え付け、夏の放任、秋の収穫、そして冬の貯蔵という五つの区切りでできている。手をかける時期と、あえて何もしない時期がはっきり分かれるのが特徴で、夏に世話を焼きすぎると収量が落ちる。
収穫時期は植え付け日から逆算する。植え付けからおよそ120〜150日、積算温度でいえば2200〜2500℃前後が目安になるため、5月中旬に植えれば9月下旬から、6月中旬に植えれば10月中旬から掘り始める計算になる。
- 植え付け日を必ず控える
- 収穫の判断は日数が基準になる。植えた日、品種、本数を記録しておけば、秋に掘る時期で迷わずに済む。
- 手をかける月を絞る
- 作業が集中するのは4〜6月と9〜11月で、7〜8月はほぼ放任でよい。忙しい時期を先に把握しておくと計画を立てやすい。
- 初霜の平年日を調べておく
- 住んでいる地域の初霜の時期から逆算して、掘り切る最終日を春のうちに決めておく。霜に当てると貯蔵できなくなる。
| 区切り | 時期 | 主な作業 |
|---|---|---|
| 土づくり | 4月〜5月上旬 | 酸度確認・耕起・畝立て・マルチ |
| 植え付け | 5月〜6月中旬 | 苗の水揚げ・植え付け・補植 |
| 夏の管理 | 7月〜9月上旬 | 除草・見回り・必要ならつる返し |
| 収穫 | 9月下旬〜11月上旬 | 試し掘り・つる切り・収穫 |
| 貯蔵 | 10月〜翌1月 | 乾燥・キュアリング・熟成 |
4月から5月上旬|土をつくる
この時期にやるべきことは肥料を入れることではなく、水はけと土の柔らかさを整えることである。畝立てとマルチ張りを植え付けの一週間以上前に済ませておくと、植える日には地温が上がっていて活着が早い。
- 前作の残りを片付ける
- 枯れ残った茎葉や根は病害虫の越冬場所になる。耕す前に取り除き、畑の外へ出してから土づくりに入る。
- 石灰は二週間以上前に
- 酸度が5.0を下回るときだけ苦土石灰を入れ、元肥(植える前に土へ混ぜておく肥料)とは二週間以上あける。同時に入れると肥効が乱れる。
- マルチは植え付けの一週間前に
- 先に張って地温を上げておくと、植えた日から根が動く。畝の裾に土をしっかり被せて風で飛ばないようにする。
- 畝立ての向きを決める
- つるが両側へ均等に広がるよう、畝は南北に取るのが基本。傾斜地では水の流れる向きを優先し、排水を確保する。
| 時期 | 作業 | 目的 |
|---|---|---|
| 4月上旬 | 前作の残渣を片付け深く耕す | 塊を砕いていもの形を整える |
| 4月中旬 | 酸度を測る。5.0未満なら石灰 | ペーハー5.5〜6.5に合わせる |
| 4月下旬 | 元肥はカリ主体で少量 | 窒素を抑えつるぼけを防ぐ |
| 5月上旬 | 高さ30センチの畝を立てマルチ | 排水確保と地温上げ |
この時期に肥料を足しすぎると、夏につるだけが茂る。整えるのは水はけと土の柔らかさであって、地力ではない。
5月から6月|植え付けの適期
植え付け適期の幅は一か月以上あるが、遅いほど収穫までの日数が削られる。同じ品種でも5月に植えた株と6月末に植えた株では、秋に掘ったときの大きさがはっきり違う。作業の都合がつくかぎり、適期の前半に植えたい。
- 植えた日を記録する
- 収穫の判断は植え付け日からの日数で行う。何月何日に、どの品種を何本植えたかを必ず控えておくと、秋に迷わない。
- 二週間以内に補植する
- 活着しなかった株は一週間後に見極め、予備苗で埋める。二週間を過ぎた補植は間に合わないので諦める。
- 晴天続きの日中は避ける
- 曇りの日か夕方に植えると葉から水が抜けにくく、活着率が上がる。植えた直後は株元へたっぷり水をやる。
- 最初の二週間は水を切らさない
- 畑でも活着までは例外的に水やりする。新しい葉が動き出したら水やりをやめ、以後は原則放任に切り替える。
| 地域 | 適期 | 遅れたときの判断 |
|---|---|---|
| 暖地 | 5月上旬〜6月中旬 | 6月下旬までなら早生系で可 |
| 中間地 | 5月中旬〜6月下旬 | 6月末が限界。以降は見送る |
| 寒冷地 | 5月下旬〜6月下旬 | マルチ必須。7月植えは不可 |
7月から9月上旬|手を出しすぎない
夏はさつまいもにとって、手をかけないことが管理になる期間である。追肥(育てている途中で足す肥料)も水やりも原則として不要で、やるべきは初期の除草と週一度の見回りだけ。世話を焼くほどつるに養分が回り、いもが太らなくなる。
- 7月上旬で除草を終える
- つるが畝と通路を覆えば雑草はほとんど出ない。それまでの一か月だけ集中して抜き、以降は畝に立ち入らない。
- 週に一度、葉裏を見る
- 葉を食べる幼虫は若いうちなら葉ごと摘むだけで済む。群れで固まっている段階を見つけられるかどうかが分かれ目になる。
- 8月下旬に肥大を確認する
- 株元の土を少しどけて、いもが太り始めているかを見る。細い根しかなければつるぼけを疑い、追肥と水を止める。
| 時期 | 作業 | 注意 |
|---|---|---|
| 7月上旬 | 最後の除草。以降は不要 | つるが覆えば雑草は出ない |
| 7月下旬 | 葉色を確認。濃すぎれば窒素過多 | 追肥は原則しない |
| 8月 | 害虫の見回りを週1回 | 葉を食べる幼虫は若いうちに |
| 8月下旬 | 株元を少し掘り肥大を確認 | 太っていなければつるぼけを疑う |
| 9月上旬 | 過繁茂ならつる返し一回 | 以降は株を揺らさない |
夏に葉が黄色く薄いときだけ、カリ主体の追肥をごく少量。濃緑で旺盛なら何もしないのが正解になる。
9月下旬から11月|収穫
収穫の可否は日数と試し掘りの両方で決める。日数だけで掘ると小さすぎることがあり、見た目だけで待つと霜に間に合わない。初霜の平年日から逆算して、掘り切る最終日を先に決めておくと判断しやすい。
- 収穫の一週間前につるを刈る
- 株元でつるを切りマルチも剥がしておくと、掘る作業が楽になり皮も締まって傷つきにくくなる。
- 晴天が二〜三日続いた日に掘る
- 土が乾いていると落ちやすく、いもに傷が入りにくい。雨の直後に掘ったいもは貯蔵中に腐りやすい。
- 最終日を先に決める
- 初霜の平年日から逆算し、掘り切る日を決めておく。日数が足りなくても霜に当てるより早く掘るほうがよい。
- 掘る前に一株試す
- 本格的に掘る前に端の一株を掘り、太さと形を確かめる。細長く筋張っていれば二週間ほど待ってから掘り始める。
| 時期 | 作業 | 判断の基準 |
|---|---|---|
| 植え付け100日目 | 早生系の試し掘り | 1〜2株掘って太さを見る |
| 植え付け120日目 | 標準の収穫開始 | 晴天が二〜三日続いた日に |
| 10月〜11月上旬 | 順次収穫 | 下葉の黄変とつるの勢いの低下 |
| 初霜の予報が出たら | 残りを全部掘る | 霜に当てると貯蔵できない |
10月から翌1月|乾燥と貯蔵
掘り上げてからが後半戦になる。乾燥と温度管理を怠ると、せっかく太ったいもが貯蔵中に腐るか、甘みが乗らないまま終わる。畑仕事が終わっても、月に一度は箱を開ける習慣を冬まで続ける。
- 収穫当日は洗わず干す
- 水洗いすると皮の保護が失われる。半日ほど日陰で土を乾かし、乾いてから手で払い落とす。
- 包んで暗く暖かい場所へ
- 一本ずつ新聞紙で包み、段ボールに立てて入れる。北側の廊下や玄関など、暖房の風が当たらない暗所に置く。
- 月に一度は箱を開ける
- 一本腐ると周囲へ広がる。軟らかい部分や黒ずみのあるいもを取り除き、湿った包み紙を新しいものに替える。
| 時期 | 作業 | 条件 |
|---|---|---|
| 収穫当日 | 畑で半日陰干し | 土を乾かす。水洗いはしない |
| 収穫後3〜4日 | キュアリングまたは陰干し | 高温多湿で傷口を塞ぐ |
| 収穫2週間後〜 | 熟成が進み甘みが乗る | 13〜15℃で新聞紙に包む |
| 11月〜翌1月 | 月1回の点検 | 傷んだいもを取り除く |
9℃を下回ると低温障害で味が落ち黒く変色する。冷蔵庫での長期保存には向かず、室内の暗く暖かい場所を選ぶ。
時期を外したときの立て直し
さつまいもは植え付けから収穫までの日数で太る作物なので、遅れは日数で取り返すしかない。何を外したかによって、品種を替える・株間を詰める・掘る日を早めるのどれかを選ぶ。
| 外したこと | 起きること | 立て直し方 |
|---|---|---|
| 植え付けが七月にずれた | いもが太る期間が足りない | 株間を詰め、霜の前に掘り上げる |
| 肥料を入れすぎた | つるが茂っていもがつかない | 追肥を止め、つる返しで根を切る |
| 除草が遅れた | 雑草に負けて生育が止まる | 手で抜き、株元へ土を寄せ直す |
| 収穫が霜に間に合わない | いもが低温で傷んで腐る | 予報の出た日に掘り、当日中に乾かす |
遅れを肥料で取り返そうとしないこと。日数が足りない年に窒素を足すと、つるだけが茂っていもがさらに小さくなる。
さつまいもの栽培に一年を通して使うもの
作業のたびに買い足すより、季節の前にまとめて用意しておくほうが結局は安く済みます。一年を通して使うのは、次の 4 つです。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 牛ふん」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥かバーク堆肥。40L 前後の袋で売られています。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
土の粒をつなぐのは微生物の働きで、その餌になるのが堆肥です。未熟なものは根を傷めるので「完熟」と書かれたものを選びます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状のものが扱いやすく、風のある日でも舞いません。1〜20kg 袋。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。1kg 袋で数畝ぶん。
日本の土は雨で酸性に傾きます。**必要な量は土質で 3 倍ほど違い**、黒ボク土は砂質土よりずっと多く要ります。入れすぎると今度はアルカリ性に寄りすぎるので、pH を測ってから決めます。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8」
- 規格の目安
- 窒素・リン酸・カリが同じ比率の粒状。まず 1 袋あればほとんどの野菜に使えます。
- 数量の目安
- 元肥は 1 ㎡あたり 100g、畝 1 本で 150〜200g。追肥は 1 回 1 ㎡あたり 30〜50g。
種類を増やすより、切らさないほうが効きます。作物ごとの正確な量は都道府県が施肥基準として公表しているので、量を詰めたくなったらそちらを見てください。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が楽です。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。50m 巻きなら 10 畝以上。
地温を上げ、雨のはね返りと雑草を抑えます。夏の高温期だけは、地温が上がりすぎるので白黒マルチに替える手もあります。
- 土壌改良材のセット買いは要りません。堆肥と石灰と元肥の 3 つで足ります。
- 連作していない畑なら、土壌消毒剤は要りません。
さつまいもの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はさつまいもの育て方にまとめています。
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