目指すのは「痩せ気味・水はけ最優先」
さつまいもの土づくりは、他の野菜と逆に「与えない」方向で設計する。肥沃な畑ほどつるが伸びていもがつかない。よく肥えた区画があるなら、そこは他の野菜に回し、さつまいもは畑のいちばん痩せた場所、日当たりと水はけのよい場所に割り当てる。
いもは地中で肥大するため、土が硬いと形がいびつになり、水が滞ると腐る。深さ30センチまで塊を砕いて耕し、粘土質なら籾殻やくん炭、完熟腐葉土を入れて物理性を改善する。ただし未熟な堆肥や鶏ふんは窒素源になるので入れない。
- 深さ30センチまで砕く
- 塊や石が残るといもが曲がったり二股になる。植え付けの二〜三週間前に深く耕し、大きな塊は鍬の背で崩しておく。
- 未熟な有機物を入れない
- 生の刈り草や未熟堆肥はコガネムシの産卵を誘い、分解時に窒素も出る。入れるなら完熟腐葉土か籾殻くん炭にする。
- 畑の中で最も痩せた場所を選ぶ
- 毎年よく肥料を入れている区画は避ける。日当たりと風通しがよく、雨のあとに水が引きやすい場所を優先して割り当てる。
前年に葉物や果菜を作って肥料を多く入れた区画は、残った窒素だけで十分に育つ。その場合は無肥料で植えてよい。
酸度は石灰を入れずに済むことが多い
さつまいもは酸性に強く、適正はペーハー5.5〜6.5である。日本の畑の多くはこの範囲か少し酸性寄りなので、他の野菜の感覚で石灰をまくと、かえってアルカリに寄せすぎてしまう。石灰をまくのは、酸度計で5.0を下回った場合だけでよい。
- 測ってから判断する
- 酸度計か簡易試験紙で植え付けの一か月前に測る。5.5〜6.5に入っていれば石灰は不要。5.0前後なら1平方メートルあたり苦土石灰100グラム程度にとどめる。
- 石灰は二週間以上前に
- 石灰と元肥(植える前に土へ混ぜておく肥料)を同時に入れると窒素が空気中へ抜けたり、肥効が乱れる。石灰は植え付けの二週間以上前、元肥はその後に分けて入れる。
- アルカリに寄せない
- ペーハーが7に近づくと、そうか病のような表面を荒らす病気が出やすくなる。毎年石灰をまく習慣があるなら、さつまいもの畝だけは外す。
肥料は窒素を減らし、カリを効かせる
肥料設計の要点は一つで、窒素を抑えてカリを多めにすることに尽きる。窒素はつると葉を作る成分、カリは根に養分を送っていもを太らせる成分だからである。市販のさつまいも専用肥料が窒素少なめ・カリ多めに配合されているのは、この理由による。
- 元肥は畝立ての前に混ぜる
- 表面にまくのではなく、畝を立てる前に耕土全体へ混ぜ込む。根が広がる範囲に薄く分散させるほうが効きが穏やかになる。
- 草木灰でカリを補う
- 草木灰は速効性のカリ源になるが、同時にアルカリ分もある。1平方メートルあたり軽く一握りまでにとどめ、まきすぎない。
| 成分 | 1平方メートルの目安 | 役割と注意 |
|---|---|---|
| 窒素 | 3〜5グラム | つるぼけの原因。前作が肥沃なら入れない |
| リン酸 | 10グラム前後 | 初期の根張りを助ける。過剰害は出にくい |
| カリ | 10グラム前後 | いもの肥大に直結。草木灰や硫酸カリで補う |
| 苦土・微量要素 | 必要に応じて | 葉が薄い黄緑になるときだけ補う |
化成肥料の数字が同じ配合品を「少なめに」まくと、カリまで不足する。窒素だけを減らすには単肥かいも用配合を使う。
前作の残肥を読んでから量を決める
- 前作が葉物・果菜なら無肥料
- ほうれん草、キャベツ、トマトなど肥料食いの後は残存窒素が多い。元肥は入れず、必要ならカリだけを補う。
- 前作が豆類なら窒素を切る
- 枝豆や落花生の後は根粒菌の働きで窒素が残る。窒素成分は入れず、リン酸とカリのみにする。
- 数年放置した土地は要注意
- 雑草が旺盛だった場所は地力が高い。初年はカリのみ、翌年から様子を見て少量の元肥を足す形が安全。
- 迷ったら少ないほうへ
- 肥料が足りない年は小ぶりでも味の乗ったいもが穫れるが、多すぎた年はいもがほとんどできない。失敗の代償が非対称なので、迷ったら減らす。
畝は高く、幅は広く立てる
畝を高くする理由は二つある。排水を確保して腐敗を防ぐことと、地温を上げて肥大期間を稼ぐことである。低い平畝で作ると、梅雨や秋の長雨のたびに畝の中が水浸しになり、いもが腐るか筋張った質になる。
- 畝間を掘って土を上げる
- 畝間の土を鍬で削り上げて畝に乗せると、高さと排水路が同時に得られる。掘った通路は水の逃げ道としてそのまま残す。
- 畝の表面を平らにならす
- 表面が凸凹だと水が溜まる場所ができる。板や鍬の背で平らにならしてからマルチを張ると、密着して風にも強い。
| 土質 | 畝の高さ | 補足 |
|---|---|---|
| 砂質・水はけ良好 | 25センチ前後 | 乾きすぎに注意。マルチで保湿する |
| 普通の畑土 | 30センチ前後 | 家庭菜園の標準。幅は70〜75センチ |
| 粘土質・水はけ不良 | 35〜40センチ | 畝間を深く掘り、排水の逃げ道を作る |
マルチを張るか、張らないか
- 黒マルチは寒冷地と早植え向き
- 地温を上げ雑草も抑えるので、寒冷地や5月上旬の早植えでは効果が大きい。植え付けの一週間以上前に張って地温を上げておく。
- 夏の高温期は温度過多に注意
- 暖地の真夏は黒マルチで畝が過熱し、根が傷むことがある。7月に入ったらマルチの上につるを這わせて日陰を作るか、通路に敷き草をする。
- 張らない場合は初期除草を計画する
- マルチなしなら植え付け後一か月の除草が必須になる。時間が取れないなら初めからマルチを張るほうが、収量は安定する。
マルチは収穫の一週間前に剥がす。残したまま掘るとつると絡んで作業が滞り、いもに傷が入りやすくなる。
土のせいで失敗したときの見分け
同じ畑で続けて作ると、肥料でも天気でもなく土そのものが原因になる。掘り上げたいもの形と数、そして株元の枯れ方を見れば、どれが効いているかはおおむね切り分けられる。
- 連作は二〜三年で切る
- さつまいもは比較的連作に強いが、続けるとネコブセンチュウが増え、いもの表面がざらつき変形する。二〜三年で別の作物に回す。
- 落花生や緑肥を挟む
- ネコブセンチュウが寄生しにくい落花生や、対抗植物になる緑肥を輪作に入れると、線虫の密度を下げられる。
- 夏に太陽熱で処理する
- 線虫の被害が続く区画は、真夏に土を湿らせて透明フィルムで一か月覆う。地温を上げて土壌中の密度を下げてから翌年に作る。
| 症状 | 考えられる原因 | 手当て |
|---|---|---|
| いもの表面がざらつき変形する | ネコブセンチュウが増えている | 二〜三年は別の作物に回す |
| つるばかり伸びていもが小さい | 前作の肥料が土に残っている | 窒素を止め、次作は無肥料で作る |
| 株元から枯れ上がる | 同じ場所で作り続けている | 三年あけ、緑肥を挟んでから戻す |
| いもの数が年々減る | 土が締まって深さが足りない | 畝を高くし、深く耕してから植える |
さつまいもの土づくりに使うもの
土づくりは「何を入れるか」より「いつ入れるか」で結果が変わります。石灰と肥料は同時にまかず、1 週間は空けます。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 土壌酸度計探す言葉「土壌酸度計」
- 規格の目安
- 土に挿して読む針式か、デジタル式。pH 4〜9 を 0.2 刻みで読めれば十分です。
石灰の量は本来 pH を測ってから決めるものです。測らずに毎年まき続けると、アルカリ側へ寄って別の障害が出ます。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 バーク」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥は肥料分もあり、バーク堆肥は土をふかふかにする働きが中心です。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
入れてすぐ効くものではなく、微生物が分解して初めて土が変わります。植え付けの 2〜3 週間前までに入れます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状。マグネシウム(苦土)も一緒に補えます。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。
まいたら耕して 1 週間ほど置きます。元肥と同時に入れると、窒素がアンモニアとして抜けてしまいます。必要な量は土質で変わるので、pH を測ってから決めます。
- くわ(平ぐわ)探す言葉「平ぐわ 家庭菜園」
- 規格の目安
- 刃幅 18cm 前後。柄の長さは身長の 6 割くらいが振りやすい目安です。
畝立てと土寄せの両方に使います。1 本あるかどうかで、土づくりにかかる時間がまるで変わります。
- 微生物資材や活力剤は、堆肥を入れているなら急ぎません。
- 小さな区画なら、耕運機より三角ホーとくわのほうが小回りが利きます。
さつまいもの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はさつまいもの育て方にまとめています。
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