低温を経ないと茎が伸びない
チューリップの花芽は、掘り上げられて乾かされている夏のあいだに球根の内部で作られます。つまり秋に植える時点で花はもうできており、栽培でやることは花を作ることではなく、その花を地上へ押し上げる準備をさせることです。
その準備が低温です。一定期間の寒さに当たると球根の中で茎を伸ばすはたらきが動き出し、暖かくなったときに一気に伸びて花が持ち上がります。低温が足りないと、花芽はあるのに茎が伸びず、葉の間に埋もれたまま咲きます。
- 秋にやること
- 低温を受けるのは根が出たあとの球根です。だから秋の作業は根を張らせることに尽き、地温が下がってから植えるのはそのためです。
- 冬にやること
- 寒さに当て続けるだけで、特別な作業はありません。霜よけや室内への取り込みはむしろ低温の蓄積を邪魔します。
冬に暖かい室内へ取り込むのは逆効果です。寒さは耐えさせるものではなく、開花に必要な条件だと考えてください。
必要な低温の量
目安は5℃前後の低温に1〜2か月以上です。資料や品種で幅がありますが、平地の屋外で冬を越せば自然に満たされる量なので、関東以北の露地では特別な作業は要りません。
問題になるのは、冬でも土の温度が下がりにくい南九州や沖縄、そして暖房の効いた室内で育てる場合です。ここでは人の手で低温を与えるか、あらかじめ低温処理された球根を買う必要があります。
| 段階 | おおよその温度 | 球根で起きること |
|---|---|---|
| 植え付け直後 | 15℃以下 | 根が下へ伸び始める |
| 厳寒期 | 0〜9℃ | 茎を伸ばす準備が進む |
| 春の立ち上がり | 10〜15℃ | 茎が伸びて蕾が上がる |
| 開花後 | 20℃以上 | 花が早く終わり休眠へ向かう |
暖地での冷蔵処理
冬の寒さが足りない地域では、球根を買ったあと冷蔵庫の野菜室で人工的に低温を与えてから植えます。処理をしないまま暖かい土に植えると、春に葉だけが開いて花茎の伸びない株が並びます。
- 紙袋か網袋で野菜室へ
- 通気のある袋に球根を入れ、冷蔵庫の野菜室に置きます。密閉した袋は蒸れて腐るので、口は閉じずに空気が通る状態を保ちます。
- 期間は4〜6週間
- 9月下旬から冷やし始め、4〜6週間ほど置いてから植えます。植え付けは12月に入ってからで、暖かい土に早く入れないことが前提です。
- 果物と一緒にしない
- りんごなどの果実が出すガスは花芽を傷めます。冷蔵中は果物を入れた区画から離し、球根だけの場所を確保します。
- 処理済み球根を買う
- 販売の時点で低温処理を済ませた球根も流通します。この場合は追加の冷蔵は不要で、袋に書かれた時期にそのまま植えます。
冷蔵から出したら日を置かずに植えます。常温に戻して放置すると与えた低温の効果が薄れ、処理をした意味がなくなります。
早く植えすぎたときに起きること
暖地で10月に植えるのは典型的な失敗です。地温が高いうちに植えると球根が腐るか、腐らなくても根より先に芽が動き、冬を迎える前に葉が伸びて寒さで傷みます。
- 腐って消える
- 地温が20℃近い土に植えると、根盤から菌が入って軟らかく崩れます。春に掘っても球根の形が残らず、跡だけが見つかることもあります。
- 冬前に葉が伸びる
- 暖かさで葉が先に立ち上がると、霜に当たって葉先が枯れます。葉の面積を失った株は弱り、春になっても花丈が伸びません。
- 気づいたときの対処
- 植えて数週間で葉が出てしまったら、抜かずにそのまま冬を越させます。敷きわらや不織布で霜よけをすると被害を減らせます。
鉢とベランダで低温を確保する
鉢は土の量が少ないぶん外気の影響を受けやすく、屋外に置きさえすれば低温は足ります。問題になるのは置き場所で、玄関の中や暖房の入る部屋に入れると低温が足りなくなります。
- 冬は北側でよい
- 植え付けから芽が出るまでは日当たりより低温を優先し、北側やベランダの奥に置きます。日照を気にするのは芽が動いてからで間に合います。
- 室内で育てる場合
- 室内での観賞を前提にするなら、冷蔵処理済みの球根を選ぶか、屋外で芽が5センチほど伸びてから室内へ入れます。
- 凍害だけは避ける
- 低温は必要ですが、鉢土が芯まで凍る状態が続くと根が切れます。寒冷地では鉢を地面に埋めるか二重鉢にして緩衝します。
低温不足を疑うサイン
咲いたのに花が地面すれすれにある、葉ばかり大きく茎が見えない、蕾が途中で止まって色づかない。これらは病気ではなく、低温不足のときに出る典型的な姿です。
| 症状 | 考えられる原因 | 翌年の手当て |
|---|---|---|
| 茎が伸びず葉に埋もれて咲く | 低温期間の不足 | 冷蔵処理をして植え付けを遅らせる |
| 葉だけで蕾が出ない | 球根が小さい、または低温不足 | 球周12センチ以上の球根に替える |
| 蕾が黄色いまま枯れる | 春先の乾燥や急な高温 | 水切れを避け風の通る場所へ移す |
低温不足はその年のうちには取り返せません。咲かなかった株は葉を残して球根を太らせ、翌年の植え方を変えて対処します。
チューリップの冬越しに使うもの
寒さそのものより、凍って溶けるのを繰り返すことで傷みます。土を凍らせないことが目的です。
- バーク堆肥・腐葉土(マルチング用)探す言葉「バーク堆肥 マルチング」
- 規格の目安
- 40L 前後の袋。株元に 3〜5cm の厚さで敷きます。
- 数量の目安
- 株元の直径 40cm 分で 5L 前後。
土に布団をかけるのと同じです。春には鋤き込めば土壌改良材にもなり、片付けが要りません。
- 不織布(べたがけ用)探す言葉「不織布 防寒 べたがけ」
- 規格の目安
- 目付 20〜30g/㎡。厚いほど保温しますが、光も遮ります。
かけたまま水をやれて、日中の光も通します。ビニールと違い、内側が蒸れません。
- 鉢用の断熱材探す言葉「発泡スチロール 鉢 保温」
- 規格の目安
- 発泡スチロールの箱か、鉢を包むプチプチ。
鉢は地面より先に凍ります。地面に直に置くか、鉢ごと包むかで越冬できるかが変わります。
- 球根の保存ネット探す言葉「球根 保存 ネット袋」
- 規格の目安
- 目の粗いネット袋。
寒さに弱い球根は掘り上げて越冬させます。風の通るところに吊るし、密閉しません。
- 耐寒性のある宿根草は、地上部が枯れても根は生きています。掘り上げずに株元を覆うだけで足ります。
- ビニールで覆いっぱなしにすると、晴れた日に蒸れます。不織布のほうが失敗しません。
チューリップの長く咲かせるコツは作物ページに
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