一年の山は七月と八月
ワサビは春と秋によく育ち、冬は静かに耐え、夏に弱ります。ですから一年の作業は、春と秋にしっかり育てて株を太らせ、夏は無理をさせずにやり過ごす、という組み立てになります。
植え付けと植え替えは、生育のよい春と秋に行います。真夏と真冬に株をいじると根が動かず、そのまま枯れることが多いので避けます。作業をする月をあらかじめ決めておくと、無駄に触らずに済みます。
| 時期 | 株の状態 | やること |
|---|---|---|
| 3月〜5月 | 新しい葉が次々出る | 植え付け、収穫、追肥 |
| 6月〜9月中旬 | 暑さで生育が止まる | 遮光と水やりだけ |
| 9月下旬〜11月 | 再び葉が伸びる | 植え付け、株分け、収穫 |
| 12月〜2月 | 葉が減って休む | 乾かさない、霜柱を直す |
月別のやることカレンダー
関東平野部の屋外の日陰を目安にした一覧です。ワサビは手をかける時期が春と秋に偏っていて、夏はむしろ何もしないことが仕事になります。
毎年の記録を残すと、自分の家のどこが暑くなるかが見えてきます。枯れた年と越せた年の置き場所を比べれば、翌年の場所選びがはっきりします。
| 月 | 作業 | 要点 |
|---|---|---|
| 3月 | 植え付け、株分け、花芽の収穫 | 花ワサビが穫れる時期 |
| 4月〜5月 | 葉と葉柄の収穫、追肥 | いちばんよく育つ時期 |
| 6月 | 遮光の準備、敷きわら | 梅雨の蒸れに注意 |
| 7月〜8月 | 水やりと遮光だけ | 肥料も株いじりもしない |
| 9月 | 傷んだ葉の整理 | 涼しくなったら追肥を再開 |
| 10月〜11月 | 植え付け、株分け、収穫 | 春に次ぐ好期 |
| 12月〜2月 | 乾かさない管理 | 霜柱で浮いたら押さえる |
春は収穫と株づくりの季節
三月になると株の中心から花茎が伸びます。これが花ワサビで、つぼみのうちに摘んで湯通しし、しょうゆ漬けにすると独特の辛みが立ちます。摘むことで株の力が葉に回ります。
四月から五月は葉柄が太る時期です。外側から順に収穫し、追肥(育ちの途中で足す肥料)を月に一度添えます。ここで株を太らせておくと、夏を越す力になります。
- 花茎はつぼみのうちに摘む
- 花が開く前に根元から抜き取ります。放っておくと株の力が花に取られ、葉が細くなります。
- 外葉から順に収穫する
- 葉柄が太く伸びた外側の葉から取ります。中心の若い葉を残すと、次々に新しい葉が出ます。
- 月に一度の薄い追肥
- 薄めた液体肥料を月に一回与えます。濃い肥料は根を傷めるので、規定より薄くします。
春に穫った葉柄は、その日のうちに刻んで湯通しし、しょうゆ漬けにすると辛みが立ちます。収穫と仕込みを同じ日に済ませる段取りにしておくと無駄がありません。
夏は手を出さないことが仕事
六月に入ったら遮光と敷きわらを整え、あとは水を切らさないことだけに絞ります。植え替え、株分け、肥料、大きな収穫はすべて秋まで待ちます。触るほど株は弱ります。
葉が減っても、根茎が固ければ株は生きています。あわてて水を増やしたり肥料を足したりせず、涼しい場所で静かに過ごさせるのがいちばんの手当てです。
- 六月に遮光を整える
- 梅雨のうちに遮光の布と敷きわらを用意して張ります。暑くなってから慌てて用意しても間に合いません。
- 朝夕に水を与える
- 土の表面を乾かさないよう朝と夕方に与えます。昼は与えず、周りへの打ち水にとどめます。
- 枯れ葉だけ取り除く
- 傷んだ葉だけを付け根から外して持ち出します。それ以外の作業はせず、株を静かにしておくのが夏の管理です。
- 日陰の温度を測る
- 温度計を株の脇に置き、昼の温度を見ます。三十度を超える日が続くようなら、もっと涼しい場所へ移します。
夏に株が消えても、秋まで鉢を捨てずに置いておくと芽が出てくることがあります。土を乾かし切らない程度に管理して待ちます。
地域で変わる作りやすさ
ワサビは涼しい地域ほど作りやすく、暖地では夏越しが難しくなります。住んでいる場所によって、期待できる年数と手当ての重さが変わります。
| 地域 | 夏越しの難しさ | 手当て |
|---|---|---|
| 寒冷地・山間部 | そのまま越せることが多い | 遮光と敷きわらだけで足りる |
| 関東平野部 | 工夫すれば越せる | 強めの遮光と朝夕の水やり |
| 暖地・都市部 | 難しい | 鉢で作り、夏は屋内の涼しい場所へ |
予定がずれたときの立て直し
植え付けが遅れた、夏に枯れ込んだ、株分けの時期を逃した。ワサビは動きの遅い植物なので、あわてて取り返そうとしないほうがうまくいきます。
- 植え付けが六月になった
- そのまま植えず、鉢のまま涼しい日陰で夏を越させ、九月下旬に植え付けます。夏の植え付けは失敗します。
- 夏に葉が全部枯れた
- 根茎が固ければ生きています。水を控えめにして涼しい場所に置き、九月の芽出しを待ちます。
- 株分けの時期を逃した
- 無理に分けず、翌年の春まで待ちます。込み合った株は葉を整理して風を通しておきます。
- 秋になっても葉が出ない
- 根茎を掘って確かめます。固い部分が残っていれば植え直し、全部が柔らかければ苗を買い直します。
ワサビの栽培に一年を通して使うもの
作業のたびに買い足すより、季節の前にまとめて用意しておくほうが結局は安く済みます。一年を通して使うのは、次の 4 つです。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 牛ふん」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥かバーク堆肥。40L 前後の袋で売られています。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
土の粒をつなぐのは微生物の働きで、その餌になるのが堆肥です。未熟なものは根を傷めるので「完熟」と書かれたものを選びます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状のものが扱いやすく、風のある日でも舞いません。1〜20kg 袋。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。1kg 袋で数畝ぶん。
日本の土は雨で酸性に傾きます。**必要な量は土質で 3 倍ほど違い**、黒ボク土は砂質土よりずっと多く要ります。入れすぎると今度はアルカリ性に寄りすぎるので、pH を測ってから決めます。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8」
- 規格の目安
- 窒素・リン酸・カリが同じ比率の粒状。まず 1 袋あればほとんどの野菜に使えます。
- 数量の目安
- 元肥は 1 ㎡あたり 100g、畝 1 本で 150〜200g。追肥は 1 回 1 ㎡あたり 30〜50g。
種類を増やすより、切らさないほうが効きます。作物ごとの正確な量は都道府県が施肥基準として公表しているので、量を詰めたくなったらそちらを見てください。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が楽です。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。50m 巻きなら 10 畝以上。
地温を上げ、雨のはね返りと雑草を抑えます。夏の高温期だけは、地温が上がりすぎるので白黒マルチに替える手もあります。
- 土壌改良材のセット買いは要りません。堆肥と石灰と元肥の 3 つで足ります。
- 連作していない畑なら、土壌消毒剤は要りません。
ワサビの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はワサビの育て方にまとめています。
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