危険な時期は最初の3週間に集中する
ハクサイの被害は、播種から定植後3週間ほどのあいだにほとんど決まります。まだ葉が柔らかく株が小さいこの時期は、害虫にとって最も食べやすく、生長点を一度失えばその株は二度と結球(葉が内側に巻いて玉になること)しません。逆に外葉が立ち上がって株が大きくなれば、多少の食害では玉になります。
つまり防除の設計は、この3週間を物理的にどう守るかという一点に集約されます。時期をずらして薬を足すより、覆いを最初から正しくかけるほうが確実です。
| 時期 | 警戒する相手 | 被害の出方 |
|---|---|---|
| 育苗中 | コナガ、アオムシ | 芯を食われ、植えても結球しない |
| 定植〜2週間 | ヨトウ類、ネキリムシ | 夜間に株元を切られ、朝に苗が倒れている |
| 定植2〜4週 | アブラムシ、カブラハバチ | 葉裏で増殖、ウイルス病を媒介する |
| 結球期以降 | ヨトウの潜り込み | 球の内部を食害し、外からは分からない |
防虫ネットは植えたその日に
- かけるのは定植の当日
- 苗を植えてから翌日にかける、では遅いことがあります。産卵は植えた日の日中から始まるので、作業を一続きにします。
- 目合いは1ミリ以下
- コナガやアブラムシを止めるには目の細かいものが要ります。0.8ミリ前後を選び、粗いネットは避けます。
- 裾を完全に埋める
- 支柱にかけたら裾を土で押さえ、隙間を残しません。ネットの中に一匹入れば、天敵のいない安全な部屋を用意したことになります。
- 開けるのは短時間で
- 追肥(育てている途中で足す肥料)や見回りで開けたら、その場で閉じます。開けたまま作業を続けると、その間に産卵されます。
- 外す時期
- 株がネットに押されるほど大きくなり、気温が下がって虫が減ったら外します。無理に当て続けると葉が擦れて傷みます。
ネットをかける前に、苗にすでに卵や幼虫がついていないか葉裏を確認します。中に閉じ込めると被害はかえって大きくなります。
軟腐病は傷と過湿から入る
- 高畝で水を抜く
- 畝を10〜20センチに上げ、雨後に水がたまらないようにします。軟腐病の細菌は水の中を移動して株元の傷から侵入します。
- 株元を傷つけない
- 中耕や収穫作業で下葉や株元を折らないよう気をつけます。害虫の食害痕も入口になるので、虫の防除がそのまま病気の予防になります。
- 肥料を株元に置かない
- 追肥は株元ではなく畝の肩にまきます。株元に肥料が残ると葉が焼けて傷み、その傷が細菌の入口になります。まいたあとは軽く土と混ぜます。
- 出た株は畑から出す
- 腐って悪臭のある株は掘り上げて処分します。畑に埋めたり放置したりすると菌が残り、周囲の株へ広がります。
軟腐病は高温多湿の年に増えます。まきどきが早すぎた年ほど発生しやすいので、播種を遅らせることも立派な防除です。
根こぶ病は土の設計で防ぐ
- 輪作を2〜3年空ける
- アブラナ科を続けると土中の菌密度が上がります。ハクサイの後はマメ科やイネ科など、他の科を挟みます。
- ペーハーを上げる
- 根こぶ病菌は酸性土壌で活発になります。苦土石灰でペーハー6.5前後まで上げると発病がかなり抑えられます。
- 排水を良くする
- 菌の遊走子は水中を泳ぎます。水はけの悪い畑では高畝と溝切りが最も効く対策になります。
- 抵抗性品種を使う
- 過去に発生した畑では、根こぶ病抵抗性のある品種を選びます。土の対策と組み合わせて初めて効果が出ます。
- 道具と靴で運ばない
- 発病した区画で使った鍬や長靴に土がつきます。健全な畝へ入る前に土を落とすだけでも広がりを抑えられます。
見回りは葉裏と芯を見る
- 週2回、葉の裏を見る
- アブラムシもコナガの幼虫も葉の裏にいます。表から見て穴を見つけたときには、すでに数が増えています。
- 芯の中をのぞく
- 中心の若い葉が食われていないか確認します。芯の被害は外からは分かりにくく、結球期になって初めて気づくことが多い被害です。
- 朝に倒れた株を探す
- 地際で切られた株はネキリムシです。その株の周囲の土を数センチ掘ると、丸まった幼虫が見つかります。
- 記録を残す
- いつ何が出たかを控えておくと、翌年の防除の開始日を決められます。虫の出方は畑ごとにかなり違います。
出てしまったあとの切り分けと手当て
| 症状 | 考えられる相手 | その後どうするか |
|---|---|---|
| 日中だけしおれ、夕方戻る | 根こぶ病の初期 | 抜いて根を確認。こぶがあれば次作はアブラナ科を避ける |
| 株元がぬめって悪臭 | 軟腐病 | 即座に抜いて畑外へ。周囲の株の株元は乾かす |
| 葉に細かい穴が多数 | コナガの幼虫 | 葉裏を探して捕殺し、ネットの隙間を点検する |
| 芯が消えて葉だけ残る | ヨトウ類の食害 | 結球は望めない。株を抜いて予備苗に入れ替える |
| 葉が縮れて光沢がなく縁が巻く | アブラムシの多発とウイルス病 | 水で流し落とし、縮れが戻らない株は抜いて畑外へ出す |
| 内葉の縁だけ内側から茶色い | カルシウム欠乏による縁腐れ | 施肥を止め乾かさない。病気ではないので周囲へは移らない |
1株だけの異常でも、原因が土の病気なら畑全体の設計の問題です。抜いた株の根を必ず見てから処分します。
防除は順序で考える
- 1 作型で避ける
- 最も効くのは播種を適期の遅い側へ寄せ、害虫の発生盛期をずらすことです。数日の違いで被害量が変わります。
- 2 土で避ける
- 石灰でペーハーを上げ、高畝で排水を確保し、アブラナ科を輪作から外します。土の病気は薬では取り返せません。
- 3 覆いで防ぐ
- 定植当日から目の細かい防虫ネットで覆い、裾を埋めます。家庭菜園ではこれが最も費用対効果の高い手段です。
- 4 見つけて取る
- 週2回の見回りで葉裏と芯を確認し、卵塊と幼虫を取ります。数が少ないうちなら手作業で十分間に合います。
この順序を飛ばして最後の手段から始めると、毎年同じ被害を繰り返します。畑の設計を直すほうが結果として楽になります。
ハクサイの収穫までのコツは作物ページに
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