食用のいもを植えてはいけない理由
台所に転がしておいた食用のいもからも芽は出ますが、植え付けには向きません。種いもとして流通するものは、ウイルス病やそうか病の検査を通った検査合格証つきで、畑に病気を持ち込む危険があらかじめ抑えられています。
食用いもは発芽を遅らせる処理がされていることがあり、芽の出方がそろいません。またウイルスに感染していても外見ではまず分からず、症状のないまま収量だけが落ち、翌年以降まで畑に病気を残します。種いもは一キログラムで数百円ですから、ここは節約する場所ではありません。
| 入手先 | 病気の検査 | 向く用途 |
|---|---|---|
| 種苗店や通販の種いも | 検査を受けている | 植え付け |
| 食用として売られたいも | 検査を受けていない | 食べる |
| 前年に自分で採ったいも | 受けていない | 食べる |
| 近所からもらったいも | 不明 | 食べる |
検査合格証は購入時の袋についています。捨てずに収穫まで取っておくと、品種名と入手先をあとから確認でき、翌年の比較に使えます。
品種は用途と作型で選ぶ
同じ育て方をしても、粉質の品種はほくほくと崩れ、粘質の品種は煮ても形が残ります。家庭菜園では収量よりも、作りたい料理と、春と秋のどちらに植えるかで選ぶほうが、結局は満足度が高くなります。
| 品種 | 肉質と味 | 向く作型 |
|---|---|---|
| 男爵いも | 粉質でほくほく、煮くずれしやすい | 春植え |
| キタアカリ | 粉質で甘みが強い、早生 | 春植え |
| メークイン | 粘質で煮くずれしにくい | 春植え |
| デジマ、ニシユタカ | やや粘質でくせがない | 春植えと秋植え |
秋植えができるのは休眠の浅い品種に限られます。春に出回る種いもをそのまま秋にも使えるとは考えないでください。
浴光育芽で芽を短く太らせる
植え付けの二十日から三十日前に、種いもを日の当たる涼しい場所へ一段に並べます。摂氏十五度から二十度で光に当てると、芽が長く伸びずに黒緑色で太く締まった状態になります。この作業を浴光育芽と呼びます。
暗い場所に置いたままだと芽は白く細長く伸び、植え付けのときに簡単に折れます。折れた代わりに出てくる芽は勢いが弱く、出芽が一週間ほど遅れて、その分だけ収穫も遅れます。
- 置き場所
- 直射日光が当たり、雨のかからない軒下が適します。夜間に凍る場所は避け、冷え込む晩は新聞紙を一枚かけて霜よけにします。
- 並べ方
- 重ねずに一段で、へこみの多い側を下にして並べます。十日ほどで上下と場所を入れ替えると、芽の出方が全体でそろいます。
- 仕上がりの目安
- 芽の長さが五ミリから十ミリ、色が濃い紫や緑になれば十分です。二センチを超えて伸びる前に植え付けます。
切るか丸ごと植えるかの判断
一片が四十グラムから六十グラムになるように分けるのが基本です。これより小さいと初期の生育を支える養分が足りず、茎が細く葉の数も増えません。逆に大きすぎても芽の数が増えるだけで、収量はそれに比例しては増えません。
丸ごと植えられる小さめの種いもは、切り口がないぶん腐敗の危険がほとんどありません。植え付けが初めての方や、地温の高い秋作にはこちらが向きます。ただし重さあたりの単価は上がります。
| 種いもの重さ | 分け方 | 切る向き |
|---|---|---|
| 四十グラム未満 | 切らずに丸ごと | 切らない |
| 四十から八十グラム | 二分割 | 縦に二つ割り |
| 八十から百二十グラム | 三分割 | 頂部から放射状に |
| 百二十グラム以上 | 四分割 | 縦の十文字 |
頂部からへこみへ縦に切り、切り口を乾かす
いもには茎とつながっていたへこみ側と、その反対の頂部があります。芽は頂部に集中しており、頂部寄りの芽ほど勢いが強い性質があります。横に切ると芽のほとんどない片ができてしまうため、必ず頂部からへこみ側へ向けて縦に切ります。
切ったままの湿った面を土に触れさせると、地温が低い時期ほど腐りやすくなります。風通しのよい日陰に切り口を上にして二日から三日置き、面が乾いて薄い膜ができてから植えるのが確実です。
草木灰をまぶす方法は昔から行われています。水分を吸って乾燥を早め、灰のカリ分が加わる利点がありますが、切ったばかりの濡れた面に厚くつけると、かえって乾きが遅れます。灰は薄く、切り口が半乾きになってからが安全です。
- 包丁の消毒
- 一個切るごとに刃を火であぶるか、消毒用アルコールでふきます。ウイルス病は切り口の汁で次のいもへ移るため、これだけで感染の連鎖を断てます。
- 切る向き
- 頂部を上にして置き、上から下へ一気に切り下ろします。各片に芽が二つから三つ入るように分けると、出芽がそろいます。
- 切る時期
- 植え付け当日でも構いませんが、二日から三日前に切って乾かすほうが腐敗は明らかに減ります。
- 置く場所
- 雨の当たらない日陰で、風の通る場所に切り口を上にして並べます。日なたでは表面だけが縮み、内側は湿ったまま残ります。
- かかる日数
- 春の気温なら二日から三日、冷え込む時期は四日ほどかかります。指で触れて湿り気を感じなくなれば十分です。
- 灰を使うなら
- 切り口が半乾きになってから薄くまぶします。濡れた面に厚くつけると水分が閉じこめられ、かえって乾きが遅れます。
雨続きで乾かす時間が取れないときは、無理に切らず、丸ごと植えられる小さい種いもへ買い替える判断も有効です。
秋植えは切らないのが原則
秋植えは八月下旬から九月に植えるため、地温が二十五度を超えていることがあります。この条件では切り口が乾く前に細菌が入り、種いもが溶けるように腐ります。秋作では三十グラムから五十グラムの小さい種いもを、切らずに丸ごと植えます。
手元に大きい種いもしかない場合は、切ってから一週間ほど日陰でしっかり乾かし、切り口が茶色く固まってから植えます。それでも春植えより腐敗の危険は高いままなので、株数を少し多めに見込んでおきます。
| 項目 | 春植え | 秋植え |
|---|---|---|
| 種いもの大きさ | 四十グラム以上を分割 | 三十から五十グラムを丸ごと |
| 切るかどうか | 切って二、三日乾かす | 原則として切らない |
| 覆土の深さ | 五センチから七センチ | 七センチから十センチ |
| 向く品種 | 男爵いも、メークイン | デジマ、ニシユタカ |
秋植えに向くのはデジマやニシユタカなど休眠の浅い品種です。春に収穫した男爵いもは休眠が明けておらず、秋に植えても芽が出ません。
芽が出ない、種いもが腐ったときの切り分け
植えたのに芽が出ないときは、掘り返す前に日数を確かめます。地温が七度前後なら出芽までに三週間から四週間かかることがあり、待てば出るものを掘り起こしてしまう失敗が案外多くあります。
三十日以上たっても出ない株は掘って確かめます。種いもが白く固いままなら地温が足りず、黒く溶けていれば腐敗です。どちらかが分かれば、その年に植え直すか翌年の手当てにするかを決められます。
- 植え直しの締め切り
- 中間地の春作なら四月中旬までが植え直しの限界です。それを過ぎたら株数を減らし、残った株を大きく育てる方向へ切り替えます。
- 同じ失敗を繰り返さない
- 腐敗が続いた年は、翌年から丸ごと植えられる小さい種いもに替えます。切らなければ、腐敗の入口そのものがなくなります。
| 掘って見えた状態 | 考えられる原因 | とる手当て |
|---|---|---|
| 種いもが固く芽も動かない | 地温が低すぎた | そのまま埋め戻し、二週間待つ |
| 切り口から黒く溶けている | 切り口が乾く前に植えた | 抜いて処分し、丸のまま植え直す |
| 芽が伸びて途中で折れている | 芽が長く伸びすぎていた | 株数が足りなければ植え直す |
| 芽が出たあと黒く枯れた | 遅霜に当たった | 掘らずに待つ。新しい芽が出る |
掘って確かめるのは畝の端の一株だけにします。全部を掘り返すと、まだ生きている種いもまで乾かして無駄にしてしまいます。
じゃがいもの植え付けに使うもの
植え付けの日にそろっていないと後から張り直しになるのが、マルチと防虫ネットです。苗を買う前に用意しておきます。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 穴あき 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が早いです。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。両端を埋めるぶんが要るので、畝の長さ + 1m で見ます。
地温を上げ、雨のはね返りを止め、雑草を抑えます。土からはねる泥は病気の入り口なので、病気が出やすい畑ほど効きます。
- マルチ押さえ(U 字ピン)探す言葉「マルチ押さえ ピン」
- 規格の目安
- 長さ 15cm 前後の鉄製。プラスチック製より風に強いです。
- 数量の目安
- 畝 1 本で 20〜30 本。50cm 間隔が目安。
マルチは土をかぶせて留めるのが基本ですが、風の通る場所ではピンを足さないと一晩でめくれます。
- 防虫ネット探す言葉「防虫ネット 目合い1mm」
- 規格の目安
- 目合い 1mm、幅 180cm。トンネル支柱(長さ 210cm・直径 8mm)と合わせて使います。
- 数量の目安
- ネットは畝 1 本(3m)で 4m。支柱は 50cm 間隔で 7 本。
1mm はモンシロチョウやコナガなど、卵を産みに来る蛾や蝶を止めるための目です。アブラムシやアザミウマはこれでは通ります。狙う虫で目合いを決めてください。
- 移植ごて探す言葉「移植ごて ステンレス」
- 規格の目安
- 幅 6〜8cm のステンレス製。目盛りの付いたものは植え穴の深さを見るのに使えます。
根鉢と同じ大きさの穴を掘るための道具です。柄と刃が一体になっているものは曲がりません。
- 支柱を立てない作物なら、トンネル支柱は要りません。
- 穴なしマルチをカッターで開ければ、株間の違う作物にも 1 本で使い回せます。
じゃがいもの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はじゃがいもの育て方にまとめています。
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