適期は暦ではなく地温で決まる
植え付けの適期は、土の温度が摂氏七度から十度で安定してくる時期です。これより早く植えても芽は動かず、種いもだけが冷たく湿った土の中で長く待たされ、腐敗の危険が増えます。桜の開花が一つの目安になります。
反対に遅れると、いもが太る時期が梅雨や高温期に重なります。じゃがいもの肥大は地温が二十度前後で最も進み、二十五度を超えると止まるため、遅植えは小玉の原因になります。

| 地域 | 春の植え付け | 秋の植え付け |
|---|---|---|
| 寒冷地 | 四月中旬から五月中旬 | 向かない |
| 中間地 | 三月中旬から四月上旬 | 八月下旬から九月上旬 |
| 暖地 | 二月下旬から三月中旬 | 九月上旬から九月下旬 |
石灰を入れないという土づくり
多くの野菜では植え付け前に苦土石灰をまきますが、じゃがいもでは行いません。じゃがいもは酸性寄りの土を好み、水素イオン指数で五・〇から六・〇が適します。石灰で中性に近づけると、そうか病を起こす菌が活発になります。
毎年石灰をまいている畑や、前の作で石灰を入れた区画では、じゃがいもだけ別の場所へ回すのが安全です。堆肥を入れるなら完熟したものを一平方メートルあたり二キログラムほど、植え付けの二週間前までにすき込んでおきます。
| 資材 | じゃがいもでの扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 苦土石灰、消石灰 | 入れない | そうか病の菌が活発になる |
| 未熟な堆肥、鶏ふん | 入れない | そうか病を強く助長する |
| 完熟堆肥 | 二週間前までに控えめに | 土は柔らかくなるが入れすぎない |
| 化成肥料 | 元肥として少量 | 肥料分だけを補える |
未熟な堆肥や鶏ふんはそうか病を助長します。じゃがいもの区画に限っては、堆肥を入れずに化成肥料だけで組み立てるという選択も理にかないます。
畝の高さと植え溝の深さ
畝は幅六十センチから七十センチ、高さ十センチほどの低い畝で構いません。あとで二回の土寄せ(株元へ土を寄せること)をして最終的に高さ二十五センチ以上にするので、通路側に土を取れる余地を残しておくことのほうが重要です。
- 溝を切る
- 畝の中央に深さ十五センチほどの溝をくわで切ります。底を平らにならすと、種いもの深さがそろい、出芽の時期もそろいます。
- 種いもを置く
- 切り口を下、芽の多い面を上にして置きます。切り口を上にする流儀もありますが、初期の生育は切り口を下にしたほうが安定します。
- 覆土する
- 五センチから七センチの土をかけます。浅すぎると新しいいもが地表に出て緑化し、深すぎると出芽が一週間近く遅れます。
株間と条間は収穫したい大きさで決める
株間は三十センチが標準です。詰めれば株数は増えますが一株あたりの取り分が減り、小さいいもの割合が上がります。広げれば大きく育つ代わりに、面積あたりの収量は落ちます。どちらが正解ということはなく、使い道で決めます。
二条植えにするなら条間は六十センチ以上とります。土寄せの土は条の間と通路から取るため、これより狭いと二回目の土寄せで土が足りなくなり、緑化の原因になります。
| ねらい | 株間 | 収穫の傾向 |
|---|---|---|
| 数を多く採る | 二十五センチ | 小玉が中心 |
| 標準 | 三十センチ | 中玉が中心 |
| 大きく育てる | 三十五センチ以上 | 大玉が中心 |
元肥は種いもに触れさせない
元肥(植える前に土へ混ぜておく肥料)は溝の底に敷きつめるのではなく、種いもと種いもの間に置きます。肥料が種いもに直接触れると、切り口から傷んで腐る原因になります。化成肥料なら一株あたり軽く一握りに満たない量で足ります。
じゃがいもは窒素が多すぎると茎葉ばかりが茂り、いもの太りが遅れます。前作の肥料が残っていそうな畑では元肥をあらかじめ半分に減らし、一回目の土寄せのときに葉色を見て足すほうが確実です。
- 置く位置
- 溝の底へ帯状に敷かず、種いもと種いもの中間へ点で置きます。触れさせなければ切り口が傷む心配はありません。
- 量の目安
- 化成肥料なら一平方メートルあたり百グラムから百二十グラムが標準です。前作の残り肥があれば半分から始めます。
- 薄く土をかける
- 肥料の上に二センチほど土を戻してから種いもを置くと、根が伸びてから肥料に届き、初期の傷みを避けられます。
遅霜への備えを最初から折り込む
芽が地上に出た直後に霜へ当たると、葉が黒く変色して枯れます。地下の種いもは生きているので新しい芽が出直しますが、収穫は十日から二週間遅れ、いもも小ぶりになります。
遅霜の心配が残る時期に出芽したら、土を軽くかぶせて芽を隠すか、不織布をべた掛けします。予報で翌朝の最低気温が三度を下回る日は警戒し、風のない晴れた夜ほど霜が降りやすいことも覚えておきます。
- 予報の読み方
- 翌朝の最低気温が三度を下回り、風がなく晴れる夜は霜が降ります。畑は予報地点より一、二度低いと考えて備えます。
- 当たる前の手当て
- 出芽した芽に土を軽くかぶせるか、不織布をべた掛けします。掛けた資材は朝の冷え込みが緩んでから外します。
- 当たった後の手当て
- 黒くなった葉は戻りません。株元を掘らずに待てば新しい芽が出るので、この時点で追肥(育てている途中で足す肥料)はせず、出直しを待ちます。
早く植えるほど収量が上がるわけではありません。お住まいの地域の遅霜の終わる時期を調べ、その二週間前を植え付けの上限と考えると失敗が減ります。
うまく育たないときの原因を切り分ける
じゃがいもの不調は、地温、水、肥料、霜の四つでほとんど説明がつきます。まず出芽までの日数を思い出し、次に畝の湿り具合を手で確かめ、最後に元肥の量をさかのぼるという順で見ると外しません。
植え付けのやり直しが効くのは出芽までのあいだだけです。芽が出てからの不調は、追肥や土寄せ(株元へ土を寄せること)で立て直す方向に切り替えたほうが、掘り返すより良い結果になります。
- 掘る前に日数を数える
- 出芽の遅れは病気より地温であることがほとんどです。植えた日から三十日を過ぎるまでは、掘り返さずに待つほうが確実です。
- 一株だけ掘って確かめる
- 判断がつかないときは畝の端の一株だけを掘ります。全部を掘り返すと、生きている種いもまで乾かして失います。
| 見えている症状 | 考えられる原因 | とる手当て |
|---|---|---|
| 三十日たっても芽が出ない | 地温が低い、または種いもの腐敗 | 畝の端の一株だけ掘って確かめる |
| 出芽が株ごとにばらばら | 覆土の深さがそろっていない | 土寄せのときに畝の高さをそろえる |
| 葉が黒く枯れて縮んだ | 遅霜に当たった | 掘らずに待つ。追肥はしない |
| 茎葉ばかり茂って太らない | 窒素が多すぎる | 以降の追肥を止め、土寄せで対応 |
霜で葉を失った株は、追肥で押しても戻りません。地下の種いもは生きているので、新しい芽が出るまで手を出さずに待ちます。
じゃがいもの植え付けに使うもの
植え付けの日にそろっていないと後から張り直しになるのが、マルチと防虫ネットです。苗を買う前に用意しておきます。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 穴あき 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が早いです。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。両端を埋めるぶんが要るので、畝の長さ + 1m で見ます。
地温を上げ、雨のはね返りを止め、雑草を抑えます。土からはねる泥は病気の入り口なので、病気が出やすい畑ほど効きます。
- マルチ押さえ(U 字ピン)探す言葉「マルチ押さえ ピン」
- 規格の目安
- 長さ 15cm 前後の鉄製。プラスチック製より風に強いです。
- 数量の目安
- 畝 1 本で 20〜30 本。50cm 間隔が目安。
マルチは土をかぶせて留めるのが基本ですが、風の通る場所ではピンを足さないと一晩でめくれます。
- 防虫ネット探す言葉「防虫ネット 目合い1mm」
- 規格の目安
- 目合い 1mm、幅 180cm。トンネル支柱(長さ 210cm・直径 8mm)と合わせて使います。
- 数量の目安
- ネットは畝 1 本(3m)で 4m。支柱は 50cm 間隔で 7 本。
1mm はモンシロチョウやコナガなど、卵を産みに来る蛾や蝶を止めるための目です。アブラムシやアザミウマはこれでは通ります。狙う虫で目合いを決めてください。
- 移植ごて探す言葉「移植ごて ステンレス」
- 規格の目安
- 幅 6〜8cm のステンレス製。目盛りの付いたものは植え穴の深さを見るのに使えます。
根鉢と同じ大きさの穴を掘るための道具です。柄と刃が一体になっているものは曲がりません。
- 支柱を立てない作物なら、トンネル支柱は要りません。
- 穴なしマルチをカッターで開ければ、株間の違う作物にも 1 本で使い回せます。
じゃがいもの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はじゃがいもの育て方にまとめています。
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