いびつな実は受粉不足のしるし
イチゴの実は、表面のつぶつぶ一つひとつが受粉して初めて、その周りの果肉がふくらみます。受粉できなかった部分は太らないため、先だけとがった実や、片側がへこんだ実になります。味も薄く、酸味が残りがちです。
つまり形の乱れは、病気でも肥料不足でもなく、花のときに何が起きたかを示しています。原因を開花の時期までさかのぼって考えると、次にどうすればよいかがはっきりします。
| 実の形 | 受粉できなかった場所 | 多い原因 |
|---|---|---|
| 先だけとがる | 先端側 | 低温で花粉が飛ばなかった |
| 片側がへこむ | へこんだ面 | 花が葉や壁に触れていた |
| 全体に小さく固い | ほぼ全面 | 虫がいない、雨が続いた |
| 中心が黒い実が着かない | 受粉以前 | 開花期の遅霜 |
受粉がうまくいかない条件
- 気温が低すぎる
- 花粉が出るのはおおよそ15度から25度です。朝の冷え込みが続くと花粉が飛ばず、虫も動きません。早春の一番花がいびつになりやすいのはこのためです。
- 気温が高すぎる
- 30度を超えると花粉の働きが落ちます。5月後半以降の実が小さくいびつになるのは、暑さによる受粉不良が一因です。
- 雨と多湿が続く
- 花粉がぬれると飛ばず、虫も訪れません。軒下やベランダは風も入りにくいため、屋外の畑より受粉不良が起きやすくなります。
- 訪花する虫がいない
- 都市部のベランダや、トンネル、ハウスの中には蜂が入りません。囲うほど気温と病気は安定しますが、受粉だけは人の手で補う必要があります。
- 遅霜に当たった
- 開花中に霜が降りると花の中心が黒く変わり、その花は実になりません。冷え込む夜だけ不織布をかけ、朝には外します。
人工授粉のやり方
花が開いた日の午前9時から11時ごろ、花粉が出ている時間に行います。柔らかい筆や綿棒で、花の中心の黄色い部分を軽く、円を描くようになでます。強くこすると傷になり、そこから実が変形します。
イチゴは一つの花の中に雄しべと雌しべがそろっているので、別の株の花粉を運ぶ必要はありません。ただし複数の花を同じ筆でなでると受粉率は上がります。花は開いてから2日ほど受精する力があるため、毎日でなくても間に合います。
- 時間を決める
- 晴れた日の午前中、花びらが開ききったころに行います。雨や曇りの日は花粉が湿って落ちにくいので、翌日に回します。
- 中心を円になでる
- 中心の黄色い部分の外周から内側へ、2周ほどなでます。ここに並ぶ雌しべが、あとで実の表面のつぶつぶになります。
- 花をはしごする
- 同じ筆のまま隣の花へ移ります。花粉が筆に付いた状態で回るほど、着粒がそろって形の良い実になります。
- 囲いを開ける
- トンネルやビニールで覆っているなら、暖かい日の日中だけ風が通るように開けます。虫が入り、湿気も抜けます。
筆がなければ、株全体を指で軽くはじいて揺らすだけでも効果があります。屋内やベランダでは、毎朝の習慣にすると形がそろいます。
摘花と摘果で大きさをそろえる
一つの花房には10個前後の花が順に咲きますが、後から咲く花ほど実は小さくなります。花房あたり4個から6個に絞ると、残した実が大きく育ち、形もそろいます。
植え付けた年の秋から冬に咲く花は、株が小さいうちの消耗になるので摘み取ります。株を太らせて春の花房へ力を集めたほうが、最終的な収穫量は増えます。
| 時期 | 花や実の扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 10月から12月 | 咲いた花はすべて摘む | 根と株を太らせる |
| 3月の一番花 | 残す | 最も大きい実になる |
| 4月以降の花房 | 4個から6個に絞る | 粒の大きさをそろえる |
| いびつな幼果 | 早めに取る | 残す実へ養分を回す |
摘むのは花房の先のほうにある小さなつぼみです。手で引くと株が揺れて根が動くため、はさみで花柄を切ります。
実がつかない、太らないときの見直し
花は咲くのに実にならない場合、まず疑うのは受粉ですが、窒素過多も原因になります。葉が大きく濃い緑で茂っているのに実が小さいなら、追肥(育てている途中で足す肥料)をいったん止めて様子を見ます。
花自体が出ない場合は、前の秋の花芽分化(翌年の花のもとが枝の中にできること)に問題があったと考えます。植え付けが遅れた、秋に肥料が効きすぎた、暖かい場所で冬を越して低温が足りなかった、のいずれかが多い原因です。
| 起きていること | さかのぼる時期 | 次の年に変えること |
|---|---|---|
| 花が咲かない | 前年9月から10月 | 肥料を切って乾かし気味にする |
| 花房が短く花が少ない | 植え付け時 | クラウンの太い苗を選ぶ |
| 咲くが実が太らない | 開花期 | 人工授粉と摘花を行う |
| 葉ばかり茂る | 2月から4月 | 追肥を薄く、回数で調整する |
受粉から収穫までの日数
受粉から収穫までは、気温によって30日から45日ほどかかります。春先の低温期は長く、5月の暖かい時期は短くなります。日ごとに見て、ヘタの際まで赤く色づいてから採ると甘さが違います。
イチゴは採ったあとに甘くならないので、早採りは損です。ただし完熟させすぎると灰色かび病の入り口になるため、雨が続く予報のときは少し早めに採り、その日のうちに食べるほうが確実です。
| 開花の時期 | 収穫までの日数 | 採るときの目安 |
|---|---|---|
| 3月から4月上旬 | 40日から45日 | ヘタの際まで赤い |
| 4月中旬から5月 | 30日から35日 | 全体が濃く色づく |
| 雨の予報の前 | 数日早める | 先端まで色づいたら採る |
朝の涼しいうちに採ると日もちがよくなります。日中の暑い時間に採った実は、その日のうちに傷みやすくなります。
イチゴの人工授粉に使うもの
かぼちゃやすいかのように、朝の数時間しか受粉できない作物があります。虫が来ない年でも実を付けるための道具です。
- 授粉用の毛ばたき・綿棒探す言葉「人工授粉 毛ばたき 園芸」
- 規格の目安
- 柔らかい毛のはたきか、普通の綿棒。
雄花の花粉を雌花の柱頭へ付けます。強くこすらず、撫でる程度で十分です。
- 園芸ラベル探す言葉「園芸 ラベル 差し込み」
- 規格の目安
- 差し込み式、長さ 10cm 前後。
受粉した日を書いて実の近くに挿しておくと、収穫の適期を日数で判断できます。かぼちゃやすいかはここを外すと大きく味が変わります。
- 不織布(べたがけ用)探す言葉「不織布 べたがけ 農業用」
- 規格の目安
- 目付 20g/㎡ 前後。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。
雨の日の朝は花粉が流れます。前の晩にかけておくと、翌朝の受粉に間に合います。
- 虫がよく来る畑なら、人工授粉は要りません。まず朝に花を見に行って確かめます。
- 雄花を摘んで雌花に直接付ければ、道具は何も要りません。
イチゴの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はイチゴの育て方にまとめています。
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