一年の流れをつかむ
イチゴは秋に植えて春に採る、期間の長い作物です。秋は根を張らせる時期、冬は休眠して低温を受ける時期、春は花と実に力を使う時期、初夏は来年の苗を採る時期と、季節ごとに役割がはっきり分かれています。
失敗の多くは時期の取り違えです。冬に肥料を与える、秋に黒マルチを張る、収穫中にランナーを伸ばす。いずれも次の季節の結果を落とします。月ごとに、やることとやらないことを決めておくと安定します。
| 月 | 主な作業 | 注意すること |
|---|---|---|
| 9月 | 土づくり、苗の手配 | 石灰と窒素を入れすぎない |
| 10月 | 植え付け、たっぷり潅水 | クラウンを埋めない、向きをそろえる |
| 11月 | 活着の確認、秋の花を摘む | 追肥はしない |
| 12月 | 古葉かき、黒マルチ張り | もみ殻を敷いて霜柱を防ぐ |
| 1月 | 見回りのみ | 休眠中。株を動かさない |
| 2月 | 追肥、二度目の古葉かき | 新葉が動き出す前に施す |
| 3月 | 開花始め、防寒資材を外す | 遅霜の夜は花に不織布をかける |
| 4月 | 人工授粉、摘花、暖地は収穫開始 | 灰色かび病の予防を始める |
| 5月 | 収穫最盛、液肥を薄く追肥 | 傷んだ実を毎日取り除く |
| 6月 | 収穫終了、ランナーが発生 | 親株にする株を決める |
| 7月 | 子株をポットで受ける | 太郎苗は苗に使わない |
| 8月 | 子株の管理、親株の処分 | 乾燥と高温で枯らさない |
秋は根を作る季節
9月は土づくりと苗の手配に充てます。堆肥は植え付けの2週間前までに入れ、元肥(植える前に土へ混ぜておく肥料)は控えめにします。良い苗は10月に品薄になるので、欲しい品種があるなら早めに確保しておきます。
10月に植えたら、11月はほとんど何もしません。やることは活着の確認と、秋に咲いてしまった花を摘むことだけです。追肥(育てている途中で足す肥料)をすると葉が茂り、休眠の入りが悪くなります。
- 9月にやらないこと
- 苗に肥料を効かせ続けないことです。窒素が体内に残っていると花芽ができにくく、葉ばかりの株のまま冬に入ります。
- 10月の一日仕事
- 畝立て、マルチなしの植え付け、たっぷりの潅水までを同じ日に終えます。根鉢が乾いた状態で夜を越すと活着が遅れます。
- 11月の見回り
- 新しい葉が1枚でも出ていれば活着しています。出ていない株は、クラウンが埋まっていないかを株元を掘って確かめます。
植え付け直後だけはたっぷり水を与えます。以降は乾いたときだけにし、常に湿った状態を作らないようにします。
冬は休ませて締める季節
12月は古葉かきと黒マルチ張りの月です。枯れ葉を残すと灰色かび病の菌が越冬するので、株元をすっきりさせてからマルチを張ります。1月は原則として見回るだけで、株に手を入れません。
2月中旬から下旬に追肥を行い、春へ切り替えます。新葉が動き出す少し前という時期が肝心で、早すぎれば吸えず、遅ければ花房の充実に間に合いません。
| 月 | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| 12月 | 古葉かき、マルチ、もみ殻 | 追肥、株の植え替え |
| 1月 | 霜柱で浮いた株を戻す | 水やり、葉をかく |
| 2月 | 古葉かき、追肥 | 不織布を張ったままにする |
春は花と実に集中する季節
3月は防寒資材を外し、花が咲き始めます。遅霜に当たると花の中心が黒くなり、その花は実になりません。冷え込む夜だけ不織布をかけ、朝には外します。
4月から5月が収穫期です。人工授粉と摘花で形と大きさをそろえ、傷んだ実は毎日取り除きます。追肥は薄い液肥を2週間おき程度にとどめ、葉を茂らせすぎないようにします。
- 3月は霜だけ見る
- 翌朝の最低気温が3度を下回る予報の夜は、花の上へ不織布をかけます。朝に外さないと日中に蒸れ、受粉する虫も入りません。
- 4月は毎朝の受粉
- 開いた花を筆でなでる作業を、朝の見回りに組み込みます。同時にいびつな幼果を落とすと、残した実がそろいます。
- 5月は傷んだ実を出す
- かびた実を一つ残すと隣へ移ります。採る作業と同じ回数だけ、傷んだ実を畑の外へ持ち出します。
収穫中に出るランナーは根元から切ります。実に回るはずの養分を取られ、粒が小さくなるためです。
初夏は来年の苗を採る季節
6月に収穫が終わったら、ランナーを切るのをやめて伸ばします。実つきと味が良く、病気の出なかった株を親株に選び、印をつけておきます。ここでの選び方が翌年の出来を決めます。
7月にポットで子株を受け、3週間ほどで切り離します。8月は暑さと乾燥との勝負で、半日陰に置いて水を切らさないようにします。9月に入ったら肥料を止め、やや乾かし気味に管理します。
| 月 | 苗づくりの作業 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 6月 | 親株を選び、ランナーを伸ばす | 病気の出た株を選んでしまう |
| 7月 | 子株をポットで受ける | 根が回る前に切り離す |
| 8月 | 半日陰で水を切らさない | 受け皿の水が熱くなる |
| 9月 | 肥料を止めて締める | 肥料が残り葉だけ茂る |
地域による前後のずれ
ここまでの月は中間地を基準にしています。暖地は植え付けと収穫がやや早く、寒冷地は植え付けを前倒しにして、収穫は遅くなります。採苗の時期は地域差が比較的小さく、収穫終了の時期に合わせます。
| 地域 | 植え付け | 収穫 | 採苗 |
|---|---|---|---|
| 暖地 | 10月中旬〜下旬 | 4月中旬〜5月下旬 | 6月〜7月 |
| 中間地 | 10月上旬〜中旬 | 5月上旬〜6月上旬 | 6月下旬〜7月 |
| 寒冷地 | 9月下旬〜10月上旬 | 5月下旬〜6月下旬 | 7月〜8月上旬 |
四季なりの品種は暦が異なり、5月から10月まで断続的に採れます。夏が涼しい地域ほど採れる期間が長くなります。
うまくいかなかったときの切り分け
一年の結果は、たいてい前の年の秋に決まっています。春に実が採れなかったときは、その春の手入れではなく、植え付けの時期と苗の太さをさかのぼって見直します。
| 起きたこと | 主な原因 | 翌年に変えること |
|---|---|---|
| 春になっても花が咲かない | 秋の植え付けが遅れた | 十月上旬までに植え終える |
| 葉ばかり茂って実がつかない | 窒素が効きすぎている | 元肥を減らし追肥は二月だけ |
| 実が小さく数も少ない | 親株が弱く苗が細い | 実つきのよい株から苗を採る |
| 採る前に実がかびる | 多湿と泥はねが続いた | マルチを張り株間を広げる |
記録に残すのは植え付け日、最初の花が咲いた日、採り始めた日の三つで足ります。翌年の遅れ進みがこれで分かります。
イチゴの栽培に一年を通して使うもの
作業のたびに買い足すより、季節の前にまとめて用意しておくほうが結局は安く済みます。一年を通して使うのは、次の 4 つです。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 牛ふん」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥かバーク堆肥。40L 前後の袋で売られています。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
土の粒をつなぐのは微生物の働きで、その餌になるのが堆肥です。未熟なものは根を傷めるので「完熟」と書かれたものを選びます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状のものが扱いやすく、風のある日でも舞いません。1〜20kg 袋。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。1kg 袋で数畝ぶん。
日本の土は雨で酸性に傾きます。**必要な量は土質で 3 倍ほど違い**、黒ボク土は砂質土よりずっと多く要ります。入れすぎると今度はアルカリ性に寄りすぎるので、pH を測ってから決めます。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8」
- 規格の目安
- 窒素・リン酸・カリが同じ比率の粒状。まず 1 袋あればほとんどの野菜に使えます。
- 数量の目安
- 元肥は 1 ㎡あたり 100g、畝 1 本で 150〜200g。追肥は 1 回 1 ㎡あたり 30〜50g。
種類を増やすより、切らさないほうが効きます。作物ごとの正確な量は都道府県が施肥基準として公表しているので、量を詰めたくなったらそちらを見てください。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が楽です。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。50m 巻きなら 10 畝以上。
地温を上げ、雨のはね返りと雑草を抑えます。夏の高温期だけは、地温が上がりすぎるので白黒マルチに替える手もあります。
- 土壌改良材のセット買いは要りません。堆肥と石灰と元肥の 3 つで足ります。
- 連作していない畑なら、土壌消毒剤は要りません。
イチゴの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はイチゴの育て方にまとめています。
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