苗は背丈ではなく茎の太さで選ぶ
売り場では背の高い苗が立派に見えますが、ナスで見るべきは茎の太さと節と節の間隔です。茎が鉛筆より細く、葉と葉の間が間のびした苗は光が足りない環境で育っており、定植しても根の張りが茎の伸びに追いつかず、初期の生育が止まりがちです。
もう一つの基準が一番花です。つぼみが見えているか、咲きかけている苗は花芽の分化が済んでおり、活着から着果までが短くて済みます。反対に、すでに一番果が親指ほどに肥大している苗は、小さな根鉢のまま実に養分を取られているので、その実を取り除いてから植えるつもりで選びます。

- 茎の太さ
- 地際の茎が鉛筆と同じか、それより太いものを選びます。子葉の位置が低く、株全体がずんぐりして見えるほど、詰まった環境で育った良い苗です。
- 葉の色と厚み
- 濃すぎない緑で、葉が厚く水平に開いているものを選びます。下葉が黄ばんでいる、葉裏に細かい白い斑点がある、かすり状の食害痕があるものは持ち帰りません。
- 根鉢の状態
- ポットの底穴から白い根がわずかにのぞく程度が適期です。根が茶色く渦を巻いて固まった老化苗は、植えても新しい根が出るまでに時間がかかります。
接ぎ木苗をすすめる理由
ナスで家庭菜園の失敗が最も多いのは、真夏に急に株がしおれて枯れる青枯病と、片側の葉から順に黄変してしなびる半身萎凋病です。どちらも土の中の病原菌が根から入る土壌伝染性の病気で、発病してから治す手立てがありません。
接ぎ木苗はこれらに強い台木の根を使うため、同じ畑でも発病がぐんと減ります。実生苗の二倍から三倍の価格ですが、家庭菜園で植えるのは二株から四株程度でしょうから、差額は数百円です。狭い畑でナス科を毎年作らざるを得ない方ほど、ここは接ぎ木苗を選ぶ価値があります。
接ぎ木部位は必ず地上に出して植えます。土に埋まると穂木から自分の根が出て、台木の抵抗性が働かなくなります。
植え付けは日付でなく地温で決める
ナスはトマトやキュウリより高温を好み、生育に適した気温は昼25度から30度、夜は18度前後です。地温が15度を下回る時期に植えると、根が水を吸い上げられず葉が紫がかって固まり、その後の一か月をほぼ棒に振ります。最低気温が10度を下回らなくなってからが目安です。
| 地域 | 植え付けの目安 | 保温 |
|---|---|---|
| 暖地 | 4月下旬〜5月中旬 | 風よけ程度で可 |
| 中間地 | 5月上旬〜下旬 | 定植後2週間はあんどん |
| 寒冷地 | 5月下旬〜6月中旬 | ホットキャップか穴あきトンネル |
あんどんは肥料袋やペットボトルで囲うだけで十分です。地温を上げるより、遅霜と風で葉が傷むのを防ぐ意味が大きい設備です。
土づくりは深さと株間で決まる
ナスは根を深く広く張り、真夏に一日で数リットルの水を吸います。表層だけ耕した畑では、梅雨明けとともに水を切らし、実がつやを失って硬くなります。植え付けの二週間前から、深さ30センチまで起こしておきます。
ナス科の連作は青枯病と半身萎凋病の発生率をはっきり上げます。前作がナス、トマト、ピーマン、ジャガイモだった場所は3年から4年あけるのが原則で、あけられないときは接ぎ木苗を使い、堆肥を多めに入れて土の微生物相を保ちます。
- 2週間前
- 1平方メートルあたり苦土石灰を100グラムから150グラムまいて深く耕します。土壌酸度はペーハー6.0から6.5が適正で、酸性に傾くと根の伸びが鈍ります。
- 1週間前
- 完熟堆肥を1平方メートルあたり2キログラムから3キログラム、化成肥料を100グラムから150グラム入れて混ぜ、幅60センチ、高さ10センチから15センチの畝を立てます。
- 植え付け当日
- 株間は50センチから60センチ取ります。ナスは枝を大きく横へ広げるので、株間を詰めると夏に株の内側が日陰になり、実の色が薄く傷みやすくなります。
植え付けの手順
- 植え穴に先に水を入れる
- 穴を掘ってから水を注ぎ、引くのを待って苗を置きます。植えてから上から水をかけるより、根鉢の周囲がむらなく湿り、活着が数日早まります。
- 浅めに置く
- 根鉢の表面が畝面と同じか、ほんの少し高くなる位置に据えます。深植えは接ぎ木部位が埋まるうえ、地温の低い層に根鉢が入って初期の伸びを落とします。
- 仮支柱で固定する
- 長さ60センチほどの支柱を株から少し離して斜めに挿し、茎を8の字にゆるく結びます。風で株が揺れて根が切れると、そこから活着がやり直しになります。
- 根元を覆う
- 黒マルチか敷きわらで株元を覆います。地温の確保、土のはね返りによる病気の予防、乾燥の抑制を一度に済ませられます。
植え付け後2週間の見方
活着したかどうかは、朝の葉の張りで判断します。日中しおれても翌朝に戻っていれば根は動いています。新しい葉が展開し始めたら活着完了で、ここから水やりの間隔を少しずつあけ、根を深くへ誘導します。
この時期に肥料を追加する必要はありません。元肥(植える前に土へ混ぜておく肥料)が効いているうえ、活着前の株に追肥(育てている途中で足す肥料)をしても吸えず、かえって根を傷めます。追肥を始めるのは一番果を収穫したあとです。
- 1週目
- 水は株元にたっぷり、2日から3日に1回。日中しおれても翌朝に張りが戻っていれば根は動いています。追肥は入れません。
- 2週目
- 新しい葉が展開したら活着です。仮支柱の結び目を確かめ、伸びに合わせて結び直します。水やりの間隔を少しずつあけます。
- つぼみの扱い
- この時期についた一番花のつぼみは残してかまいませんが、実が親指ほどになったら早採りして株づくりを優先します。
葉が内側に巻いて濃い緑になったら肥料過多、下葉から薄い黄緑になったら不足です。色で判断すると、追肥のタイミングを外しません。
植え付け後につまずいたときの切り分け
植え付けから3週間ほどは、株が止まって見える時期があります。ナスは地温が上がるまで根を伸ばさないので、動かないこと自体は失敗ではありません。慌てて肥料を足すと逆に花が止まります。
見分けるのは葉の色と時刻による姿の変化です。下葉から黄ばむなら足りていない側、濃く縮れるなら多すぎる側、日中だけしおれるなら水の側と、三つに分けて考えます。
| 症状 | 考えられる原因 | 手当て |
|---|---|---|
| 植えて2週間、背が伸びない | 地温が低く根が動いていない | 行灯で囲い、暖かくなるまで追肥しない |
| 下葉から黄ばんで落ちる | 水切れか肥料切れ | 株元に水をやり、10日後に追肥する |
| 葉が濃く縮れ花が咲かない | 窒素が多すぎる | 追肥を止め、実がつくまで与えない |
| 日中しおれ夕方に戻る | 根が浅く表土が乾いている | 敷きわらを入れ、朝にたっぷり与える |
| 一番花が咲かずに落ちる | 低温か日照不足 | 摘み取り、次の花を待って着果させる |
植え直しの締め切りは6月上旬です。それより遅い植え替えは、樹ができる前に真夏へ入って収穫が伸びません。
ナスの植え付けに使うもの
植え付けの日にそろっていないと後から張り直しになるのが、マルチと防虫ネットです。苗を買う前に用意しておきます。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 穴あき 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が早いです。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。両端を埋めるぶんが要るので、畝の長さ + 1m で見ます。
地温を上げ、雨のはね返りを止め、雑草を抑えます。土からはねる泥は病気の入り口なので、病気が出やすい畑ほど効きます。
- マルチ押さえ(U 字ピン)探す言葉「マルチ押さえ ピン」
- 規格の目安
- 長さ 15cm 前後の鉄製。プラスチック製より風に強いです。
- 数量の目安
- 畝 1 本で 20〜30 本。50cm 間隔が目安。
マルチは土をかぶせて留めるのが基本ですが、風の通る場所ではピンを足さないと一晩でめくれます。
- 防虫ネット探す言葉「防虫ネット 目合い1mm」
- 規格の目安
- 目合い 1mm、幅 180cm。トンネル支柱(長さ 210cm・直径 8mm)と合わせて使います。
- 数量の目安
- ネットは畝 1 本(3m)で 4m。支柱は 50cm 間隔で 7 本。
1mm はモンシロチョウやコナガなど、卵を産みに来る蛾や蝶を止めるための目です。アブラムシやアザミウマはこれでは通ります。狙う虫で目合いを決めてください。
- 移植ごて探す言葉「移植ごて ステンレス」
- 規格の目安
- 幅 6〜8cm のステンレス製。目盛りの付いたものは植え穴の深さを見るのに使えます。
根鉢と同じ大きさの穴を掘るための道具です。柄と刃が一体になっているものは曲がりません。
- 支柱を立てない作物なら、トンネル支柱は要りません。
- 穴なしマルチをカッターで開ければ、株間の違う作物にも 1 本で使い回せます。
ナスの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はナスの育て方にまとめています。
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