柑橘に付くのはハエではなく蛾
野菜の葉に白い線を描くのはハモグリバエですが、みかんに付くのはミカンハモグリガという小さな蛾です。名前も跡も似ていますが別の虫で、効く薬剤も発生の出方も違います。
幼虫は柔らかい新葉の表皮の下に潜り、幅0.5〜2ミリの銀白色に光る曲がりくねった線を描きます。硬くなった葉は食べられないため、被害はつねに伸び始めの葉に集中します。
暖地では6月から10月に世代を繰り返し、多い年は8回以上発生します。春に伸びた枝の被害が少なく、夏から秋に伸びた枝に集中するのはこのためです。
| 見分ける点 | ミカンハモグリガ | ハモグリバエ |
|---|---|---|
| 分類 | 蛾の仲間 | ハエの仲間 |
| 寄生する相手 | 柑橘類だけ | 野菜や草花など幅広い |
| 食害の跡 | 銀白色で光る曲線 | 白く細い線状 |
| 葉の終わりかた | 葉先や葉の縁が巻いて縮れる | 線が広がって葉が枯れる |
樹の大きさと場面で対策を選ぶ
| 樹の大きさと場面 | まずやる対策 | 手間 | 効き目 |
|---|---|---|---|
| 実を付けている成木 | 夏秋梢を出さない管理 | 小 | 大 |
| 苗木と幼木の地植え | 伸びた新芽の摘除 | 中 | 大 |
| 1〜2年生の鉢植え | 防虫ネットで覆う | 中 | 大 |
| 発生の時期を知りたい樹 | 黄色い粘着トラップ | 小 | 小 |
| 薬剤を減らしたい成木 | 天敵の寄生蜂を残す | 小 | 中 |
| 夏秋梢が多く出る樹 | 登録のある薬剤の散布 | 大 | 大 |
| 線の入った葉が目立つ樹 | 被害葉の摘除はしない | 中 | なし |
自分の樹に当てはまる行だけを見ます。最後の被害葉の摘除は、やっても虫は減らず、樹の葉を減らすだけの作業です。
まず新梢を無駄に出さない
この虫は柔らかい新芽にしか付けません。したがって最大の対策は、夏から秋に新芽を出させないことです。手入れの行き届いた成木で被害が少ないのは、単に夏秋梢が出ていないからです。
- 強剪定をしない
- 太い枝を一度に落とすと、樹が反応して夏に徒長(間のびして弱く伸びること)枝を大量に出します。切除量は年に樹冠の1〜2割までに抑えます。
- 遅い窒素を入れない
- 7月以降の窒素の追肥(育てている途中で足す肥料)は秋の新梢を誘発します。夏肥は7月下旬までに終え、以降は収穫後のお礼肥まで窒素を足しません。
- 夏の水管理
- 乾かしたあとに一度だけ大量の水をやると、樹が急に新芽を伸ばします。夏は間隔を詰めて少量ずつに切り替えます。
- 芽の時期をそろえる
- 新芽の出る時期がばらけるほど、守るべき期間が長引きます。剪定と施肥を同じ時期にまとめ、芽出しを一斉にします。
幼木は物理的に守る
- 新芽の摘除と整理
- 苗木や幼木に出た夏秋梢は、骨格に必要な枝だけ残して指で摘み取ります。餌そのものを減らすのがいちばん確実です。
- 防虫ネットで覆う
- 鉢植えや1〜2年生の苗は、新芽が動く時期に目合い0.8〜1ミリのネットで覆います。成虫が産卵できず、被害がほぼ止まります。
- 覆うときの注意
- 夏に密閉すると高温で葉が傷みます。骨組みで葉から離して張り、朝夕に風が抜ける状態にします。開花期は外します。
- 黄色い粘着トラップ
- 樹冠の高さに数枚吊るします。捕らえて減らす道具ではなく、成虫がいつ飛び始めたかを知り、対策の開始日を決めるための道具です。
ネットは実を大きくするためのものではありません。守る対象は葉です。実を付けた成木では覆わず、摘除で対応します。
よくある失敗と被害葉の扱い
落としません。線が描かれた葉でも、残った緑の部分は光合成を続けています。みかんは常緑で葉が貯蔵養分そのものなので、葉を減らすほうが樹にとって損になります。
そもそも線が見えた時点で幼虫は葉から出て、葉の縁を巻いた中で蛹になっていることが多く、葉を取っても今年の被害は減りません。硬くなった葉に産卵されることもありません。
- 被害葉を落とした
- 線が見えた時点で幼虫は葉から出ていることが多く、落としても今年の被害は減りません。次からは葉の縁が巻いた部分だけを指でつぶします。
- 線を見てから薬をまいた
- 葉の中の幼虫に薬は届きません。新梢が伸び始めたころを目安に、線が出る前から7〜10日の間隔で処理する組み立てに変えます。
- 強く剪定して夏枝が出た
- 落とす量が多いと樹が夏に徒長枝を返します。出てしまったら骨格に要る枝だけ残して摘み取り、翌年の切除量は樹冠の1〜2割までにします。
- ネットを密閉した
- 夏に葉へ密着させると高温で葉が傷みます。骨組みで葉から離して張り直し、朝夕に風が抜けるかを確かめてから固定します。
取るなら、葉の縁が巻いて蛹が入っている部分だけを指で潰します。葉を1枚まるごと落とす必要はありません。
天敵と薬剤の考え方
この虫には多くの寄生蜂が付いており、放任した樹では自然に抑えられることがあります。広く効く薬剤を繰り返すと天敵が先に消え、かえって虫の発生が長引きます。
- 天敵を残す
- 夏に樹全体へ薬剤をかけるのをやめ、被害の出た幼木だけを対象にします。成木の被害葉は放っておくほうが寄生蜂が働きます。
- 薬剤を使う場面
- 苗木、夏秋梢が多く出る樹、かいよう病が出ている樹に限ります。夏秋梢の出ていない成木では通常は必要ありません。
- 使うタイミング
- 新梢が伸び始めた直後から、生育に合わせて7〜10日間隔で処理します。線が見えてからでは葉の中の幼虫に届きません。
- 使う前の確認
- 柑橘に登録のある薬剤を選び、収穫前日数と年間の使用回数の上限を必ず確認します。同じ系統を続けると効きが落ちます。
食害の跡からかいよう病が入る
放置した被害は葉の見た目だけで終わりません。潜った跡は傷口として残り、そこから細菌が入ってかいよう病が広がります。台風のあとに一気に発病するのはこのためです。
| 条件 | かいよう病の出方 | 打つ手 |
|---|---|---|
| 食害の跡が多い夏秋梢 | 傷口から感染し、葉に褐色の斑点が出る | 夏秋梢を出さない。出たら摘除する |
| 強い風雨や台風の直後 | 擦れ傷と食害の跡から一気に広がる | 風当たりを弱め、傷んだ葉と枝を整理する |
| 発病した枝を残した冬 | 翌春の新芽へ持ち越して再発する | 3月の剪定で病斑のある枝を落とす |
| 実に付いた場合 | かさぶた状の斑点が残り味も落ちる | 幼木の防虫対策と、早めの枝の整理 |
葉の斑点が茶色くかさぶた状で、周囲が黄色くにじんでいればかいよう病です。虫の線とは別の対策が必要になります。
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