作型は四つに分かれる
ほうれん草は冷涼を好み、生育適温は15〜20℃です。この帯に生育期間を合わせられるのが春と秋で、家庭菜園でいちばん失敗が少ないのは秋まきです。作型ごとに選ぶ品種が違うため、まず自分がどの作型をやるのかを決めてから種を買います。
| 作型 | 播種 | 収穫 | 選ぶ品種 |
|---|---|---|---|
| 春まき | 3〜5月 | 5〜6月 | 晩抽性(とう立ちが遅い) |
| 夏まき | 7〜8月 | 9〜10月 | 高温伸長性・べと病抵抗性 |
| 秋まき | 9〜10月 | 11〜12月 | 秋まき用の標準品種 |
| 越冬・寒じめ | 10月下旬〜11月 | 1〜3月 | 耐寒性の強い東洋系・交配種 |
袋の裏にある栽培適期の帯は品種ごとに違います。同じ作物でも春用と秋用は別物として選びます。
地域別のまき時
同じ「秋まき」でも、寒冷地は8月、暖地は12月まで幅があります。分ける基準は生育期間中の平均気温が15〜20℃に収まるかどうかで、寒冷地は冬が早く来るぶん前倒し、暖地は真夏を避けるぶん後ろ倒しになります。
| 地域 | 春まき | 秋まき | 越冬 |
|---|---|---|---|
| 寒冷地(北海道・東北北部) | 4月下旬〜6月上旬 | 8〜9月 | 雪下または不適 |
| 中間地(関東・東海・近畿) | 3〜5月 | 9〜11月 | 10月下旬〜11月まき |
| 暖地(九州・四国・南岸部) | 2〜4月 | 9〜12月 | 11月まきで2月どり |
標高の高い内陸は同じ県でも寒冷地に寄せます。初霜の平年日から逆算するとずれにくくなります。
3月〜5月 春まきはとう立ちとの競争
春まきは、株が育つ速さととう立ちのどちらが先に来るかの競争です。地温が10℃を超えたらまけますが、まく日が遅れるほど採れる期間は短くなります。日長が延びきる前に採り終える逆算で組み立てます。
| 月 | やること | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 3月 | 晩抽性品種をまく。トンネルかべたがけで保温 | 地温が10℃を超えたらまける |
| 4月 | 間引き2回と追肥1回。トンネルは日中開ける | 本葉4枚で株間5〜6センチ |
| 5月 | 早めに収穫。日長が延びる前に切り上げる | 草丈22〜25センチで即収穫 |
春まきは大きくするより早く採るのが正解です。10日待つ判断が、とう立ち(花茎が伸びて葉や根が硬くなること)で全部を失う原因になります。
6月〜8月 まける月とまけない月
6月まきは夏至をまたぐため、日長の面ではもっとも危険です。花芽が分化したあとに13時間を超える日長が続くと一気にとう立ちするので、家庭菜園では6月まきは避けます。7月から8月は日長が短くなる方向なので、とう立ちより高温による発芽不良と病気が問題になります。
| 月 | やること | 注意 |
|---|---|---|
| 6月 | まかない。畝を休ませ土づくりに充てる | 石灰と堆肥を入れるならこの月 |
| 7月 | 夏どりに挑むなら催芽してから夕方にまく | 地温が高く発芽率が落ちる |
| 8月 | 下旬から秋まきの準備。寒冷紗を用意する | べと病と害虫がもっとも多い |
9月〜11月 秋まきの本番
気温が下がりながら生育適温を通過するので、この時期のほうれん草はいちばん素直に育ちます。9月上旬はまだ地温が高く発芽不良が出るため、中間地なら9月中旬から10月上旬が本命です。ずらしまきをすると、1回に採りきれず結局とう立ちさせる失敗を防げます。
| 月 | やること | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 9月 | 本命のまき時。10日おきに2〜3回に分けてまく | 日中が30℃を切ってから |
| 10月 | 間引き2回と追肥。害虫の食害を点検 | 30〜40日で収穫が始まる |
| 11月 | 収穫の最盛期。越冬用は下旬までにまき終える | 越冬株は本葉4〜5枚で冬に入れる |
収穫が重なるのを避けたいなら、種をまく日をずらします。品種を変えるより日をずらすほうが確実です。
12月〜2月 越冬と寒じめ
越冬の成否は、冬に入るときの株の大きさでほぼ決まります。本葉4〜5枚が目安で、これより大きいと寒害を受け、小さいと春の立ち上がりが遅れます。初霜の3〜4週間前にまくとこの姿になります。
| 月 | やること | 注意 |
|---|---|---|
| 12月 | 不織布のべたがけかトンネルで保温。追肥は月前半まで | 本葉4〜5枚で越冬させる |
| 1月 | 寒じめ開始。日中だけトンネルを開けて寒気に当てる | 地温5〜8℃が目安 |
| 2月 | 終日開放して2〜3週間。葉が縮れたら収穫 | 晴れた日の午前に収穫する |
越冬株は地上部が傷んでも中心が生きていれば春に伸びます。凍害の直後に抜いてしまわないことです。
カレンダーを自分の畑に合わせ直す
本や種袋の適期は広い地域をまとめた帯なので、そのまま使うと数週間ずれます。基準にするのは暦の月ではなく、その年の気温です。まく判断は日中の最高気温、越冬の判断は初霜の日、寒じめの判断は最低気温で決めると、年ごとの変動に振り回されません。
- 秋まきは30℃を切ってから
- 9月上旬でも日中30℃が続くなら待ちます。地温が高いと発芽率が落ち、まき直しになってかえって収穫が遅れます。
- 越冬は本葉4〜5枚で冬に入れる
- 大きすぎると寒害を受け、小さすぎると春の立ち上がりが遅れます。初霜の3〜4週間前にまくと、この大きさで冬を迎えられます。
- 春まきは日長で締め切る
- 夏至に近づくほどとう立ちの危険が上がります。収穫を6月上旬までに終える逆算でまき、6月まきはしないと決めておきます。
- 10日ずらして2〜3回まく
- 一度に大量にまくと収穫が重なり、採りきれずにとうを立ててしまいます。同じ品種でも日をずらすだけで採り時が分散します。
記録を残すと翌年が楽になります。まいた日と出そろった日だけでも、自分の畑の適期が2年で見えてきます。
ほうれん草の栽培に一年を通して使うもの
作業のたびに買い足すより、季節の前にまとめて用意しておくほうが結局は安く済みます。一年を通して使うのは、次の 4 つです。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 牛ふん」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥かバーク堆肥。40L 前後の袋で売られています。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
土の粒をつなぐのは微生物の働きで、その餌になるのが堆肥です。未熟なものは根を傷めるので「完熟」と書かれたものを選びます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状のものが扱いやすく、風のある日でも舞いません。1〜20kg 袋。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。1kg 袋で数畝ぶん。
日本の土は雨で酸性に傾きます。**必要な量は土質で 3 倍ほど違い**、黒ボク土は砂質土よりずっと多く要ります。入れすぎると今度はアルカリ性に寄りすぎるので、pH を測ってから決めます。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8」
- 規格の目安
- 窒素・リン酸・カリが同じ比率の粒状。まず 1 袋あればほとんどの野菜に使えます。
- 数量の目安
- 元肥は 1 ㎡あたり 100g、畝 1 本で 150〜200g。追肥は 1 回 1 ㎡あたり 30〜50g。
種類を増やすより、切らさないほうが効きます。作物ごとの正確な量は都道府県が施肥基準として公表しているので、量を詰めたくなったらそちらを見てください。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が楽です。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。50m 巻きなら 10 畝以上。
地温を上げ、雨のはね返りと雑草を抑えます。夏の高温期だけは、地温が上がりすぎるので白黒マルチに替える手もあります。
- 土壌改良材のセット買いは要りません。堆肥と石灰と元肥の 3 つで足ります。
- 連作していない畑なら、土壌消毒剤は要りません。
ほうれん草の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はほうれん草の育て方にまとめています。
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