べと病はいつ、どんな条件で出るか
ほうれん草でもっとも警戒すべきはべと病です。葉の表に境目のぼやけた黄色い斑が出て、裏返すと灰色から紫がかったかびが見えます。気温15〜20℃で葉が濡れている時間が長いときに広がるので、秋の長雨と春先の朝露、そしてトンネル内の結露が引き金になります。
厄介なのは、出てから止めるのが難しいことです。胞子は風と水滴で運ばれ、密植した畝では数日で全体に回ります。だから対策は発生後の駆除ではなく、抵抗性品種と畝の作り方、つまり「まく前」に置きます。
| 条件 | べと病の危険 | 対応 |
|---|---|---|
| 気温15〜20℃で雨が続く | 高い | 収穫できる株から先に採る |
| 朝露が長く残る春先 | 高い | 畝の向きを風の通る方向に取る |
| トンネルを閉め切っている | 高い | 晴れた日の日中は必ず開ける |
| 株間が3センチのまま | 高い | 間引きを遅らせない |
収穫直前に広がると打つ手がありません。株間を確保しておくことが、いちばん効く保険になります。
抵抗性表記の読み方
種袋やカタログに並ぶ「R-1」から始まる番号は、べと病菌のレース(系統)の番号で、その品種が抵抗性を持つレースを示します。かつては種苗会社ごとに書き方が違いましたが、現在は国際的に統一された番号で表記されています。番号は病気の強さの段階ではなく、菌の種類の名前だと理解すると読み違えません。
- 番号は「種類」であって「強さ」ではない
- R-16はR-1より強いという意味ではありません。16番のレースに効く、という意味です。数字の大小で優劣を比べないことです。
- 抜けている番号に意味がある
- 「R-1〜9、11〜16」のように途中が飛んでいたら、抜けた番号のレースには効きません。自分の地域で流行しているレースが抜けていれば発病します。
- 番号は増え続ける
- 新しいレースが確認されるたびに番号が足されます。数年前の品種は最近のレースに対応していないことがあるので、種は買い置きせず更新します。
- 広いほど無条件に良いとは限らない
- 対応レースの広い品種は選択肢として有利ですが、食味や作型の適性は別です。地域で実績のある品種を優先します。
どのレースが出ているかは地域で違います。近くの直売所や種苗店で今年の傾向を聞くのがいちばん確かです。
品種に頼らない予防の設計
- 畝を高くして水を抜く
- 排水が悪いと葉が濡れている時間が延び、根の障害も重なります。平畝でも10〜15センチ上げるだけで発病の立ち上がりが遅くなります。
- 最終株間を守る
- 間引きを1回で済ませて詰めたままにすると、株の間に湿気がこもります。5〜6センチを守ることが最も安価な防除です。
- トンネルは日中に開ける
- 保温のため閉め切ると内部が結露し、べと病には最適な環境になります。晴れた日の午前に開け、夕方に閉めます。
- 収穫後の残渣を残さない
- 抜いた株や病葉を畝の脇に置くと、次作の伝染源になります。畑の外へ出すか、深く埋めます。
ケナガコナダニは土づくりの失敗として出る
新芽の付け根が縮れ、成長点が止まって芯が伸びない。虫が見えないのに株だけ止まるこの症状は、ホウレンソウケナガコナダニによることが多くあります。体長0.5ミリ以下で肉眼では確認しにくく、被害の形で気づく害虫です。
この虫は土の中の未分解の有機物を餌に増えます。つまり未熟な堆肥、油かす、鶏ふんを直前に入れた畝で発生しやすいということです。対策は殺す方向ではなく、餌を作らないこと。有機物は完熟したものを1か月以上前に入れる、この一点に尽きます。
- 有機物は完熟のみ、1か月前に
- 油かすや鶏ふんを直前に入れないこと。入れるなら完熟堆肥を播種の1か月以上前にして、分解を終わらせておきます。
- 前作の残渣を残さない
- すき込んだ葉や根が分解しきる前にまくと、その有機物が餌になります。片づけてから土づくりに入ります。
- 被害株は畑の外へ出す
- 芯止まりの株を畝に放置すると、そこから周囲に広がります。抜いて畑の外で処分します。
低温多湿で増えるため、秋から春の作でとくに出ます。芯止まりを見たら、次作の堆肥の入れ方を疑います。
時期ごとに何を警戒するか
警戒するものは季節で入れ替わります。春と秋は虫の飛来とべと病、夏は食害と立枯れ、冬はケナガコナダニです。見回りの目安は週に1回、葉裏と株元の二か所を見れば、たいていの兆候は先に見つかります。
| 時期 | 警戒するもの | 前もってやること |
|---|---|---|
| 春(3〜5月) | アブラムシ、ハモグリバエ、べと病 | 発芽直後から寒冷紗をかけて成虫を入れない |
| 夏(6〜8月) | ハスモンヨトウ、シロオビノメイガ、立枯れ | 高畝と排水。夕方の見回りで幼虫を捕る |
| 秋(9〜11月) | べと病、ヨトウ類、アブラムシ | 抵抗性品種と株間の確保。トンネルは換気 |
| 冬(12〜2月) | ケナガコナダニ、萎凋・株枯れ | 有機物は完熟のみ。連作を避ける |
アブラムシはウイルス病(モザイク症状)を持ち込みます。虫そのものより媒介を止める意識で防ぎます。
病気と紛らわしい症状を切り分ける
症状が似ていても原因は違います。葉裏を返してかびがあればべと病、なければ土か肥料を疑います。株全体が薄いなら酸度、新芽だけ止まるならコナダニ、日中だけしおれるなら乾燥と切り分けます。
| 見えている症状 | 病害虫か生理障害か | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 黄色い斑、葉裏に灰色のかび | べと病 | 葉を裏返してかびの有無を見る |
| 株全体が薄い黄緑で小さいまま | 酸性または窒素切れ | 酸度を測り、追肥への反応を見る |
| 新芽だけ縮れて伸びない | ケナガコナダニ | 堆肥の投入時期をさかのぼって確認 |
| 日中しおれ、夕方戻る | 乾燥(生理) | 土を掘って湿り具合を見る |
見分けがつかないうちに薬を使うと外します。まず葉裏、次に土、最後に履歴、の順に確認します。
ほうれん草の収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はほうれん草の育て方にまとめています。
iPhone 対応(Android 版は準備中)。無料で使えます。