三つの作型を一枚で見る
キャベツの一年は、春まき夏どり、夏まき秋冬どり、秋まき春どりの三本が重なって進みます。同じ月に「まく」「植える」「採る」が同時に並ぶのはそのためで、暦をそのまま追うと混乱します。まず自分の作型を一つ決めてから下の月別表を読んでください。
家庭菜園で一本だけ選ぶなら夏まき秋冬どりです。結球(葉が内側に巻いて玉になること)期が涼しく、虫の勢いも落ちていく方向なので、失敗の要因が少なくなります。二本目を足すなら春まき夏どりより、秋まき春どりの方が管理は楽です。
作型が決まれば、逆算する順番も決まります。収穫したい月から熟期に応じた日数をさかのぼって定植日を出し、さらに育苗日数をさかのぼって播種日を出します。カレンダーの月名を追うより、この逆算の方が土地の気候に合います。
- 収穫したい月を決める
- 最初に決めるのは播種日ではなく収穫月です。食べたい時期が決まれば、必要な熟期の品種も、逆算した定植日も自動的に絞られます。
- 熟期の日数を引く
- 収穫月から、早生なら60〜70日、中生なら70〜80日、晩生なら80〜100日をさかのぼって定植日を出します。低温期はさらに一割ほど延びると見ます。
- 育苗日数を引く
- 定植日からさらに25〜30日、春まきなら35〜60日をさかのぼった日が播種日です。ここまで出して初めて、種袋の時期表と自分の予定が突き合わせられます。
| 作型 | 播種 | 定植 | 収穫 |
|---|---|---|---|
| 春まき夏どり | 2月〜3月 | 3月下旬〜4月 | 6月〜7月 |
| 夏まき秋冬どり | 7月下旬〜8月 | 8月下旬〜9月 | 11月〜翌1月 |
| 秋まき春どり | 10月〜11月 | 11月〜12月 | 翌4月〜5月 |
1月〜3月
冬の三カ月は、採ることと仕込むことが同時に進みます。1月は冬どりの玉を凍らせないうちに採り切る月で、空いた区画にはすぐ堆肥を入れて春の準備に回します。土は寒さに当てておくと粗い塊が崩れ、春の畝立てが楽になります。
2月から3月の主役は春まきの育苗です。この時期の管理を誤ると、畑に出る前にとう立ち(花茎が伸びて葉や根が硬くなること)が決まってしまいます。まく日を守り、苗を太らせすぎないことと、日中の換気を切らさないことの二点だけを徹底してください。
| 月 | 作業 | ねらい |
|---|---|---|
| 1月 | 冬どりの収穫/畑の土づくり | 凍る前に締まった玉から順に採る。空いた区画に堆肥を入れる |
| 2月 | 春まきの播種(保温)/苦土石灰 | 夜温を10℃前後に保って発芽をそろえる。石灰は定植の2週間以上前 |
| 3月 | 春まきの定植(トンネル)/春どりの追肥 | 低温に太った株を当てない。越冬株は追肥で一気に葉を増やす |
2月から3月は、育苗のトンネル内が晴天で25℃を超えます。換気を忘れた一日で徒長(間のびして弱く伸びること)するので、外出する日は先に裾を開けておきます。
4月〜6月
春は生育も虫も一斉に動き出します。4月は保温資材を外す月ですが、外したまま裸にせず、必ず防虫ネットへ掛け替えます。トンネルを外した数日が、モンシロチョウにとって最も産卵しやすい期間になります。
5月から6月は収穫と防除が重なります。気温が上がると玉の肥大が速くなり、締まってから割れるまでの猶予が短くなるので、週に二回は玉を押して確かめる習慣にしてください。梅雨の長雨の前に採るのが最も確実です。
| 月 | 作業 | ねらい |
|---|---|---|
| 4月 | 春まきの定植続き/春どりの結球管理 | 遅霜が抜けたらトンネルを外し、代わりに防虫ネットへ掛け替える |
| 5月 | 害虫の第一波/春どりの収穫 | アオムシとコナガの産卵最盛期。週二回の葉裏点検を欠かさない |
| 6月 | 春まき分の結球と収穫/梅雨対策 | 気温が上がり生育が速い。締まったら待たずに採り、裂球を避ける |
春どりは巻きがゆるい品種が多く、押しても寒玉ほど硬くなりません。頂部が閉じて重みが出た時点が適期です。
7月〜9月
夏まきは一年で最も条件の厳しい育苗です。7月から8月にまいた種は、発芽直後の高温で徒長しやすく、そのまま植えると倒れて活着が遅れます。棚に上げ、遮光(日ざしを布などでやわらげること)し、朝に水をやるという三つで苗の質が決まります。
9月は外葉を作る一カ月です。定植から三週間、本葉10枚を合図に一回目の追肥(育てている途中で足す肥料)を入れ、株間の雑草を抜いて光を入れます。ここで葉数を稼げなかった株は、あとから何をしても玉が小さいまま終わります。
| 月 | 作業 | ねらい |
|---|---|---|
| 7月 | 夏まきの播種/畑の準備 | 遮光と風通しで徒長を防ぐ。石灰と堆肥は定植の2週間前までに |
| 8月 | 播種の後半/定植の開始 | 夕方に植え、その日のうちに防虫ネットを掛ける |
| 9月 | 定植の続き/1回目の追肥/害虫の第二波 | 本葉10枚を合図に追肥。コナガとヨトウムシの秋の発生が始まる |
猛暑の年は8月の定植を一週間遅らせた方が結果が良いことがあります。ただし遅らせるほど結球が寒さに追われるので、九月上旬が限度です。
10月〜12月
秋は玉を太らせる時期で、やることは急に減ります。10月に二回目の追肥を済ませたら、以後は肥料を足しません。結球が始まってからの窒素は内側の葉だけを伸ばし、裂球の原因になるからです。
11月から12月は収穫が続きます。早生から順に締まるので、押して硬くなった玉から採ります。霜に当たると糖度が上がりますが、凍結と解凍を繰り返した玉は外葉から水浸状に傷むので、寒波の予報が出たら先に採ります。
| 月 | 作業 | ねらい |
|---|---|---|
| 10月 | 2回目の追肥/秋まきの播種 | 中心の葉が立ったら追肥し、以後は肥料を足さない |
| 11月 | 結球の確認/早生の収穫開始/秋まきの定植 | 上から押して硬い玉から順に採る |
| 12月 | 冬どりの収穫/防寒 | 霜に当たると甘みが増すが、凍結を繰り返す前に採り切る |
冬どりを畑に置く場合は、外葉を折り曲げて玉を包むと霜よけになります。雪の下でも保ちますが、解けたあとに外葉から傷みます。
地域で何週ずらすか
上の月別表は中間地を基準にしています。地域差は「暖地は寒い作業が遅れ、寒冷地は暑い作業が早まる」と考えると整理できます。春まきの播種は暖地ほど早く、夏まきの播種は暖地ほど遅く、寒冷地ほど早くなります。
寒冷地で秋まき春どりが難しいのは、越冬中の凍害と、春先の低温でとう立ちが決まるためです。同じ理由で暖地の夏まきを早めすぎると、結球期が残暑に当たって葉が立ち上がりません。ずらす方向を間違えないでください。
| 地域 | 春まき | 夏まき | 秋まき春どり |
|---|---|---|---|
| 暖地 | 2週間ほど早い | 1〜2週間遅い | 1〜2週間遅い |
| 中間地 | 表のとおり | 表のとおり | 表のとおり |
| 寒冷地 | 3〜4週間遅い | 2〜4週間早い | 越冬が難しく不向き |
同じ県内でも標高が100メートル上がれば数日ずれます。近所の直売所に苗が並ぶ時期は、その土地の定植適期をよく表しています。
予定から遅れたときの立て直し
カレンダーどおりに進まない年の方が多いので、遅れに気づいたときにどこまで取り返せるかを先に知っておくと判断が速くなります。取り返せるのは播種と定植の遅れまでで、結球期の気温だけは動かせません。
| いまの状態 | 起きていること | 今からできること |
|---|---|---|
| 夏まきの播種が9月に入った | 結球期が寒さに追われる | 早生種へ切り替え、苗を買って定植を急ぐ |
| 定植が2週間遅れた | 外葉を作る期間が足りない | 株間を5センチ広げ、追肥を1回目から早める |
| 1回目の追肥を忘れていた | 葉色が黄緑に抜け葉数が伸びない | 中心が立つ前なら今すぐ入れる。立ったあとは見送る |
| 冬に入っても巻かない | 葉数不足か気温不足のどちらか | 不織布で数℃稼ぎ、巻かなければ葉物として使う |
遅れを取り返す一番確実な手は品種の入れ替えです。晩生種を早生種に替えるだけで、必要な日数が20日以上短くなります。
キャベツの栽培に一年を通して使うもの
作業のたびに買い足すより、季節の前にまとめて用意しておくほうが結局は安く済みます。一年を通して使うのは、次の 4 つです。
数量は幅 60cm × 長さ 3m の畝 1 本(約 1.8 ㎡)で計算しています。
- 完熟堆肥探す言葉「完熟堆肥 牛ふん」
- 規格の目安
- 牛ふん堆肥かバーク堆肥。40L 前後の袋で売られています。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 2〜3kg(およそ 5〜8L)。畝 1 本で 10〜15L。
土の粒をつなぐのは微生物の働きで、その餌になるのが堆肥です。未熟なものは根を傷めるので「完熟」と書かれたものを選びます。
- 苦土石灰探す言葉「苦土石灰 粒状」
- 規格の目安
- 粒状のものが扱いやすく、風のある日でも舞いません。1〜20kg 袋。
- 数量の目安
- 1 ㎡あたり 100〜150g、畝 1 本で 200〜300g。1kg 袋で数畝ぶん。
日本の土は雨で酸性に傾きます。**必要な量は土質で 3 倍ほど違い**、黒ボク土は砂質土よりずっと多く要ります。入れすぎると今度はアルカリ性に寄りすぎるので、pH を測ってから決めます。
- 化成肥料(8-8-8 など)探す言葉「化成肥料 8-8-8」
- 規格の目安
- 窒素・リン酸・カリが同じ比率の粒状。まず 1 袋あればほとんどの野菜に使えます。
- 数量の目安
- 元肥は 1 ㎡あたり 100g、畝 1 本で 150〜200g。追肥は 1 回 1 ㎡あたり 30〜50g。
種類を増やすより、切らさないほうが効きます。作物ごとの正確な量は都道府県が施肥基準として公表しているので、量を詰めたくなったらそちらを見てください。
出典: 農林水産省「都道府県施肥基準等」
- 黒マルチ探す言葉「黒マルチ 95cm」
- 規格の目安
- 幅 95cm、厚さ 0.02mm。株間の決まっている作物は穴あき(株間 30cm・45cm)が楽です。
- 数量の目安
- 畝 1 本(3m)で 4m。50m 巻きなら 10 畝以上。
地温を上げ、雨のはね返りと雑草を抑えます。夏の高温期だけは、地温が上がりすぎるので白黒マルチに替える手もあります。
- 土壌改良材のセット買いは要りません。堆肥と石灰と元肥の 3 つで足ります。
- 連作していない畑なら、土壌消毒剤は要りません。
キャベツの収穫までのコツは作物ページに
栽培カレンダー、病害虫の一覧、品種の選び方はキャベツの育て方にまとめています。
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