一年のどこにリスクが集まるか
タマネギの被害は年中一様に来るのではなく、三つの山があります。一つ目は九月から十月の苗床期、二つ目は三月から四月の気温上昇期、三つ目は五月以降の収穫と貯蔵の時期です。この三か所に手を打てば、被害の大半は避けられます。
逆に、真冬は病害虫がほとんど動きません。冬に葉が枯れ込むのは低温と乾風によるもので、薬剤の出番はありません。この季節の判断ミスは、必要のない防除に手間をかけることのほうが多いのです。
| 時期 | 警戒するもの | 主な対策 |
|---|---|---|
| 9月から10月 | 苗床のべと病、タネバエ | 厚まきを避け、罹病苗は持ち込まない |
| 3月から4月 | べと病の広がり、ネギアザミウマ | 過湿を避け、初期病斑の株を抜く |
| 5月から6月 | 貯蔵中の腐敗、乾腐病 | 十分に乾かす、傷んだ球を分ける |
べと病は苗床から始まっている
べと病はタマネギ栽培で最も損失の大きい病気で、春に畑一面へ広がったときには手遅れになっています。実際には秋の苗床で感染した株が越冬し、春に胞子を飛ばす起点になります。したがって防除の主戦場は、春ではなく秋です。
- 苗床で入れない
- 厚まきを避けて風を通し、葉が黄白色ににじむ株は抜いて畑の外へ出します。春の大発生は、この段階の見落としから始まります。
- 定植で持ち込まない
- 少しでも様子の変な苗は植えないでください。数本を惜しんで植えた結果、春に列全体を失うことがあります。
- 雨の前に手を打つ
- 多湿と低温で急に広がるため、降り続く前の晴れ間が唯一の作業機会です。株間の風通しと畝の排水を先に整えておきます。
- 見回りは朝に
- 日中は乾いて見えなくなる初期の病斑も、露のある時間なら見つかります。畑を歩く時間を朝に決めておくと発見が早まります。
畑を見回るのは朝が向いています。日中は乾いて見えなくなる初期の病斑も、露のある時間帯なら見つけやすくなります。
害虫は種類より時期で押さえる
秋の定植期に問題になるのはタネバエで、未熟な有機物に誘われて産卵し、幼虫が根元を食害します。完熟していない堆肥をその場で入れないことが最大の予防になります。
春に増えるのがネギアザミウマで、葉に細かなかすり傷のような白い筋が並びます。乾燥した年に多発し、被害が進むと葉全体が白っぽくなって肥大が止まります。同じころネギコガの幼虫が葉の中に潜り、葉に細長い透けた跡を残します。
いずれも、被害が見えてから広い面積で退治するのは難しく、春先の見回りで早く気づけるかどうかで結果が変わります。少数なら、被害葉を取り除くだけで収まる年もあります。
| 害虫 | 出る時期 | 葉や株に出る症状 |
|---|---|---|
| タネバエ | 10月から11月の定植期 | 株元が食われて苗がしおれる |
| ネギアザミウマ | 3月から5月の乾いた時期 | かすり状の白い筋が並ぶ |
| ネギコガ | 4月から5月 | 葉の中に細長い透けた跡が残る |
| ネギハモグリバエ | 春から初夏 | 葉に白い線が曲がって走る |
連作と土から来る病気
同じ場所に何年も続けると、乾腐病や白絹病のような土壌からの病気が出やすくなります。株元が腐って葉が倒れ、抜くと根がなくなっているのが典型です。これらは薬剤よりも輪作で避けるのが現実的で、二年から三年は間隔をあけたい病気です。
- 二年から三年あける
- 乾腐病や白絹病は土に残ります。ネギ属を続けないことが最も確実で、薬剤より輪作の設計のほうがよく効きます。
- ネギ属を数に入れる
- ネギ、ニンニク、ラッキョウは同じ病害を共有します。これらを間に挟むのは輪作ではなく、実質的な連作です。
- 排水をよくする
- 水がたまる場所ほど発生が集中します。畝を高くし、通路に水の逃げ道をつくるだけで発病株ははっきり減ります。
- 発病株は持ち出す
- 掘り上げて袋に入れ、畑の外で処分します。その場に放置したり土をかき混ぜたりすると、菌を畝全体に広げます。
タマネギの後にはネギやニンニクを置かないでください。同じ病害を共有するため、輪作したつもりで実質的な連作になります。
とう立ちと分球は栽培の設計ミス
とう立ち(花茎が伸びて葉や根が硬くなること)は病気ではなく、株が冬までに育ちすぎたときに起きる生理現象です。一定の大きさに達した株が低温にあうと花芽ができ、春に固い花茎が立ちます。原因は播種が早い、苗が太い、秋の追肥(育てている途中で足す肥料)が多いのいずれかで、春になってからできることはありません。
分球は逆に、株が過度に大きくなったり、生育が一度止まって再び動き出したりしたときに、球が二つ三つに分かれる現象です。苗が太すぎる場合や、追肥の与え方が極端に片寄った場合に増えます。食べられますが、貯蔵には向きません。
どちらも翌年の播種日と苗の太さの管理で減らせます。とう立ちが多かった年は播種を五日遅らせる、分球が多かった年は苗の選別を厳しくする。この調整を二、三年繰り返せば、自分の畑の適期が定まります。
| 症状 | 主な原因 | 翌年の手当て |
|---|---|---|
| 中心に固い花茎が立つ | 播種が早い、苗が太い | 播種を五日遅らせる |
| 球が二つ三つに分かれる | 苗が太い、追肥が片寄る | 苗の選別を厳しくする |
| 球が小さいまま止まる | 株間が狭い、追肥が足りない | 株間を15センチに広げる |
| 首が締まらず太いまま | 三月中旬以降の追肥 | 追肥を三月上旬で切る |
とう立ち株は放置しても球が太らず、周囲の株の光と養分を奪います。若いうちに抜き、葉タマネギやつぼみとして食べてしまいましょう。
予防を仕組みにしておく
薬剤を使う場合も、この土台があるかどうかで効き方が変わります。逆に、密植して水はけの悪い畑では、どれだけ散布しても被害は繰り返されます。毎年同じ病気が出る畑は、病原ではなく環境を疑ってください。
- 輪作の間隔を守る
- ネギ属を二年から三年あけます。畑の図を書いて場所を回すようにすると、記憶に頼らずに続けられます。
- 畝を高くする
- 高さ十センチ以上に立て、通路に水の逃げ道をつくります。排水は病気全般に効く、最も割のよい対策です。
- 株間を詰めすぎない
- 十二センチを下回ると風が抜けず、べと病が列を伝って広がります。株数より風通しを優先してください。
- 追肥を三月上旬で切る
- 遅い追肥は首の締まらない球をつくり、貯蔵中の腐敗に直結します。期限を決めておくこと自体が予防になります。
出てしまったあとの手当て
予防が間に合わなかったときは、その日にやることと翌年に変えることを分けて考えます。今年の株を救えるかどうかは症状によりますが、翌年に同じ失敗を繰り返さない手は必ず残っています。
| 見えている症状 | その日にやること | 翌年に変えること |
|---|---|---|
| 葉に細長い黄色のしみ | 病んだ葉を抜いて畑の外へ出す | 排水を直し健全な苗を使う |
| 株元が軟らかく腐って倒れる | 株ごと抜き周りの土を移さない | 連作をやめて三年あける |
| 中心から固い茎が立つ | 抜いて葉タマネギとして食べる | 播種を五日遅らせ苗を選別する |
| 収穫後に球が腐り出す | 傷んだ球を分けて先に食べる | 追肥を三月上旬で打ち切る |
症状が出た区画は札を立てて覚えておきます。翌年に同じ場所で同じ症状が出たら、原因は天候ではなく土か排水にあります。
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