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害虫病害虫辞典Pochazia shantungensis

チュウゴクアミガサハゴロモの見分け方と対策 — 白い綿の幼虫と、枝の白い産卵痕に注意

ここ数年で急に見かけるようになった、茶色い三角の翅の虫。中国から入ってきた外来のハゴロモで、2024 年から全国で注意報(特殊報)が相次いでいます。ブルーベリーやかんきつの枝を枯らすこともあるこの虫の、見分け方と 1 年の動き、家庭でできる対策をまとめました。

参考文献 13 件

チュウゴクアミガサハゴロモの成虫がハルミに確認
2026年9月 自宅屋上のハルミの樹に成虫を確認

まずこれだけ

  • 冬〜3 月に、白い綿のようなもので覆われた産卵痕のある枝を切り取り、袋に密閉して捨てる。これがいちばん効きます[6][7][8]。
  • 4〜11 月は、白い房を付けた幼虫や茶色い成虫を見つけ次第つぶす[10]。
  • この虫を対象に登録された農薬はありません[1][13]。薬を使うなら、その植物に登録のある薬剤をラベルどおりに。

どんな虫か

チュウゴクアミガサハゴロモは、カメムシ目ハゴロモ科の昆虫です[1]。セミやカメムシと同じく、口を枝に刺して汁を吸います。学名は Pochazia shantungensis。以前は Ricania shantungensis と呼ばれていて、都道府県の特殊報の多くはいまも旧い学名で書いています[1][3][4]。

チュウゴクアミガサハゴロモの幼虫
2026年9月 自宅庭の「せとか」に幼虫を確認

原産地は中国です[1][2]。韓国では 2010 年に見つかり、りんご園やくり園の樹がほとんど枯れる被害が出ました[1][5]。ヨーロッパでも 2018 年のトルコ・フランスを皮切りに記録が広がっています[1][5]。

日本では大阪府で最初に見つかりました。確認は 2017 年とされてきましたが、2024 年の分類の見直しで、2015 年に堺市で採集された標本が最初の記録と報告されています[1][3]。どこから入ったかは分かっていません。

2024 年からは各地の病害虫防除所が「特殊報」(新しい害虫が初めて見つかったときの公式の知らせ)を出していて、2026 年 1 月時点で 28 都府県に達しました[1]。埼玉県は 2024 年 10 月[7]、東京都は 2025 年 1 月[6]、千葉県は 2025 年 7 月[10] に出しています。運営者の庭(千葉県)でも、成虫と白い幼虫の両方が見つかっています。

見分け方 — 成虫・幼虫・産卵痕

成虫:茶色い三角の翅に、白い斑紋がひとつ

翅は茶褐色から鉄さび色で、ろうの粉をまとっています[1][6]。前の翅の前の縁、真ん中あたりに白い斑紋がひとつあるのが目印です。この斑紋は「三角形」と書く資料が多い一方、「半円形」とする資料もあります[1][2][6][7]。

翅を屋根のように三角に広げてとまるので、横から見ると小さな蛾のように見えます[8][9]。大きさは資料によって 11〜16mm ほどと幅があり、測り方(翅の先まで含めるか)で違いが出ています[1][6][10]。

幼虫:白い綿の房を、クジャクの羽のように広げる

幼虫は白っぽい体で、お尻から白い糸のようなろう物質の房を出し、放射状に広げます。「クジャクの尾羽のよう」と書く資料もあります[1]。体は小さく、1〜5 齢で 1.2〜3.3mm ほどです[1]。新しい枝に、白い綿の房を付けた小さな虫が群がっていたら、この虫の幼虫を疑ってください。

産卵痕:細い枝に並ぶ、白い綿の筋

いちばん見つけておきたいのがこれです。雌は直径 10mm 以下の細い枝の皮をはがして、卵を 2 列に産み込み、上から白い綿のようなろう物質で覆います[1]。卵そのものは白い楕円形で、直径 1mm ほどです[1]。

産卵痕の確かめ方

白いろうをこすり落とすと、その下に木くずの詰まった裂け目が見えます[8]。裂け目があれば産卵痕です。

似た虫との違い

チュウゴクアミガサハゴロモ アミガサハゴロモ(在来種) アオバハゴロモ
成虫の翅 茶褐色〜鉄さび色 緑がかった茶色で、形が丸く横長[12] —
白い斑紋 三角形(半円形とも)[1][2] 楕円形[2]、または丸〜四角[12] —
幼虫 白く、白い綿の房を広げる[1] 褐色[2] —
枝の白いろう こすると下に裂け目(産卵痕)[8] — 取ろうとすると虫が動く。取っても枝に裂け目は無い[8]

在来のアミガサハゴロモは、主にカシ類に付きます[12]。果樹や庭木で茶色いハゴロモが大量に出ていたら、チュウゴクアミガサハゴロモの可能性が高いと考えてよいでしょう。

1 年の動き — 年 2 回発生し、卵で冬を越す

日本では年に 2 回発生します。大阪府・和歌山県・埼玉県の調査で確かめられています[1][8][11](韓国では年 1 回[1][5])。冬は枝の中の卵で越します[1][8][11]。

和歌山県紀の川市での 2024〜2025 年の観察[11] を目安にすると、1 年はこう動きます。

時期 起きていること やること
12〜3 月 枝の中の卵で冬越し 産卵痕のある枝を切って処分
4 月上〜中旬 1 回目の幼虫がふ化 白い房の幼虫をつぶす
6 月中旬〜 1 回目の成虫が出る。6 月下旬から産卵 成虫をつぶす
7 月下旬 2 回目の幼虫がふ化 幼虫をつぶす
8 月下旬〜11 月 2 回目の成虫。9 月中旬から 11 月下旬まで産卵 成虫をつぶす。秋の整枝

関東の目安としては、埼玉県茶業研究所のライトトラップで、2025 年は 6 月下旬に最初の成虫が捕まり、7 月下旬と 9 月中旬に 2 つの山があって、11 月末まで捕まり続けました[9]。千葉県でも、飼育していた幼虫が 6 月中旬〜下旬に成虫になっています[10]。埼玉県では年 3 回発生している可能性も指摘されています[11]。

付きやすい植物

とにかく何にでも付く虫で、世界では 200 種を超える植物で記録があります[4][5]。家庭で気をつけたいのは次のような植物です。

  • 果樹:ブルーベリー、かんきつ類、キウイ、ウメ、カキ、オリーブ、モモ、スモモ、オウトウ(さくらんぼ)、ブドウ、ナシ、リンゴ、クリ、フェイジョア[1][2][7]
  • 庭木・花木:ツバキ、ハナミズキ、サルスベリ、イヌツゲ、クチナシ、サカキ、ロウバイ など[1]。モミジやソヨゴでも記録があり、とくにツバキの仲間とブナ科の木に多く付きます[2]
  • 草花・茶:宿根アスター、ヒメジョオン、茶で記録があります[1][7]
チュウゴクアミガサハゴロモの幼虫がブルーベリーの株元に
2026年9月 庭のブルーベリーの樹の株元に幼虫を確認

公的な資料では、野菜に被害が出たという記録は見つかりませんでした(2026 年 9 月時点)。家庭菜園では、畑の周りの果樹や生け垣から目を配るのが現実的です。

どんな被害が出るか

  • 枝が枯れる・折れる:産卵で枝の中の水や養分の通り道が壊れ、枝先が枯れたり、もろくなって実の重みで折れたりします[1]。枝が伸びなくなったり、木の勢いが落ちたりもします[10]。韓国のカキでは、1 本の枝に卵のかたまりが 4〜5 個あると枯れ込みが起き、10 個を超えると枝が枯れたと報告されています[5]
  • 汁を吸われる:成虫も幼虫も、新しい枝に群がって汁を吸います[1][2]
  • すす病:排せつ物(甘露)にかびが生えて、葉や実が黒く汚れます[1][6]。千葉県では、すす病で出荷できなくなった花木もありました[10]
  • 見た目:枝に並ぶ白い産卵痕は、それだけで庭木の見た目を損ねます[6]

家庭でできる対策

冬〜3 月:産卵痕のある枝を切る(いちばん効く)

冬のあいだ、卵は枝の中でじっとしています。白い綿のようなろうで覆われた産卵痕を見つけたら、その枝を切り取り、ふ化する前に処分します。

切った枝の捨て方

切った枝は袋に密閉する・土に埋める・焼くのいずれかにしてください。そのまま地面に置くと、そこから幼虫が出てきます[6][7][10]。

切りたくない太い枝や主枝は、産卵痕の上からテープを巻いておくと、ふ化した幼虫が外へ出られなくなります。どちらも 3 月ごろまでに終えます[8]。産卵はその年に伸びた枝の上のほうに多いので、秋の整枝と冬の剪定をていねいにやるだけでも数を減らせます[7]。

4〜11 月:見つけ次第つぶす

白い房の幼虫と茶色い成虫は、見つけたら捕まえてつぶします[10]。黄色の粘着板で成虫を捕まえる方法も紹介されています[2]。

めちゃくちゃ警戒心が高く捕殺に苦労します

筆者が実際に体験したことベースではあるが、幼虫の場合、非常に警戒心が高いと感じた。枝の裏に隠れるムーブをとる。そしていざ潰そうとするとぴょんぴょんとジャンプを繰り返しすぐに逃げられてしまう。成虫はというとこれまで驚きのスピードで、見た目は蛾に似ているが、比べ物にならないほど非常に高速スピードで飛び回り逃げていってしまう。

鉢植えの果樹など小さな木なら、防虫ネットで覆って産卵させないのも有効です[1][2]。

薬剤について

2026 年 7 月時点で、この虫を対象に登録された農薬は国内にありません[1][13]。試験で効果が確かめられた薬剤はいくつかありますが、この虫を目的に散布することはできません[9][12]。

薬剤を使うなら、育てている植物に登録のある殺虫剤を、ラベルに書かれた使い方どおりに使ってください。農研機構は、ふだんの防除のなかで一緒に抑える考え方を示しています[13]。

天敵は当てにできない

原産地の中国には卵に寄生するハチなどの天敵がいますが、日本ではこの虫を抑えるほどの力はないとされています[13]。

病原・原因

学名和名分類EPPO Code
Pochazia shantungensisチュウゴクアミガサハゴロモ昆虫POCZSH

発生が記録されている作物(22)

図鑑にある作物だけを並べています。作物名を押すと、その作物の育て方へ移ります。

特に被害が出やすい作物(6)

よく発生する作物(13)

ときどき発生する作物(3)

見つけた日を記録しておく

病害虫は毎年だいたい同じ時期に出ます。いつ見つけたか・何をしたかを写真と日付で残しておくと、翌年は先回りできます。アプリで作物ごとに記録すれば、去年の同じ時期に何が起きていたかをすぐ見返せます。

アプリのストアを開く QR コード

スマホのカメラで読み取ると、ストアが開きます

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よくある質問

枝に付いている白い綿のようなものは何ですか?

チュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕か幼虫の可能性があります。白いろうをこすって、下に木くずの詰まった裂け目があれば産卵痕です。動く白い綿なら幼虫です。

人を刺したり、かぶれたりしますか?

セミやカメムシと同じく植物の汁を吸う虫です。今回参照した公的な資料には、人への被害の記述はありませんでした。

冬のあいだに何をすればいいですか?

白い産卵痕のある枝を 3 月ごろまでに切り取り、袋に密閉するか埋めて処分します。そのまま地面に置くと幼虫が出てきます。

効く農薬はありますか?

2026 年 7 月時点で、この虫を対象に登録された農薬はありません。薬剤を使うなら、育てている植物に登録のある殺虫剤をラベルどおりに使います。

参考文献(13)

本文の [ ] の数字は、次の資料の番号です。

  1. 1農林水産省 横浜植物防疫所(2026)チュウゴクアミガサハゴロモ Pochazia shantungensis (Chou & Lu)
  2. 2鈴木真裕・東條元昭(大阪公立大学)/ iPlant 3(8)(2025)侵入害虫「チュウゴクアミガサハゴロモ」に注意!
  3. 3Kobayashi et al. / Zootaxa 5446(2): 151–178(2024)Reevaluation of the taxonomic identity of the invasive planthopper Pochazia shantungensis in Japan
  4. 4EPPO(欧州地中海植物防疫機関)Alert List: Pochazia shantungensis
  5. 5Dong et al. / Journal of Integrated Pest Management 17(1)(2026)Pochazia shantungensis and P. chinensis: two confusable invasive planthoppers
  6. 6東京都病害虫防除所(2025)令和6年度 病害虫発生予察特殊報 第2号
  7. 7埼玉県病害虫防除所(2024)令和6年度 病害虫発生予察特殊報 第2号
  8. 8埼玉県病害虫防除所(2025)チュウゴクアミガサハゴロモが多発しています!
  9. 9埼玉県茶業研究所(宮田ら)(2026)新害虫チュウゴクアミガサハゴロモとは(発生消長と薬剤感受性)
  10. 10千葉県農林総合研究センター(2025)令和7年度 病害虫発生予察特殊報 第1号
  11. 11井口・貴志・児玉 / 関西病虫害研究会報 68: 108–111(2026)和歌山県におけるチュウゴクアミガサハゴロモの発生時期と成虫の誘殺消長
  12. 12愛媛県(2025)チュウゴクアミガサハゴロモの発生と防除薬剤の検討
  13. 13日本農業新聞 みんなの防除(回答: 農研機構)(2026)チュウゴクアミガサハゴロモが発生して困っています!

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